月: 2024年6月

学力層に応じた「指導の力点」

クラスの中には様々な学力(獲得済みの結果学力のみならず、学ぶ意欲も含む)の生徒がいますが、学力層ごとに、指導の力点/獲得させるべき能力や資質の「重みづけ」には違いがあって然るべきかと思います。各単元の内容を学ばせながら、様々な能力や資質(21世紀型能力で言えば、基礎力、思考力、実践力を構成する要素群)を獲得させるのはどの層でも同じですが、卒業後の人生で引き受ける「主たる役割」によって、各要素の獲得…

実技・実習系の授業評価アンケート(質問項目)

体育、芸術、家庭などの実技実習系教科でも、講義座学系の教科と同様に「学習を通じて自らの進歩や成長を実感できること」は学びを継続する意欲の原資に外なりません。各評価項目の質問文は学習効果を実感できる授業が備える要件を記述したものですので、どこかにボトルネックが生じていないか、集計結果を用いて常に点検しておきましょう。 2015/05/25 公開のまとめページを再アップデートしました。 実技実習系で、…

授業を受けて実感できる自分の進歩

学びへの自己効力感を高められば、主体的な取り組みや積極的な授業参加が期待できますが、下がった状態では、できない自分に向き合うことへの抵抗もあり、対象に近づこうとは思えなくなるのもしばしばかと。生徒に答えてもらった「授業を受けて、知識や技能が身につき、自分の進歩を実感できるか」という質問に対する肯定的な回答が占める割合は次の学習に向けたモチベーションをどこまで持たせることができているかを端的に示す指…

自分の取り組みの成果を発表できる機会

生徒がそれぞれに取り組んできたこと(工夫と努力の成果)を発表する機会を、授業内外にしっかり整えることの効果は、発表という「目標」に向けて生徒の頑張りを引き出すことだけに止まりません。自分の取り組みの成果を存分に示せれば、達成感を原資とする次へのモチベーションが得られますし、仮に多少の失敗を含んだときも、次のチャンスに向けた課題が形成でき、先の学びに向かう姿勢を作れます。周囲の頑張りを目の当たりにす…

振り返りを通じた成果のたな卸しと次への目標設定

興味や意欲は、努力して達成した中に生まれるものですから、振り返りを通じて自分の進歩を確認する場を整えることが、積極的な学びの姿勢を作ります。また、できたこととできていないことの切り分けがはっきりしないことには、次に何をするべきかを特定することもできません。振り返りとその支援のための助言が大切であるのは、このためです。下表の通り、振り返りの成否は学習効果(授業を受けての技能の向上や自分の進歩の実感)…

作業や練習の目的の明示、到達目標の設定

作業や練習に取り組ませる際、その目的や目指すべき到達状態を明示して、生徒にしっかりと把握させておくことは、目的意識を十分に備えた主体的で積極的な授業参加を促すための大前提です。モチベーションの原資である「達成感」をより強固なものにするにも、パフォーマンスの向上を図るのに何をどうすべきかを考えさせる「振り返り」を的確に行わせるためにも、目標への認識は不可欠です。得意な生徒と苦手な生徒の間でパフォーマ…

生徒の状況を把握した上での授業進行

生徒一人ひとりが現在どのような状況にあるのかを把握することの必要性は言うまでもありません。教える側では十分に状況を把握して進めているつもりでも、生徒の認識は違っているかもしれません。学びの主役である生徒の認識を確かめるべく、定期的に「先生は、生徒の状況をよく把握しながら授業を進めているか」と尋ねてみましょう。生徒の状況を十分に把握できていない限り、的確な指導や助言もできません。次の段階に進める状態…

戸惑いを抑える、約束事と個々の指示

何らかの行動を指示したときに、生徒が戸惑い、期待通りの反応をとれないことがあります。原因は様々ですが、大別すると「何を求められているのか把握しかねている場合」と「指示に応える態勢が整っていない場合」の2通りでしょう。これらに加えて、取るべき行動はわかっており、態勢も整っているにもかかわらず、周囲の様子を窺ってしまい行動を起こして良いものか躊躇ってしまうという場合も少なくありません。 2015/05…

練習や作業のポイントを把握させる

練習や作業のポイントがしっかりわかっていれば、勘所を掴んだ効果的な取り組みが期待できますが、ポイントを捉えられないまま無為に時間を費やしては、当然ながら学びの成果は上がらず、次のステップに進むレディネスも調いません。いかに簡潔にポイントを捉えさせて、練習や作業に十分な時間を残すかが先生方の腕の見せどころです。言って見せて聞かせるだけがその方法ではありません。生徒が自分から気づき、それを言語化して意…

