現小6に示すべき、新課程を見据えた学校の戦略

中学校では平成33年4月に新学習指導要領への切り替えが全学年で一斉に行われ、平成34年度入学生からは年次進行で高校の学習指導要領も変わります。
対象になる最初の学年は現小6生ですね。切り替わりは中学3年生を迎えたとき。ちなみに、現小5は中2から、現小4は小学校6年生から新課程で学ぶことになります。

今後の学習指導要領改訂スケジュール

文科省ホームページのPDFが開きます。

とういうことは、今年の生徒募集では、来春の入学生に対して学校がどのような教育課程を用意するのか、新学習指導要領にどう対応するか、ある程度までは伝える必要があるということではないでしょうか。
最近は高校でも、小学生向けの説明会を開催し、中高一貫校への流れを食い止めようとしていますから、そこでも同じように次期学習指導要領に向けた学校の姿勢を打ち出す必要がありそうです。
まだ教科書もどうなるかわからない段階では、具体的なことに言及することはできませんが、

  • 新学習指導要領を学校がどのように解釈しているか
  • 新しい時代に向けてどんな能力を重視した教育を展開するか
  • そのためのグランドデザインをどのように描いているか

といった「構想」までは示せるはずです。
児童や保護者の不安を少しでも解消し、期待を持ってもらえるメッセージが出せるかどうかは、生徒募集の結果を大きく左右するはずです。
生徒募集での学校の意思表明に際して、また、新課程に対応する教育課程の設計における校内の意思決定に際して、頭の片隅に常に留めておきたいことを、当ブログの最近の記事からピックアップしてみました。

新テスト対応にも探究活動は土台となる

大学入学共通テストの導入に向けた試行調査では、その試行結果の報告において「探究の過程等の設定を通じて、知識の理解の質を問う問題や思考力、判断力、表現力を発揮して解く問題を、各科目における全ての分野で重視した」とのこと。これに対応するには、教科学習指導の中でも課題解決場面を設ける必要がありますが、そこで身につけた力をさらに磨く機会として、探究型活動や課題研究が大きな役割を果たしてくれそうです。

“正解を言って欲しい”と言う生徒

生徒や学生にアンケートなどで授業の感想を聞くと、「正解をちゃんと言ってもらいたい」という声がちらほらと聞こえます。先生はある意図をもって、敢えて正解を示していないのが傍から見ていても明らかな場合にもです。答えは与えられるものではなく、自分で作るものという発想を持てる生徒・学生ばかりではなさそうです。正解を教えてもらうのが最も効率的な学び方という意識をどこかで植え付けてしまったのかも知れません。

第3期教育振興基本計画と”総合的な探究の時間”

第3期教育振興基本計画の策定に向けた基本的な考え方では「夢と自信を持ち」「可能性に挑戦する」「社会の持続的な発展を牽引」といった文言が並びます。その理念には反対する理由こそ見つからないものの、実現への具体的な方策は容易にイメージできません。様々な学校が意欲的な取り組みを始めており、探究型学習や課題研究、国際交流や地域連携などでこの課題に応えようしていますが、実態には解決すべき問題も少なくありません。

どこに進学させたかよりも、どんな人に育ったか

生徒一人ひとりについて、本人の資質や志向に見合った進路を見つけさせ、それを実現させることは高校の大切な役割ですが、高校は上級学校などに進むためのステップボードではありません。「人は高校時代が9割」という仮説もあるそうです。高校で身につけたものを土台にその先の学習や研究、活動が行われる以上、高校で何を身につけたかは、その生徒が卒業後にどんな成長を遂げ、どんな人物に育っていくかを大きく左右するはずです。

建学の精神や教育目標をきちんと伝える

建学の精神や教育目的を生徒にきちんと理解させるのは容易ではありませんが、しっかり理解させることができれば、学校の教育活動への理解や共感が高まるとともに、生徒の成長も大きくなることを示唆するデータが得られています。教育活動への理解と共感を得て、その成果を確かなものにするには校内外に向けた広報が重要ということです。その具体的な方法を、いくつかの学校で試してみた結果を踏まえて考えていきたいと思います。

生徒募集を通じて入学前の生徒と交わした約束

より良い教育活動の実現を目指すと、学校行事のあり方や指導計画にも毎年手を加えていくことになりますが、生徒募集活動を通じて入学前の生徒や保護者と交わした約束から軸足を外さないようにしたいもの。個々の指導の最適化を図る中で、上位にある学校の教育目的や各組織の指導目標との整合性には十分な注意が払われているでしょうが、同様に、生徒募集の段階で学校が生徒・保護者と交わした約束も違えてはならないものだと思います。

教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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