探究活動、課題研究

成果より、プロセスに焦点を~探究活動の評価

高校生の探究活動で評価の対象とすべきは、所謂「成果」(論文やポスター、口頭発表といった最終的なアウトプット)ではなく、「探究のプロセスをきちんと体験したか、そこから十分な学びを得たか(=所期の能力・資質を育めたか)」に焦点を当てて行うべきだと考えます。 今のところ、このような視点で「総合的な探究の時間」における評価を設計している学校は多くありません。評価は学びの方向を修正し、目標達成をより確実にす…

探究活動、課題研究

1 横断的・体験的な調べ学習の先にある探究活動 1.1 調べたことの先に~新たな知と当事者としての関わり ・資料を与えて読ませる/探させる、そしてその先に ・探究活動の課題~調べ学習との境界と進路への接点1.2 探究活動の目的から考えるテーマ選び ★ Updated! ・探究テーマに偏りは生じていないか ・知りたいから始める探究テーマ選び1.3 中学での経験を踏まえて考える「高校での探究活動」 2…

探究活動や課題研究と成果発表会(まとめと追記)

課題研究や探究活動の成果発表会は、生徒一人ひとりが取り組んできたことを互いに知り、相互に新たな刺激を得る「相互啓発」の機会としてとても大切だと思います。先輩たちの発表を見た後輩学年も大いに刺激を受け、自分たちも頑張ろうとの思いを持ってくれるはず。こうして受け継がれていく成果と刺激が、やがては学校に「文化」になります。さて、その成果発表会ですが、押さえるべきところをきちんと押さえないと、形だけのもの…

探究活動の目的から考えるテーマ選び

探究活動の目的は、未解決の課題を見つけ、その解決に挑むことで「新たな知を創造する方法と姿勢」を身につけることにあります。さらに、それらの課題に自分はどう向き合い、関わっていくのかを考える機会であり、その中で生徒は、21世紀型能力の「実践力」を養い、とりわけ「持続可能な未来への責任」という資質を獲得します。教育の主目的は「社会に適応させるための訓練」から「社会の課題に取り組み、より良い社会を創る人材…

探究活動の改善を図る「評価と振り返り」

探究活動の成果発表会は、生徒にとって貴重な学びの場です。他の生徒が重ねた努力の成果に触れて自らの取り組みを相対化してみることは適格な振り返りへの第一歩。多くの時間をかけた学びの成果をより深く、確かなものにできるかどうかを分ける重大な局面です。 代表者による発表に触れて、その良い所を理由とともに明確に掴めてこそ、同学年の生徒は自分の取り組みの成果と過程を振り返る際の「彼我の違い」に気づき、後輩学年は…

探究活動と進路指導でポートフォリオに残すログ

自らの学び(成果と過程)を振り返り、成長や進捗を確認しつつ、次に向けた課題を明確にすること(所謂「進捗と改善課題を捉えた学び」の実現)の重要性には、これまでも様々な記事で触れてきました。 教科学習の中では「主体的に学ぶ姿勢を育む」ために欠かせませんが、探究活動や進路意識を形成する学びの中でも重要な指導の一部です。それぞれの指導場面で、「ポートフォリオに残されたログをどう活用するのか、そのためにどん…

探究のプロセスを経た「問いの深化」

探究活動の評価では、成果物(論文やポスター、口頭発表など)の完成度や新規性に焦点が置きがちですが、探究のプロセスを経て、どんな能力や資質、スキルを獲得したかにもモノサシをきちんと当てましょう。きちんとプロセスを踏んだ探究活動なら、最初に立てた問いは、調べたり、考えたり、フィードバックを受けたりする中で、新たな様相を得てバージョンアップしていくはず。探究の過程が進む中で問いがどれだけ深化したかを見て…

「学びの拡張」まで考慮したカリキュラムの設計

カリキュラムの設計(指導計画の立案)に当たって予め考えておくべきことの一つに「学びをどこまで拡張するか」という問題があります。言うまでもありませんが、学びの拡張を図るのは、授業ごと/単元ごとの学びにおいてコアとなる理解をしっかり形成してからです。根っこと幹がしっかりしていない木が枝を伸ばしても、ぐらぐらするばかりで大きくがっしりしたものにはならないのと同じです。コアを形成した後、どこまで学習を掘り…

探究型学習(課題研究等)の成果をどう測るか

課題研究などの探究型学習に限ったことではありませんが、何かに取り組ませたら、その成果と過程(取り組み)をきちんと評価をする必要があるのは言うまでもありません。できるようになったことを「たな卸し」することで生徒に自らの成長を自覚させるとともに、これまでの取り組みに足りなかったものに気づかせ、「この先、何にどう取り組むべきか」を考えさせること(=進捗と改善課題を捉えた学びの実現)が評価を行うことの第一…

探究的な学びの中でのビジネスプラン作り

総合的な探究の時間で「ビジネスプラン作り」に取り組ませるケースも少なくありません。社会課題の解決を図る中で新たなサービスや商品が生まれますが、探究とビジネスプランの親和性は元々が高いものです。以前の教育が、現状における社会の仕組みありきで、生徒をそれに適合させるプログラムだったとしたら、今の教育が目指すのは「社会課題を解決してどんな未来を創るか」を考え、行動できる人材の育成です。身の回りから人類の…

