生徒を指名して発言させることが、積極的、能動的に学習に参加させることに繋が得るのは間違いありませんが、指名→発言の流れを固定的に捉え、方法を誤ると、他の生徒の学習(思考や表現など)を止めたり、せっかく引き出した発言が深い学びに繋がらなかったりしがちです。
各地の学校で授業を拝見していると、指名する前に問いをクラス全体に投げ掛けていないケースも少なからず目にします。発言させる生徒を選ぶのは、クラス全体に向けて発問し、答えを考える様子を観察し、生徒の頭に浮かんでいる思考を覗き込む「観察の窓」を開いてからです。
答えを用意できていない生徒をうっかり指名しては対話が止まるだけですし、ネットかどこかで探し出してきた「模範解答」を読み上げるだけの「発言」をさせたところで、学びを深める効果は見込めません。
指名されていない生徒が発言する(=考えたことを言語化する)機会を与えられないのも問題です。素晴らしい着想や思考を得ていながら指名されるまで黙っているしかないのでは、当人も張り合いを欠くでしょうし、他の生徒はその着想や思考に触れることもできません。
学年が進むと発言が減るのを当然のことと考える向きもありますが、同じクラスでも、別の時間に別の先生が授業を行うと、発問への反応も発言の出方もまるで違うっているのも決して珍しくありません。誤った指導で、発言しない姿勢を学習させてしまうこともあり得ます。
2015/11/05 公開の記事インデックスを再アップデートしました。
指名順を決めると、ほかの生徒は学びを止める
発言したくても、順番が回ってくるまで待つ?
問いはクラス全体に投げかけ、反応をみて指名する
生徒に発言させることで得られる効果
指名→発言のパターンだけでは効率も悪い
発言に至るまでの準備、発言に触れて得た気づきの整理
全員が対話に参加できるように、発言をコントロール
声が上がらないのは、そう学習させてしまった結果
指名された生徒が答えられなかった時の対処
■関連記事:
答えられない生徒を待つ間、他の生徒が活動を止める
予習で作ってきた答えを言わせてみたところで…
他の生徒の発言を起点に学びを拡充する
予習や復習の履行率を高めるのに、外圧に頼らない
指示が曖昧/説明が長い+全体像が捉えにくい
考えるだけの材料が揃っていない
先生が持っている正解を探り当てようとしている
活動の配列を変えてみるだけで劇的な変化が
正解であっても理由を聞いてみるのは鉄則のひとつ
他の生徒の発言をヒントに答えを作り直させる
考えるための材料の不足は、生徒自身に補わさせる
生徒の発言を拾い上げてこそ、キャッチボールに
対話や協働に臨む前の「準備」で育む能力・資質
文字を介した先人との対話や先生との問答
対話の後には、問いに立ち戻って答えの仕上げ
教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一