その宿題、本当に必要ですか? #INDEX

宿題や課題は、生徒の力を伸ばそうという先生方の気持ちの現れであるため、ときとしてあれもこれもと与えてしまい、膨張の一途を辿りがちです。こなしきれないほどの宿題には、生徒から「仕上げきることの喜び」を学習する機会を奪うなど様々なリスクがありそうです。知識の拡張は、生徒の興味や進路希望によって必要となる範囲が異なるはずなのに、最大限の網をかけて全員に課しては、効果を上回る弊害を招きます。定着を図ること…

その宿題、本当に必要ですか?(その3)

シリーズタイトルとした「その宿題、本当に必要ですか?」は、宿題を指定する側が常に自問しなければならない問いだと思います。生徒が学習に振り向けられる時間は有限であり、その貴重なリソースを最大限に活かすには、より効果的な課題を選び出して行く必要があるはずです。日々の授業で生徒に課している宿題・課題の一つひとつには、履行を通じて達成すべき目標状態(=やらせる目的)があるはずですが、その目的はどのくらい達…

その宿題、本当に必要ですか?(その2)

宿題や課題を通して、授業で学んだことを課題解決に使ってみることは達成感を原資に次の学びへのモチベーションを高める効果に加え、課題に向き合って答えを仕上げる中で、不明の解消や興味の掘り下げも図られますので、学びを深く確かなものにします。前稿で挙げた3タイプの宿題のうち、「授業内容繰り返し型(記憶再現タイプ)」や「主教材と別に進める知識拡充型」に偏ってしまっては、如上の効果が最も期待できる「知識活用・…

その宿題、本当に必要ですか?(その1)

先生方の多忙はすでに広く認知された社会問題ですが、生徒の忙しさもかなりのところまで来ているように感じます。こなしきれないほどの宿題を与えても、ひとつひとつの課題にじっくり向き合えなくなってしまっては本末転倒。仕上げ切らないことを常態化させてしまっては一大事です。教材でかばんを膨らませても、学びが膨らむとは限りません。生徒に取り組ませているものを一度たな卸しして、必要性を判断した上で断捨離を試みる必…

LHRで授業評価を行うことのメリット

生徒による授業評価アンケートには、授業毎に教科担当の先生が教室で用紙を配って実施するパターンと、ロングホームルーム(LHR)内でクラス担任の先生の指導のもと全授業について一度に実施するパターンとがありますが、どちらが良いかとのご相談を受けることがあります。結論から言えば、LHR内での実施の方がメリットが多いと思います。大学のように学生ごとに履修科目がバラバラ、ホームルームが実質的に機能していない場…

活動性と学びの成果を繋ぐ鍵~課題を通じた目標理解

別稿でも書いた通り、授業時間内における学習者の活動性は以前と比べて高まっていますが、せっかくの活動が学びの成果につながっているかと言えば、必ずしもそうとは言えないケースも見受けられます。様々なアクテビティが授業時間内に配列され、生徒も反応よく活動していても、学びの目的であるコンピテンシーの増大という結果が伴わなければ、授業内の活動は自己目的化してしまっている可能性があります。 対話を通した「気づき…

リモート学習の可能性と十分な成果を得るための前提要件

新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、昨日から多くの学校で休校措置が取られました。所用があって駅前の商業施設を訪ねたところ、フードコートで楽しそうに談笑している高校生やカラオケ店に入っていく中学生らしきグループを見かけましたが、大丈夫なんでしょうか。休校という非常態勢をとった意味が伝わっていないような気がするような、しないような…。ここで愚痴っても始まりませんが。それはさておき、自宅学習の課題を…

負荷の高め方 #INDEX

教材や課題の難易度は、理解や解決に必要とされる知識の量、思考の深さ、手順の複雑さ、見通しの立てにくさや解法が求める戦略性といった様々な要素の組み合わせで決まりますが、学習者がそれらをどう感じているかを確かめながら、計画的・段階的に調整を図る必要があります。負荷が急激に高まれば、わからない/できないという失敗体験をあっという間に積み上げてしまい、科目の学びに対する自己効力感を弱めてしまった生徒は学び…

負荷の高め方(その3)

事前指導で獲得させる学習方策と失敗への耐性 適正な負荷をしっかりとかけ続けるることは、生徒の学力を最大限に伸ばす上で欠かせませんし、乗り越えるのがそうそう容易でないハードルに挑む中でこそ、生徒の側での学び方への工夫も生まれ、結果的に学習方策の獲得も進みます。中長期の指導に亘って適正な負荷を維持するには、生徒が感じる課題の難度や得意/苦手の意識の変化などを常に把握しておく必要があることは申し上げるま…

負荷の高め方(その2)

負荷を高めるときになすべき配慮と工夫 負荷が不足すれば生徒の力を十分に伸ばせませんし、出口で求められる学力への到達が遠のき、結果的には乗り越えなければならない段差を後に大きく残すばかりです。生徒が感じる難易度や負荷耐性の高まりを常に把握して、適正な負荷をバラつきなくかけて行くことが重要です。チャレンジングな課題に挑む中では学び方の工夫も生まれ、学習方策も身につきますので、学習者としての自立も進むも…

