月: 2021年1月

優良実践の共有~授業評価の結果を活かして(その2)

学校全体で授業改善を進めていく上で欠かせないのが、「データを用いて優れた実践の所在を明らかにした上で、それを教科内外で広く共有すること」であるのは言うまでもありません。文字にすると、(やや長いとは言え)一文に収まる単純なことですが、実現にはいくつもの要件を満たさなければなりません。魅力的に見える実践も、それを取り入れたことで生徒の学びに有意な効果をもたらしているかどうか確かめる必要がありますし、共…

優良実践の共有~授業評価の結果を活かして(その1)

授業評価アンケートは、校内/教科内に存在している優れた実践(=高い評価を得ている授業)の所在を確かめ、それを広く共有して学校全体あるいは教科全体での授業改善を進めていくためのツールです。校外から持ち込んだ新たな手法が、自校の生徒の学習者特性にマッチする保証はありませんが、校内で既に高い評価を得ている授業でのやり方なら、生徒が身につけている学び方との高い親和性が期待できます。こうした優良実践の共有が…

授業改善には授業デザインを先行させる

深く確かな学びを実現する授業を構成する要素には、話し方や板書、指示や説明、確認の取り方などの「伝達スキル」と、学習目標を共有したり、学んだことを使う場を整えたり、対話を通して学びを深めたりといった「授業のデザイン」の2つがあります。伝達スキルの多くは、個々の先生に内在するものであり、参観などを通じて優れた手法に触れたとしても、その場から自分のものとして自在に使いこなせるようになるとは限りません。生…

正答率の予測ができれば授業設計も最適化

正答率を正しく予想できるということは、問題が要求する様々な学力に照らした「生徒の状況把握」が正確に行えているということです。教科学習指導は、目標学力と生徒の現況学力との差を埋めるための行為であり、正答率の予測精度(=現況学力を正しく把握しているか)は、指導設計の妥当性に大きく影響を与えます。様々な場面で実際に予測を行ってみて、ご自身の予測力を常に点検するとともに、精度の向上を図る努力も怠らないよう…

授業内に行う小テスト

小テストは、前回までの授業で学んだことや自学用に持たせている副教材の内容など、覚えさせる/確かめる内容とそのソースは様々ですが、実施のタイミングは「授業の冒頭」というのが一般的だと思います。始業の礼から間髪入れずに小テストを始めることが習慣として確立している授業では、休み時間からの切り替えもスムーズで、授業時間を無駄なく使うことにも大きく貢献しているように見えます。これに対し、今回ご提案するのは、…

理解度の確認~場面と方法 #INDEX

ひとくくりに「理解度の確認」といっても、その方法には発問、小テスト、課題など様々。生徒同士に話し合わせてそれを観察するという手もありますが、それぞれの方法には得手・不得手とする領域があり、どれか一つの方法で押し通したところで的確な理解確認はできません。また、授業を進めるときのフェイズ(場面)ごとに、確認の目的も違います。それぞれの目的に合致した確認方法の正しい選択は、理解の確認という指導者行動を効…

理解度の確認~場面と方法(その4)~課題を提出させて

前々稿の発問による理解度の確認 、前稿の小テストによる確認 に続いて、「提出された課題を通して行う理解度の確認」について考えてみたいと思います。この方法で確かめる「理解度」は「知識・理解が生きて働くものになっているか」に焦点を据えます。言うまでもないことですが、教えたことを生徒が正確に覚え、答案に再現できたことをもって「理解できた」と判断しては、新しい学力観に沿った学ばせ方とは言えません。 201…

理解度の確認~場面と方法(その3)~小テストの活用

前稿では主に「発問」を通じた理解度の確認方法について考えてみました。導入・展開・まとめのいずれの局面でも「反応の即時性」と「対話への繋ぎやすさ」が発問が持つ最大の強みです。これに対し、小テストで行う理解度の確認の強みは、正誤の結果や誤答の分布を定量化しやすく、データを効果検証などに活用できることにあり、それを十分に生かしていきたいものです。ICT/デジタルツールの進歩により、その場での採点の自動化…

理解度の確認~場面と方法(その2)~発問による確認

理解度の確認といっても、その方法には、発問、小テスト、課題などの提出物の点検、生徒同士のやり取りなどの観察といった様々なものがあります。それぞれ長所・短所があり、用いるべき場面や上手に行うために押さえておくべき勘所というべきものもあります。まずは、発問/問い掛けによる理解度の確認から、場面を分けながら効果的なやり方について考えてみたいと思います。 2014/05/23 公開の記事をアップデートしま…

理解度の確認~場面と方法(その1)~目的とするところ

理解度の確認は、次に進む準備が整っているかどうかを確かめるために行うものです。もちろん、教えたことを覚えているかどうかも大事ですが、断片化した知識として記憶に残っているだけでは、理解したことにはなりません。獲得した知識が「生きて働くもの」になっているか、課題解決に活用させることで確かめるところまで踏み込みましょう。 2014/05/22 公開の記事をアップデートしました。 ❏ 次のフェイズに進む前…

対話により思考の拡張を図り、観察の窓を開く

授業内に生徒が活動する場を作る目的は、解くべき課題を与えて発動させた思考を「対話を通じた知識や発想の交換」で拡張させることに加えて、生徒の頭の中で何が起きているかを把握するための「観察の窓」を開くことにあります。沈思黙考という言葉もありますが、一人の頭の中だけで考え得ることには限界があります。それ超えていくためには対話を通じた思考の拡張が欠かせません。また、生徒一人ひとりの思考を言語化させてみない…

自力で学ぶ力を育むのに重要な、最初に選ぶ”対話の相手”

授業中に問題演習を行っているとき、生徒に「わからないことがあったら手を挙げ(て質問し)なさい」と声をかけるのは教室でよく目にする光景です。明示されていませんが、質問する相手は「演習の様子を観察している先生」が意図されています。生徒の疑問にきちんと答えるのはもちろん先生方の大事な仕事ですが、不明解消の方策を学ばせる/学習者として自立に向かわせるなら、最初に問いかけさせるべき「相手」は別にいると思いま…

活動させるのは観察のため~「観察の窓」を開く

授業の中で生徒は様々な活動に取り組みますが、それらを通して生徒は以下をはじめとする様々な「学びの目的」を達していきます。 自ら考えて行動する中での体験を、知識や理解に再構成していくこと 理解や思考の結果を言語化する中で学びをより確かなものにすること 対話(気づきの交換)で思考を拡充し、判断に必要な視野を得ること 一方、教える側/学ばせる側である先生方にとっても、生徒が活動する場を整えることでしか、…

デジタル・トランスフォーメーションと教室での学び

コロナ禍で、教育ICTの活用が一気に進みました。新たに開発・導入された技術やサービスが「新しい学力観に沿った学ばせ方」の実現に役立つところでは積極的に活用したいところです。デジタル・ツールを活用することで指導法にも可能性が広がりますし、新しい道具は、思考法や行動様式も変えるため、従来の方法に拘っていては新しい時代が求める能力やスキルを育て損ねる可能性もあります。しかしながら、「新しい技術やサービス…