授業評価は多面的に

学習評価は多面的に行う必要があります。仮に成績が伸びていたとしても言われたことをただこなした結果であれば、先生が手を離した途端に学びを止めてしまうかもしれませんし、伸びている実感を欠いた生徒はその科目を学び続ける意欲を失いつつある可能性もあります。正しい学びの場を創出できているか、授業を中心とする教科学習指導がきちんと成果をあげているかを知る上で、チェックすべきことがらは多岐に亘ります。以下はその…

アクティビティと学習効果

授業内の活動を通して参加意識や充足感を得られることと、そこでの学習を通じて学力向上や自分の進歩を実感できることとは、単純にイコールではないようです。以下のグラフ(散布図)は、生徒による授業評価アンケートのデータを元に、授業内での活動に生徒が得る充足感と、授業を通じて実感する学力向上や自分の進歩(学習効果)との相関を探ったものです。縦軸・横軸に配した数値は、5択で得た生徒の回答を得点化したもの。横軸…

積極的に活動させるツボ #INDEX

高大接続改革や新課程を目の前に、知識・理解、思考力・判断力・表現力、協働性・主体性・多様性をバランスよく伸ばす指導方法の確立は先送りできない課題です。主体的で対話的で深い学びを実現するには、解くべき課題を与えて生徒が自ら/協働で解法を考える場を作る必要がありますが、そうした授業内活動を含む授業をデザインしても、生徒が積極的に参加してくれないことには狙った効果が得られません。教え込むより、調べさせて…

積極的に活動させるツボ(その3)

生徒が協働で課題の解決に当たる場を計画的・継続的に創出・確保することは、社会生活で求められる「協働性・主体性・多様性」を獲得させるために今後ますます重要になります。しかしながら、限られた指導時間をやりくりして授業内にその機会を作ったとしても、生徒がそれを活かしきるだけの準備が整っていなければ所期の目標は達成できません。教科学習指導における協働的な学びの場をきちんと機能させる上で、前稿で取り上げた「…

積極的に活動させるツボ(その2)

授業内の活動に生徒を積極的に参加させるには「失敗への恐れなどを上回る強い動機」を与えることが大切であると別稿で書きました。アクティビティを配列するだけでは目的意識のない「やらされ感」が先行するばかりですし、外圧で行動を促すだけでは外圧が解けたときに生徒は行動を取らなくなります。こうした手段に拠らず、簡単にはさぼれない環境を作り、頑張った生徒には相応の達成感が得られる仕組みを作り出すことにこそ、教え…

積極的に活動させるツボ(その1)

授業内活動の充実が、学習効果を高めたり、苦手意識を抑制したりする効果をもつことは、以前の記事でご紹介したデータ(下図)でも確認されています。対話による気づきの交換や活動を通した様々な体験が学びを深くしますし、教え合い・学び合いが不明の解消に役立つことなどが、こうした相関の背後にあると考えられます。 また、協働性・多様性・主体性といった、テストの結果で可視化できない学力を身につけさせるトレーニングと…

わからないでいる生徒を指名しても…

今期もあちらこちらの学校をお訪ねして授業を拝見させていただきました。様々な工夫が凝らされた実践を拝見して、刺激を受けながら貴重な時間を過ごせました。この場をお借りして御礼を申し上げます。素晴らしい実践については、機会を見つけて当ブログでもご紹介していく予定ですが、それとは別にどうしても気になる場面も少なからず見受けられました。その中の一つが、以前の記事でも取り上げた「生徒を指名して発言させるとき」…

進路指導で育む“選択の力”(その2)

進路選択は生徒にとって重大事です。生徒一人ひとりの資質や志向に合致した進路を決定するという目的を達することに加え、その過程を「選択の力」を獲得する機会と捉えた指導を実践しようというのが前稿の主旨です。進路指導を通じてどんな資質や姿勢、スキルが身につくいていくか、それらが探究活動や教科学習指導を通して獲得するスキルとどのように関わっているかを視点に、もう少し考えてみたいと思います。 2014/12/…

進路指導で育む“選択の力”(その1)

進路指導が、生徒一人ひとりに資質や志向に合致した進路を決定させることを目的として行うものであることに異論の余地はありませんが、この目的を達成する過程で生徒が身につけていくべき様々な資質や姿勢があることも忘れてはいけません。とりわけ、進路を選択していくプロセスの中で養われる「選択の力」は生徒がその後の人生を歩む上でとても大切なものです。進路指導は「選択の力」を養う上で、ほかに代えがたい重要な指導機会…

最短の進路がベストにあらず

普段乗ることがあまりない路線を利用したとき車内を見回していたら、専門学校の中吊り広告に「私の進路は最短距離」というコピーを見つけました。ある職業を志す決意で入学する専門学校では、進路希望という夢を最短距離で実現させることが求められるのは当然ですが、高校での進路指導となると全く別の話になります。 ❏ 寄り道が視野を広げ、正しい選択を可能にする 高校の進路指導は、「進路希望や志望理由を作るフェイズ」と…