負荷の高め方(その1)

難易度の感じ方を把握し、負荷耐性を見極める 教科学習指導における目標ラインの設定や課題の難易度調整についてはいつも悩まされるところです。学力差、苦手意識への対応にも苦慮されている先生方も多いことかと拝察します。実際、ご相談を受けることもしばしばです。学習目標が達成できない/課題を解決できないことが重なれば、次の学びに向かう生徒のモチベーションも下がるのは自明ですので、ついつい生徒が十分にクリアでき…

隠されているものは覗きたくなる

以前、”所さんの目がテン”というテレビ番組で「のり弁の心理効果」を特集していました。このブログでのり弁について考察する気は毛頭ありませんが、「のり弁には好奇心をくすぐる宝探しのようなわくわく感がある」という点には興味を覚えました。「ご飯を隠すように海苔がのせられていることで、見えない中身を知りたいという意識が働く」というメカニズムは、学ばせ方のデザインにも応用ができそうです…

PISAが測定する「読解力」

国立教育政策研究所から『OECD生徒の学習到達度調査2018年調査』の結果 が発表され、テレビや新聞では「数学や科学は上位をキープしたが読解力で大きく順位を下げた」と大きく報じられています。結果はたしかにショッキングなものかもしれませんが、騒いでいるだけでは問題の正体を見失うような気がいたします。 ❏ 測定する能力に新たに加えられた2項目 同研究所のホームページに掲載されている「OECD生徒の学習…

新しい道具は、思考法や行動様式も変える

別稿「手を使って書き写すことの大切さ」で書いた通り、デジタル機器の普及で、手を使って書く機会はめっきり減りました。その影響は、手を使っての筆記が、キーボードやタッチバット、音声認識に置き換えられるという行動面での変化に止まりません。思考のありかたや、物事を考え出すときの手順そのものも変わっていきます。普段の生活の中で使うことができる道具は、教室での学びやテストの場に持ち込んでこそ、時代が必要として…

諦めない心は諦めたくないものを見つけた人に

11月も半ばを迎え、最上級生はいよいよ進路希望の実現に向けて本格的なスパートに入ったものと拝察します。一方で、ここから先は弱気の虫も騒ぎ出しやすい時期。期末考査の終了後は登校日も少なく、周囲の頑張りや先生の励ましに触れて気持ちを新たにする機会も減りがちです。“受験期はまたとない成長の好機“です。苦しく感じるのは頑張っている証拠ですから、受験を終えたときに気づく自分の成長を楽…

模擬試験で記載した志望校を確認しての指導

模擬試験を受験するときに生徒がどんな志望校を書いているか、きちんと目を通して把握しておく必要があると思います。言うまでもありませんが、生徒が記入した志望校群を漫然と眺めて、「なるほど、こういう大学を志望しているのか」と受け入れているだけでは不十分です。第一志望から順に並ぶ大学・学部・学科が、きちんとした手順を踏んで選び出されたものか、十分な理由をもって志望校に挙げられているかを観点に、各生徒の志望…

授業評価は多面的に

学習評価は多面的に行う必要があります。仮に成績が伸びていたとしても言われたことをただこなした結果であれば、先生が手を離した途端に学びを止めてしまうかもしれませんし、伸びている実感を欠いた生徒はその科目を学び続ける意欲を失いつつある可能性もあります。正しい学びの場を創出できているか、授業を中心とする教科学習指導がきちんと成果をあげているかを知る上で、チェックすべきことがらは多岐に亘ります。以下はその…

アクティビティと学習効果

授業内の活動を通して参加意識や充足感を得られることと、そこでの学習を通じて学力向上や自分の進歩を実感できることとは、単純にイコールではないようです。以下のグラフ(散布図)は、生徒による授業評価アンケートのデータを元に、授業内での活動に生徒が得る充足感と、授業を通じて実感する学力向上や自分の進歩(学習効果)との相関を探ったものです。縦軸・横軸に配した数値は、5択で得た生徒の回答を得点化したもの。横軸…

積極的に活動させるツボ #INDEX

高大接続改革や新課程を目の前に、知識・理解、思考力・判断力・表現力、協働性・主体性・多様性をバランスよく伸ばす指導方法の確立は先送りできない課題です。主体的で対話的で深い学びを実現するには、解くべき課題を与えて生徒が自ら/協働で解法を考える場を作る必要がありますが、そうした授業内活動を含む授業をデザインしても、生徒が積極的に参加してくれないことには狙った効果が得られません。教え込むより、調べさせて…

積極的に活動させるツボ(その3)

生徒が協働で課題の解決に当たる場を計画的・継続的に創出・確保することは、社会生活で求められる「協働性・主体性・多様性」を獲得させるために今後ますます重要になります。しかしながら、限られた指導時間をやりくりして授業内にその機会を作ったとしても、生徒がそれを活かしきるだけの準備が整っていなければ所期の目標は達成できません。教科学習指導における協働的な学びの場をきちんと機能させる上で、前稿で取り上げた「…