連絡事項を漏れなく伝える

ホームルームを通じて学校からの連絡事項が余すところなく伝わっているのは当たり前と思われるかもしれませんが、生徒の認識をアンケートで質してみると、実際はそうとも言い切れないようです。肯定的な回答が全体の8割に達しているクラスは3分の2程度で、中には5割を切るようなクラスも散見されます。

2015/06/05 公開の記事を再アップデートしました。

生徒意識アンケート① HRを通じた連絡の徹底
ホームルームを通じ、連絡はもれなく伝えられている

上のグラフは、過年度に授業評価&生徒意識アンケートを実施した学校から10校をランダムに抽出して作成したものです。如上の質問に対して積極的な(=「どちらかと言えば」という但し書きのつかない)肯定で答えた生徒の割合をクラスごとに算出し、その度数を示しています。
生徒に対する連絡は「次に控える学びへの準備を整えさせる活動」ですから、ホームルームに限らず、教科学習指導においても、連絡の漏れがないよう、徹底が求められることは言うまでもありません。

❏ 連絡の徹底で指導機会に向け準備を整えさせる

繰り返しになりますが、連絡事項をしっかり伝えることは、次の学習機会に向けて生徒一人ひとりに準備を整えさせるための大前提です。
どれほど入念に練り上げた指導計画も、生徒の側での準備を整えさせないことには、所期の成果を上げるのは難しくなるばかりです。
ましてや、連絡の漏れ(生徒に対するだけでなく、ときには担当外の先生への漏れもあり得ます)で、せっかくの機会の存在に生徒が気づくこともなく、参加し損ねてしまっては話にもなりません。
進路指導などで優れた行事が行われていながら、周知の不徹底/アナウンスの遅れで、生徒が参加機会を逃しているケースはないでしょうか。

行事やイベントなど、非日常タイプの教育機会の創出には大きなエネルギーを投じているはずです。「生徒向け広報」にもしっかり力を入れ、投じた教育資源に見合った効果を得たいものです。

❏ 連絡の徹底は、他項目とも高い相関を示す

この項目で肯定的に答えられるかどうかで、他のアンケート項目への回答も違ってきます。
とりわけ【期待する行動】「担任の先生が生徒にどんな行動を期待しているか、はっきり理解できる」との相関(如上のデータで算出されたクラス別集計値ベースでの相関係数は0.720)はかなり強固です。
連絡事項をしっかり伝えようとすれば、当然ながら、次に控える学びの場で生徒にどんな行動を期待しているか、先生方の思いを伝えることになるはずです。
逆に、そうした思いを込めずに「事務的」な連絡事項の通達に終始しては、生徒の心に響くものは小さくなり、個々の連絡事項が生徒の記憶や意識に刻み込まれにくくなってしまいます。
如上の高相関にはこのような「双方向の因果」が考えられそうです。
ちなみに他項目のうち、連絡の徹底との間に0.6以上の強固な相関が確認できたのは、【公平な指導】「担任の先生は、生徒の言い分によく耳を傾け、公平に接してくれる」と【整理整頓】「教室は、いつも整理整頓され、勉強に集中できる環境が保たれている」です。
連絡が漏れたり、思いが伝わらなかったりすれば、生徒は「そんなことは聞いてないよ」と不満を抱くかもしれませんし、先生方が指導に込めた意図を誤解する生徒が出てくるのも半ば当然かもしれません。
また、教室環境の整備を疎かにしては、生徒の注意は余計なところに拡散してしまい、大切な連絡も漏れがちになります。実際の教室を拝見すると、掲示物が乱雑なまま、大事な告知が生徒の目に止まらなくなっている光景を目にすることもしばしばです。

❏ 連絡の徹底を図る様々な工夫

ホームルームでの連絡の徹底を図る上で、様々な工夫をしている教室も見受けられます。以下はその一例ですが、ご参考になれば幸いです。

・ビジネス手帳を用いてタスク管理と振り返り

ビジネス手帳を生徒に持たせて指導に活用している学校も少なくありませんが、忘れ物の防止や日々の振り返り、ときには平均学習時間の延伸にも、一定以上の効果をあげているようです。
ホームルームで手帳を広げさせてメモを取らせれば、必要に応じてそこに立ち戻り、以前伝えたことで期日が迫っているものがないかチェックさせるなどの指導も行いやすくなります。
体験のたびに感じたことをしっかり考え、言語化&記録させるのにも好適なツールになり得ると思います。

・連絡掲示は朝のホームルームで貼り出し、終礼で外す

あるクラスを担任する先生は、単純な連絡事項はホームルームで概略を伝えた上で、詳細は掲示にして決まった場所に1日だけ貼り出すルールにしていました。帰りのHRが終わると掲示ははがされますので、生徒も休み時間中に手帳を片手に書き写しに行きます。
ちなみに、手帳を使わずにスマホで撮影して済まそうとする生徒には忘れ物が多い傾向が見られるそうです。内容をろくに読まず、写真を撮るだけでは意識に刻まれるものも小さいはず。「手を使って書き写すことの大切さ」も学ばせていきましょう。

・ホームルームの運営と連絡事項の伝達は日直に任せる

ある学校では、ホームルームでの連絡事項の伝達を日直の仕事にしていました。週に5日間×35週÷20組(40人)=8.75、年間で8回ほどの順番が回ってきます。
生徒は、順番が回ってくるたびに、伝える事柄を整理し、要領よく時間内に収めることを考え、確実に伝えるために必要な工夫を凝らす中で、プレゼン技術の獲得とブラッシュアップを重ねていきます。
最初は緊張して舞い上がるだけ、2回目はうまく行かなかったことにへこみ、3回目にようやく手ごたえをつかんでそこでプレゼンの楽しさを学んだという生徒もいれば、伝える側に回ってみて改めて聴くときに取るべき態度を学んだとの感想を残した生徒もいます。

授業のこと以外にも尋ねておくべき“生徒の意識”
教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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