大学入試改革で、「表現力」と並んで注目されている「思考力」。きちんと定義されることもなく用いられてきたことが多いだけに、それをどう評価し、どのように獲得させていくかは教える方それぞれの経験則や主観で語られがちです。
頭の中で起きている思考は、アウトプットされたものを外から観察できる表現力とは異なり、プロセスのすべてを直接的に観察することはできません。
答案として書き出されたものから伺えない部分は、生徒がとった課題解決行動そのものを観察する中で、どんな思考を積み上げているかを推測する以外に有効な手段はなさそうです。
新たな知識を得れば、新しい思考も動き出します。説明を聞いたり、読んだり、自分で調べさせたり、相談させたりした前と後とには当然ながら相違が生じます。
その違いこそが、生徒の思考の痕跡です。この痕跡を手掛かりに思考の様子を捉え、評価していきましょう。
観察するには、相手を動かす働きかけが必要です。じっと黙って考え込まれていては、観察できるものが何も表面に現れません。
活動させたり、表現させたり(=紙に書かせたり、言葉にさせたり)する機会を設けることで、観察機会をつくることがポイントです。
評価は、目標に近づけさせるのに必要なことがらを特定を図るために行うもの。評価は指導・育成のために行うもので、評価なしには学習目標の達成も、指導法の最適化も図れないということです。
今回のシリーズでは、4回に亘って現状で考えるところをまとめてみましたが、改めて「思考力をはぐくみ評価する」というテーマの難しさ、捉えにくさを感じています。
・測定/評価方法の確立にむけて
・考えさせるための問いを作ることから
・問いのあり方を、先例から学ぶ
・決まった流れを毎回繰り返す必要はない
・レディネスを整えたら、まずは生徒にやらせてみる
・普段から、生徒が自力で理解する場面を作っておく
・解を導き出す過程をしっかり観察
・どんな思考を求めているかを意識して観察
・結果の答えだけを見ても、思考は評価できない
・性悪説ではなく、教える側の責任として
・問いには2つのタイプ~特性を見極めて
・思考を止めた要因を取り除きながら解決に向かわせる
・着想の不足には「問い掛け」と「話し合い」で対処
・それなりにしか書けなかった答案をスタートラインに
・学習を挟んで2度答えを作らせ、その差分を測る
・どんなところに思考の痕跡があらわれるか
・思考の広がりと深まりを見て、学習を評価
・どのような材料・活動で不足を補うかが「授業設計」
・スモールステップ化には直列タイプと並列タイプ
・グループごとに課題を振り分けるときの注意点
・評価するには、思考力を構成要素に分けてから
・構成要素(=対応する思考動詞)ごとの段階的評価
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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一