課題(教材)のシェアから始める組織的授業改善

より良い授業の実現を図るには、習ったことを使ってみる機会(=授業を通じて獲得した知識や理解を用いて答えを導くべき問い)をしっかり用意する必要があり、それらが学習目標の理解や学びの仕上げに正しく利用できているか、生徒の学力向上感との間で散布図を描いてチェックしてみるべき、というのが一昨日と昨日の記事の趣旨です。 ❏ 紙の上に固定できることは議論の進めやすさ どのように授業を進めていくかは、教科の中で…

散布図中の位置で探る改善課題[活用機会×学習効果]

昨日の記事でお伝えした通り、「授業を受けて獲得した知識や理解を用いて、問いに解を導いたり様々な課題に解決方法を考えたりする機会」をどれだけ整えたかは、生徒の認識にある「授業を受けての学力向上/自分の進歩の実感」を大きく左右します。下図は、横軸に【活用機会】の得点を、縦軸に【学習効果】の得点を配して作成した散布図です。各得点は、下表の方式で5択(とてもそう思う~そう思わない)の回答選択率に基づいて算…

習ったことを使ってみる機会

授業評価アンケートの標準的な質問設計の中に「宿題や課題など、習ったことを使ってみる機会が整えられている」かどうかを尋ねる項目【活用機会】を設けてあります。この質問で尋ねていることのメインは、言うまでもなく文の後半です。文頭に付いた「宿題や課題」は、後半部分を実現するための手段例であり、「など」が含意する通り、ほかにも実現の手段はあり得ます。要は「習ったことを使う機会」が整えられていれば良いのですが…

言語化を通じて育む「振り返りのための相対化スキル」

学習場面での「振り返り」は、学びへの目的意識を持った/主体的な取り組みを生徒から引き出し、学習者としての自立に向かわせるために欠かせないものですが、振り返りという行為そのものがメタ認知を用いた高度な知的活動であるため、何の準備指導もなくやらせてみたところですべての生徒がきちんと/的確に行えるわけではありません。的確な振り返りができる生徒を育てるには、トレーニングの機会とその都度与える先生からの的確…

高大接続改革と定期考査問題

2020年に迫る高大接続改革に備えてこれまでに何年もかけて積み上げてきた準備を土台に、新しい学力観に沿った学ばせ方への転換が図られているものと拝察しますが、同時に、学力形成の中間検証手段である定期考査もそれに見合ったものに更新されていかなければなりません。次に控える定期考査までに、教え方と測り方の双方がきちんと更新できたか、ご自身で/教科の中で確かめておく必要があると思います。生徒は考査問題に合わ…

問答を通じて論理性を養う #INDEX

教科学習指導の目的は、各科目に固有の知識や理解を形成することに止まらず、その教科・科目の学び方を身につけさせることや、論理的に物事を観察し、思考を積み重ねる方法を学ばせることにもあります。前者には、「学習方策は課題解決を通して身につく」「自ら学び続けられる生徒を育てる」という姿勢で授業に臨む必要がありますが、後者には、先生からの問い掛けを起点にした問答を重ねることが最も有効な手段の一つであると考え…

問答を通じて論理性を養う(その3)

問答を通じた論理性・思考力の涵養は、すべての科目を選ぶことなく学ばせられる高校のうちにこそ推し進めたいところ。様々なジャンルを対象に思考の訓練を重ねた方が、より汎用性の高い力が得られます。しかしながら、生徒の思考を引き出しながら問いを重ねようと、ただ発問を増やしてみても、生徒の反応が鈍いままというケースも少なくありません。「正解を言い当てることではなく、自分の考えを言葉にすること自体が求められてい…

問答を通じて論理性を養う(その2)

スクール形式で行う、一見すると講義形式のような授業スタイルでも、頻繁に問いが発せられ、生徒の発言をきちんと拾い上げて次の問いに繋ぐという流れができていれば、生徒の頭を十分にアクティブな状態にすることができます。問いを重ねるということは、思考を掘り下げることであり、また見落としを減らし視座を広げることに繋がっていきます。もちろん、協働性を身につけさせる場では、各地で研究されどんどん開発されている&#…

問答を通じて論理性を養う(その1)

生徒に論理性や思考法を身につけさせる最上の方策の一つは、先生との問答(対話)です。問いを投げかけ思考させ、考えたところを言葉にさせることで、思考そのものやその土台となる観察の欠落に気づくことができます。外からの問いによって、それまでの考えを相対化させることは、より合理的な答えに近づくために欠かせないものだと思います。 2015/04/22 公開の記事をアップデートしました。 ❏ 考え方そのものを身…

学びの重なりを上手に利用したコンパクトな学校経営

学校は様々な教育活動の集合体として成り立っていますが、相補関係を考慮しないで個々の教育活動を設計すると、部分最適化は図られても、リソースの最適配分という視点が欠落することもあります。新たな要請に応えて足し算(増築)を繰り返し、教育活動を膨らませていくばかりでは、リソースの枯渇は免れません。積み上げてきたものを振り返り、その先を描く中で、新しいものに置き換えるのが好適か、以前からのものを磨き上げるべ…