講義・座学系の授業評価項目

生徒による授業評価アンケートで得られるデータは、「より良い授業の実現」を目指す場面での「課題形成」と「改善行動の効果測定」の材料です。アンケートで焦点を当てるべきは、科目学習に対する自効力感ですが、それだけを尋ねても、ボトルネックの所在は探れません。良い授業とは何か、その構成要素は何かは、常に問い続けなければならないことですが、授業評価アンケートの評価項目/質問設計を考えるのは、その問いに答えを作…

科目を学ぶことへの目的意識/学ぶ理由

新しい学力観の下で実現を目指しているのは「主体的、対話的な深い学び」ですが、最初の要素である「主体的」であるためには、その科目を学ぶことへの「自分の理由」を持っていること前提の一つです。前稿で触れた「学習方策」が未獲得では学びは依存的なものにならざるを得ず、「学ぶ理由」がなければ受動的なものになってしまいます。振り返りを通じて見出した自分の課題(=次の機会での自分の目標)や解き明かしたい不明など(…

科目の学び方や取り組み方の獲得

主体的に学んでいると言えるには、生徒自身が「学ぶことへの自分の理由」を持っていることに加え、自ら学び進められるだけの学習方策を獲得している必要があります。誰かに教えてもらわなければ勉強が進められない状態はどこかで脱したいもの。自ら学び続けられる生徒を育てることは、数ある指導目標の中でも最も重要なものの一つです。■関連記事: 学習方策の獲得はどこまで進んでいるか【学習方策】 私は、この科目の学び方や…

科目への意識姿勢~得意と答える生徒を増やす

同じ教材で同じ指導をしていても、得意・苦手の分布はクラスによって異なります。学習履歴の中で積まれた成功体験や獲得している学習方策によって感じ取り方が違うためです。得意寄りに分布が偏るクラスでは、より高度な課題を与えて達成感をより強固なものにする一方、苦手意識が優位なクラスでは課題のスモールステップ化や集団知の活用で成功体験を積み上げさせていきましょう。学習指導を重ねるうちに、この質問で「得意」と答…

難易度の設定は負荷の感じ方を確かめながら

勉強に限らず、適正な負荷をかけることは能力や資質を伸ばす上で欠かせません。ある課題に対して正解を導けたとしても、楽々と達成した場合と、持てるものを総動員して達成した場合とでは、そこから得られる充足感も、その機会を通しての成長も大きく異なります。楽々とクリアできるようなハードルばかりでは、頑張りがいもありません。生徒が集中力を欠く原因にもなりそうです。負荷を適正な範囲(生徒が「やや難しい」と感じ、少…

授業を受けて実感する学力の向上や自分の進歩

当オフィスが監修する授業評価アンケートでは、「授業を受けて学力や技能の向上を実感できるか」という質問を「目的変数」に、それに対して有意な寄与がデータで確認されている項目群(目標理解や活用機会など)を説明変数に配することで質問を組んでいます。 日々の授業を通じて学力向上や自分の進歩を実感する生徒は、高い確率でその科目への興味や関心を深めるというデータ(下図)があります。自分で工夫や努力をして目標を達…

対話と協働による気づきと学びの深まり

授業内における学習者の活動性を高く保つことによって、学力や技能の向上をより強く実感できたり、苦手意識の発生を抑制できたりといった効果があることは、既に様々なデータで確かめられています。 これをもう一歩進めて、「深い学び」に繋がっているかどうかを確かめようというのが、以下の質問文(授業評価項目)を導入した意図です。【対話協働】 話し合いなどの協働で、気づきや学びの深まりが得られる。 2019/04/…

理解したことをもとに課題の解を考える機会

読んだり聞いたりして理解したこと(獲得した知識)を用いて課題への解を考えるとともに、その結果を第三者の理解と共感が得られるように表現する力は、新しい学力観の下でますます重要性を増してきました。授業毎にきちんと「学び終えて解を導くべき課題」を用意することは、獲得した知識・技能に「生きて働く場」を与えることにほかならず、思考、判断、表現の力を鍛え、きちんと評価するためにも欠かせません。本時のターゲット…

達成すべき目標やポイントをはっきり示す

学習を通じて到達すべき状態を生徒に理解させておくことは、授業のわかりやすさを大きく高めます。目指していることに照らし、生徒が一つひとつの説明や指示の意味をより良く理解できるようになるからです。目標が明確になればその分だけ到達したときの「達成感(次の学びへのモチベーションの原資)」もより強いものになりますし、目標に照らした振り返りも的確に行えるようになり、学習改善も期待ができます。また、指導と評価の…