学校の裁量が拡大され、各地で特色ある教育活動が展開されるようになりました。単位制や総合学科は言うまでもなく、普通科でもコース制を取ったり、独自の教育プログラムを整備したりと様々な価値を打ち出そうとしています。それなのに、”外野”からは、やれ普通科は画一的だ、生徒の意欲が高まる内容になっていないといった批判が届きます。
そうした批判をうち消せないでいることの背景には、各校が打ち出してきた特色をきちんと理解してもらうための指標/モノサシが用意できていないこともあるのではないでしょうか。
創意工夫を重ねて形作った教育活動について、成果をきちんと(=エビデンスを以て)示すことで、「こんな取り組みがこうした成果を得ているのか」との認識を広く持ってもらえれば、外野の「いわれなき批判」にも対抗できるでしょうし、何よりも、学校が取り組む教育への理解と共感を集め、生徒募集にもプラスの効果をもたらすはずです。
グランドデザインに照らした教育活動の取捨選択、重点目標への集中投資は、学校の特色をより鮮明にし、「画一的」との批判への答えの一つになるでしょうし、「意欲を育んでいない」との批判には「目標をもって巣立つ生徒の増加」で反論すべきではないでしょうか。
政府の教育再生実行会議が高校生の7割が通う普通科の改革を求めているそうで…。教育内容が画一的で生徒の意欲が高まる内容になっていない、との批判からスタートした議論のようですが、高校現場がこれまでに重ねてきた取り組みをきちんと理解した上での議論なのか大いに疑問を感じます。各地の高校が独自性を出すべくこれまでに進めてきた教育活動をさらに充実させたり、指導法の確立を進めたりする方が、よほど優先順位が高いはずです。
各地の学校が特色ある学校づくりに取り組んでいる以上、実現を目指している教育の価値とその成果を示す指標にはもっと様々なものがあって良いと思います。例えば、卒業に臨んで「私はどうしてこの進路を選んだ、この道でこんなことをしてみたい」との思いをしっかり抱き、言葉にできるようになった生徒の割合などは、その一つになり得るはずです。志望理由や自分の将来像を明確にできたことは、3年間/6年間の教育の成果そのものではないでしょうか。
目標を持った状態で巣立たせるには、日々の学びの中に興味や関心を見つけてもらうことがスタートです。興味は自力で考え工夫して達成したこと(=できるようになったこと)の中に生まれ、関心は「自分事」として認識できる課題に触れて芽生えてきます。せっかく生まれた興味・関心は、その機を逃すことなく、探究的な学びで興味を掘り下げ、関わりの視野を広げることで、「自分のあり方、生き方」を考える進路・進学指導に繋いでいきましょう。
関連記事でも書きましたが、生徒募集の改善は、学校の財務の健全化に貢献するだけでなく、自校の教育に理解と共感をもつ人々(生徒・保護者・地域の人々)で構成されるコミュニティを形成します。
ステークホルダと良好な関係を結ぶことになりますので、学校や先生方が思うところを推進する上での障害が取り除かれ、理解者と共感者の増大は、学校経営に対する大きな支援となるはずです。
すでに様々なアプローチで特色ある学校づくりを推し進めてきたなら、この局面で注力すべきは、学校が目指す教育像、育てたい生徒像を明確に打ち出した上で、それぞれに応じた新たなモノサシを用意してきちんと成果をアピールすることに他ならないはずです。
特色を加えていくだけでは、互いに干渉し合います。絵具を全部パレットに絞り出して混ぜたら灰色になってしまうのと同じかもしれません。
こうした動きを進めていくには学校が目指すものを校内でしっかり共有する必要がありますが、そのためのツールは学校評価アンケートです。
生徒、保護者、地域が学校に求めるものを知る機会として欠かせないだけでなく、きちんと議論を重ねて質問設計を固める中で、何を目指す学校を作るのかの共通認識も作れます。
アンケートの結果は様々な場面での成果を示すだけでなく、学校に対する総合的な肯定評価を増やすために教育リソースをどこに集中配分すべきかの判断材料も与えてくれるはずです。