大学入試改革では、これまでと違った新しいタイプの問題が登場すると考えられています。昨年末に文科省のホームページでイメージ例が公表されましたが、検討の途中とあってまだサンプルは十分ではありません。現段階では、出題の変容を正確に予想するのは困難です。
しかしながら、すでに一部の大学で出題されている「正解がひとつに決まらない問題」 などは、今後も出題を増やすはず。正解がひとつに決まらない以上、結論を書かせるだけでは問題として成立しません。
「結論に至るプロセスを解答させて、その妥当性を評価(採点)する」 ことが益々大きな意味を持つようになると考えられます。
❏ 新しいタイプの出題例を集めることから
今後数年は、各大学の出題の変化を注意深く見守り、こうした新しい出題を見つけたらストックしておき、積極的に授業内外で扱う課題として指導計画に取り込んでいく必要がありそうです。
良問のストックは、大学入試改革への対応への第一歩です。先生方のチームプレイで、効率よく問題を集め、共有していきましょう。
■ご参考記事: 分業で行う出題研究のフィルタリング
❏ 好適な問題を見つけたらカレンダーに配置
好適な問題を見つけたら、テキストの単元配列などに照らして、指導カレンダー上に配置してしまいましょう。
その問題を解くのに必要な知識(記憶に格納する知識、外部参照する知識)を整え、解法へのアプローチ、思考様式の習熟を挑ませるタイミングまでに図っていくという発想です。
言うならば、「課題ありきの授業設計」 ですね。
酸っぱい葡萄/甘いレモンを作らない
「教材を選び、それを課題化するのは先生方の仕事」 であると申し上げましたが、課題を与えた以上、達成させるのは先生方の責任です。トライしても返り討ちにあうことを繰り返すうちに、生徒は達成への展望を失ってしまいます。やろうとしてもできない自分に向き合うのはつらいものです。
いざ挑ませる時には、既習内容だけでは不足する知識があれば、プリントや資料で補完手段を用意することになりますし、発想や着想の不足なら、先生からの問い掛けやグループでのディスカッションなどで補っていきましょう。
達成可能性を引き上げることで、学びの成果も大きくなり、生徒の自己肯定感や自信にもつながります。
❏ 正解が1つに決まらない問題には採点ルーブリック
正解が一つに決まる問題であれば、出題者が想定していた模範解答にどれだけ近づけたかで採点することができます。
しかしながら、答えが一つに決まらない以上、模範解答との異同で○×をつけるという手法は取れません。もしやろうとしたら、想定されるすべての解答をすべて予想しなければならず、現実には不可能でしょう。
採点ができないということは、評価ができないということ。評価ができなければ、目標に近づけるのに必要なことが特定できない(=指導が設計できない)という事態に陥ります。
そこで必要になるのが、採点ルーブリックと呼ばれる、観点別答案評価方法です。
下の表は、英語の意見展開問題での採点方法の一例(たたき台)です。観点と段階的な評価規準のマトリクスで構成されており、ルーブリック評価の手法を答案の採点に利用しようというものですね。
模範解答そのものに照らすのではなく、正解として成立する要件、思考のプロセスが妥当であると判断できる条件などを観点とし、それら一つひとつをどこまで充足しているかで点数を与えていく方法です。
その2に続く
教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一