夏休みの過ごさせ方を振り返って、来期の指導設計を

昨日のブログで、「自由研究/課題研究は狙い通りの成果を得たか?」と題して、夏休み中の宿題の代表格(?)である自由研究、課題研究について考えてみました。各教科で課した宿題・課題も含めて、所期の成果が得られたかどうか、2学期の初めにはきちんと検証をしたいもの。夏休み中の講習・補習も同様です。夏の間に行った指導/取り組ませた課題の成果を検証しないことには、2学期からの指導の起点を正しく定めることもできま…

自由研究/課題研究は狙い通りの成果を得たか?

まだ夏休みが始まっていないのに「何、このタイトル?」と思われた方が多いのではないかと拝察いたしますが、ひと月後に初めてこの問いを思い浮かべたのでは時すでに遅し、与えた課題の効果を検証する準備が十分に整っていない可能性が高いのではないかと考えます。 1学期の終業式を迎えて、夏休み中に取り組むべきタスクはすべて生徒に提示されているはず。生徒の時間(加えて、場合によっては教材等の購入費などの金銭)を投じ…

副作用を抑え、効能を最大化するルーブリック評価の運用

ここで改めて申し上げるまでもありませんが、新課程への移行に伴って「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3観点での学習評価が行われるようになります。文科省が示した指導要録(参考様式)にも、各教科・科目の観点別学習状況を記載する欄が設置されています。指導要録に、評定とともに観点別学習状況が「AAA」といった具合に記録として残る以上、評価結果に対する説明責任は、これまで以上に…

先輩たちの研究成果に対して立てる「問い」

探究活動に取り組ませるとき、最も重要でありながら、上手くいかないことが多いのが「研究テーマの設定」「問いの立て方」だと思います。導入指導で探究活動が目的とするところをしっかり理解させておかないと、探究の手順をきちんと踏まえることもできず、自分と社会の接点を探すことにもつながらない、興味本位に走った「趣味・道楽の延長」を抜け出せていないテーマを設けてしまう生徒も出てきます。探究を通して答えを見つける…

複数テクストの比較で試す「読解力」

大学入試問題では、複数のテクストを取り上げた問題が見られるようになり、注目を集めています。今年の大学入学共通テストの国語でも小説の本文と併せて、当時の新聞に掲載された批評が資料として与えられ、両者を読み比べて答えを導く問題がありました。他教科の問題でもどのデータに当たるべきかを考えさせたりする設問が登場しています。 ❏ 新課程が求める「学ばせ方」を実現するために PISAの読解力定義には2018年…

クイズで導入、教科書への落とし込みで仕上げ

2019年に出版されてベストセラーになった『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』では、その冒頭に簡単ながら、答えがちょっと意外なクイズが 13 個用意されています。例えば、こんな問題です。 自然災害で毎年亡くなる人の数は過去100年でどう変化したか。{2倍以上になった/あまり変わっていない/半分以下になった} 単純な三択問題ですので、まったく手掛かりなしに当てずっぽうで答えたとしても33%…

探究活動・課題研究と手段科目としての英語学習

夏休みの宿題では昔からの「定番」になっているものの一つに、英語のサイドリーダーがありますが、「時間の余裕があるときに、まとまった量の英文を読むこと」の意義は、学力観や学習指導を通して目指すところが変わってくる中で、以前とは捉え方を変えるべきかもしれません。そもそも、生徒の夏休みは、体験学習や課題研究/探究活動、大学訪問と様々なコンテンツやイベントが積み込まれる中で、「時間の余裕」があるものではなく…

やりきらずに放置してきたことを仕上げさせる

夏休みを迎える前に生徒に投げかけたいことは色々とあるでしょうが、その一つは「1学期中にやり残してきたことを、夏休みの間にきちんと仕上げ直すこと」だと思います。単語集の暗記でも、先生がせっかく小テストまで用意してくれてペースを作ってくれたのに、補習を免れるためにその場限りの詰め込みで乗り切っただけでろくに記憶に残っていないことや、自分で立てた受験勉強にも遅延が生じまくっていることも少なくないはずです…

4月の授業開きを思い出して~夏を迎える準備

学期が終わりに近づいたこのタイミングでしっかりやっておきたいことの一つは、新学期に生徒に伝えたメッセージがどこまで生徒の中で消化され、自分のものとして習慣化/確立しているか確かめることです。新学期が始まる時に、教科担当者として、ホームルーム担任として、生徒には様々な期待(身につけて欲しい能力や資質、考えて欲しいこと、取れるようになって欲しい行動など)を伝えたことと思いますが、どんなことを求めたのか…

補習・講習の目的再確認~どんな変化を期待するのか

1学期も終盤を迎えました。夏休みを前に期末試験の準備などご多忙の日々と存じます。終業式後も、補習や講習がすぐに始まり、行事の引率や部活動と相まってスケジュールはびっしりだと思います。さて、その補習・講習ですが、様々なタイプがあります。例えば、 目標大学群の出題傾向を学び、その対策を考えさせるもの 特定分野をより深く、広く掘り下げて学ばせるもの 成績が振るわなかった生徒のキャッチアップを図るもの な…