イノベーションをもたらす認知の網と偶然との出会い

新しく見聞きしたことを理解したり、そこに問題を発見したりするのは、もともと持っていた知識と新たな情報が接点を持ったということ。新たな情報が放り込まれたところの周辺に、既に蓄えられていた知識が待ち受けていないと、情報は接点を得ることなく素通りしていきます。既に知っていること/理解していることは、新しい情報を拾い上げるための「認知の網」として機能します。学びや体験の欠如で「網」が張られていない/穴が開…

調べたことの先に~新たな知と当事者としての関わり

探究活動や課題研究のプログラムを作って導入し、生徒に取り組ませるとき、「何を目的とする活動か」という根源の問いに先生方がどのような答えを共有しているかはとても大事なことだと思います。探究活動には様々な役割がありますが、以下の2つは他の活動での代替は困難です。 指導に当たる中、「調べ学習」で終わっている生徒、そこにも到達していない「検索&コピペ作業」だけで調べ終えた気になっている生徒を見過ごしてしま…

具体的なタスクを通して、作法を学ばせる(探究活動)

各地の学校で探究活動や課題研究の成果発表会を拝見していると、自らの興味を掘り下げ、リサーチクエスチョンを立て、きちんと探究のプロセスを踏んで答えを導いた後に、自分の生き方・あり方まで踏み込めているものも多々見かけますが、そうでないものも少なからず…。先行研究を拾い上げ、そこに書かれていたことを繋ぎ合わせただけに見えるものもあります。高校で体験する探究活動は「どんな研究成果が得られたか」より「各プロ…

教科学習指導と探究活動の重ね合わせ

探究活動にしっかり取り組ませるには、所謂「探究の方策」に加えて、その土台となる様々な力を養う必要があります。「情報を集め、必要な知に編む力」「理解したことをもとに考える力」「問いを立てる力/問題を見つける力」などはいずれも探究を進める上で不可欠なもの。こうした力は一朝一夕に獲得できるものではなく、日々の教科学習指導の中で学びを重ねさせて、時間をかけて培っていくべきものでしょう。指導機会の限られる「…

PISAが測ろうとしている「創造的思考力」

先日の新聞(朝日2024年2月12日)に「AI時代、PISAが問うのはOECD・武内良樹事務次長に聞く」と題する記事がありました。ご存知の通り、PISA2022では、参加した81の国や地域の中で数学的リテラシー5位、科学リテラシー2位、読解力3位(OECDの37か国では数学と科学が1位、読解力が2位)という結果でした。順位が回復したことは好ましいことだろうと思いますが、PISAではこの3分野だけで…

アイデアを膨らませ、まとめる方法への習熟

生徒に新しいアイデアを出させるためには、事前に行う調べ学習が重要というのは別稿でもお伝えした通りです。そこで得た様々な情報を関連付けたり構造化したりすることで、アイデアを考える土台が整います。本稿では、調べ学習の中で得た知識や気づきを拡張しながら、整理していくフェイズでの指導の工夫を考えてみたいと思います。 2019/11/26 公開の記事をアップデートしました。 ❏ 様々なツールを使い、思考を深…

総合学習/探究活動における「知識の活用」

各教科の学習指導において「評価」を行うのは「生徒一人ひとりの学びをより良いものにする」ためであるのは言うまでもありませんが、これは探究活動や進路指導においても同じだと思います。獲得すべき知識や技能(=各単元に固有の知識など)がきちんと身についていなければ、それを補う機会を与える必要がありますし、知識や技能を「生きて働かせる(=活用する)」ことができていないようなら、できるようにさせなければなりませ…

知りたいから始める探究テーマ選び

総合的な探究の時間での「テーマ選び」は生徒にとっても大きな関門ですが、ご指導に当たられる先生方も、その指導にはお悩みを抱えながら試行錯誤を続けておられる様子が伝わってきます。多くの生徒により意欲的に取り組んでもらいたいとの思いからなのか、生徒それぞれに「興味のあること」からテーマを探させるアプローチが多いようですが、必ずしも上手く機能していないように見えます。上手くいかないケースの多くは、「興味が…

探究テーマに偏りは生じていないか

探究活動の成果発表会などを参観する際に、各生徒の「探究テーマ」が学年全体でどのように分布しているかに注目してみると、各校の指導の様子も垣間見えるように感じます。探究活動の指導における目標の一つは、探究のスキルと姿勢を学ばせることですが、生徒が「適切なテーマを、適切な手順を踏んで選び出す/打ち立てる(=問題を見つけ出す)ことができる」ようになってこそ、「社会参画力」や「持続可能な未来への責任」の涵養…

探究活動を通じて育む「思考力」と「実践力」

総合的な探究の時間が本格的に導入され、最初の1年が経過しました。先行実施の期間も含め、指導には様々な試行錯誤が重ねられ、その成果が現れるとともに、指導手法も確立してきているように感じます。これまでの指導の成果とプロセスをしっかり振り返り、これまでに確立したものをさらに磨く準備を整えて、次年度を迎えたいものです。各教科、進路指導と一体となったカリキュラム全体の中で、探究活動が大きな部分を担うのは、2…