3ヵ月先、半年先を見据えて今なすべきことをイメージできる状態を保つことは、分岐点となる「選択の機会」に十分な準備を整えて臨むために欠かせません。そのためのツールとして、ビジネス手帳には大きな可能性と優れた機能が備わっています。
❏ 進路の手引きや進路通信との併用を前提に
しかしながら、同様のことを手帳なしで実現している学校も少なくありません。都内で毎年多くの東大合格者を出しているトップ校の一つでは、毎月以上のペースで発行されている「進路通信」に向こう3ヵ月の行事が必ず掲載され、配布の度に生徒も教員も自ずと先の予定を意識する仕組みが取られています。
また、別のトップ校では、進路の手引きが「これを見ればすべてわかる」という内容・構成になっており、行事に際して生徒に必ず持参させているそうです。この手引きには、進路調査票など、提出書類がすべて印刷物に綴じ込まれています。
切り取りのミシン目が入り、ファイル用の二穴があらかじめ設けられているという手の込みようには感動すら覚えましたが、生徒は自ずと、「いつまでに何を考え、何に結論を出さなければならないか」を意識できる作りです。
これらの方法と手帳とでは、それぞれ一長一短があります。
手帳は携帯性が高く、常時の利用を前提とした場合の利点が多くあります。生徒の日常に寄り添った指導ができるのが最大のメリットです。しかしながら、その分だけ記入欄が狭いのは宿命です。また、前年度のうちに、しかもかなり早い時期に校了にしておかなければならないという事情もあり、状況を見ながらの修正が効かない、というハンデはどうしても切り離せません。
❏ 利便性と使い勝手の向上と、紛失等のリスク回避
こうした相矛盾する要求を同時に満たす“解決策”は、「両者の併用」ではないでしょうか。日常の指導は手帳ベースで行い、要所で進路の手引きや進路通信を併用するというやり方です。こうすることで手帳の“作り”もシンプルにでき、汎用性も高まります。
手帳の作り込みに際して、記入欄が過度に細かく決められ、使い勝手に自由度が下がることは大きな問題です。3年生の指導にはあっていても、1年生、2年生には使い道がなく、無駄であると同時に、指導の邪魔になることもあり得ます。こうした問題は、ページデザインや構成をできるだけシンプルにすることで回避すべきものです。
また、提出物としては用紙が小さすぎることも、使い勝手を下げています。調査票や計画書・報告書等(大学訪問の前後で提出させるものなど)は、A4サイズなど紙面に余裕のある用紙を作ったほうがよさそうです。生徒が提出したものを集め、点検してコメントしたものをコピーして、教員の手元に残すのにも進路部で管理するときにも便利です。
返却したものは、生徒自身の手で、専用のファイルを用意して閉じさせておきましょう。手帳は年中持ち歩くので、紛失や、場合によっては盗難の危険もあります。考査の成績や志望校の情報など、機微に触れる情報がぎっしり詰まったものが手元を離れるのは・・・。
落とした生徒本人が悪い、という“自己責任論”にはちょっと乱暴に過ぎるものを感じざるを得ません。
その5に続く