生徒が解法を考える機会(解に至る工程を自力で辿る)

講義座学系の教科で「授業を通じて学力の向上や自分の進歩を実感できるか(学習効果)」に対し大きな寄与度を持つ項目の一つに「習ったことを使って課題解決に取り組む機会(活用機会)」があります。しかしながら、習ったことを使って課題解決に取り組む機会を整えている度合いは、個々の授業で「かなりまちまち」というのが現実の様子。教科による違い(有利・不利)もありますが、データを見る限り、先生方の「学ばせ方」で生じ…

教え込むより、調べさせて気づかせる

教科固有の知識や理解を効率良く形成したい場面では、調べさせたり、考えさせて気づかせたりすることより、教えるという方法をつい選択しがちですが、それでは生徒が自力で物事を理解したり、何かを解き明かしたりする力を養う機会を奪ってしまうことになりかねません。下図を見ると、横軸と縦軸の値が等しくなるところに引いた基準線(赤い破線)の上側に位置する授業はごく少数であることから「指示や説明がわかりにくければ、学…

主体的・対話的で深い学びをデータから考える

主体的・対話的で深い学びの実現に向けて、生徒が自ら(=主体的に)学びに取り組むための学習活動/アクティビティを用意し、課題解決に向けた協働の中での生徒同士の話し合い(対話)を増やすなど、先生方は日々の授業に工夫を重ねておられることと拝察いたします。そうした工夫を積み重ねる中でこそ、指導改善の成果は定期的に/しっかりと確かめていく必要があろうかと思います。生徒が対話に参加する場面をどれだけ作り出した…

学習効果に直結する活動性、それを支える視覚情報

授業内での活動性を高めることが学習効果の実感に直結することは、これまでの記事でもお伝えしてきましたが、一見したところ授業内活動とは何の関係もないように思える「わかりやすく整理された板書や資料」が、活動性の向上に大きく貢献していることを示すデータがあります。 2018/07/30 公開の記事をアップデートしました。 ❏ 充足感のある授業内活動は学習効果に直結する 授業内の活動性を高め、それを通して生…

課題解決を伴わない知識獲得は… #INDEX

新課程におけるカリキュラムマネジメントでは、各単元の内容(コンテンツ)を学ばせることを手段に、21世紀の社会を生き抜くために必要な能力・資質(コンピテンシー)を育むという目的を達成していくとの発想を持つことが求められます。実際のカリキュラム編成や指導計画立案においては、各単元の学習内容を縦軸(行)に、育むべき能力・資質を横軸(列)に配したマトリクスを想定し、行と列の交点にある各セルに適切な学習活動…

課題解決を伴わない知識獲得は…(解決策考察編)

前稿で検証してみた通り、獲得した知識を用いた課題解決(=知識の活用)を体験する場を授業内外にきちんと整えておかないと、「わかりやすい説明」と「丁寧な確認」を通じて知識の獲得を確かなものにしても学力の向上をしっかり実感できる授業は実現しにくいようです。限りある授業時間を上手く配分して、知識の確実な獲得・体系化とそれらを生きて働くものとして活用する力(=思考力)を養うトレーニングとのバランスを取るため…

課題解決を伴わない知識獲得は…(データ検証編)

だいぶ古いお話で恐縮ですが、平成28年に文部科学大臣名で発信されたメッセージ「教育の強靭化に向けて」では、学ぶことがら(知識や技能)は減らさず、思考力・判断力・表現力をこれまで以上に鍛えるという方針が示されました。当時、「ただでさえ不足気味の授業時間の中で、教えるべきことをきちんと教えた上で、思考力・判断力・表現力を鍛える指導まではとても手が回らない」というご感想や戸惑いが多く聞かれたのを覚えてい…

理解確認と活用機会はバランスを取って

授業評価アンケートの結果をみると、理解確認と活用機会のバランスを欠く授業が少なくないことがわかります。下図は、授業評価アンケートをご利用いただいた学校でのデータで作成したものですが、理解確認と活用機会の双方が一定以上の水準に達している授業は全体の一部です。 2015/07/14 公開の記事をアップデートしました。 ❏ 覚えることに偏らず、活用の前提もしっかり整える 理解確認と活用機会の双方を高い次…

理解の確認を怠ると…

授業評価アンケートなどで、「先生は、生徒の理解や状態を確かめながら授業を進めてくれていますか」と尋ねてみたときに、すべての生徒がYESと答えてくれる状態を維持することはとても大事なことですが、実現するのはそうそう簡単なことではなさそうです。実際のデータを見ると、下図の通り、肯定的な回答が9割を占める換算得点75ポイントに到達していない授業もかなりの割合を占めています。 2016/08/24 公開の…

新課程の枠組みで考える「知情意」

3年後に登場する新一万円紙幣に肖像が刻まれることになり、大河ドラマ「青天を衝け」も放送されるなど、渋沢栄一はちょっとした時の人になっています。この4月に放送された「100分 de 名著」を視聴したのをきっかけに「論語と算盤」(角川ソフィア文庫)を読んでみました。なかなか読みごたえのある一冊ですが、中でも第3章「常識と習慣」に触れられている「智情意」は、多くの学校で教育目標の記述に用いられており、考…