探究活動、課題研究

違和感は思考[探究]の入り口(まとめ)

ひと月ほど前のこと、7月25日(金)の朝日新聞『折々のことば』に美術家・評論家である岡﨑乾二郎氏の「批評の始まりは、まず説明しがたい奇妙な細部を見つけることだ」との言葉が紹介されていました。 どんな絵にもうまく説明できない細部がある。そこで感じた違和を抑え込み、既存の枠組みで説明しようとすると、対象は歪(ゆが)んでしまう。逆にその違和をもはや違和としない理解の枠組みを組み立てるのが批評だと、造形作…

自由研究/課題研究は狙い通りの成果を得たか?

夏休みが始まって間もないのに「何、このタイトル?」と思われたかもしれませんが、タイトルの問いは、先生方がお盆過ぎに思い浮かべたのでは遅すぎかも。与えた課題の効果を測定するには準備も必要。当然ながら時間もかかるので、今のうちにスタートした方が良さそうです。夏休み中に取り組ませるタスク(宿題)は既に提示しているはず。履行にかかる時間を生徒に投じさせる以上、所期の成果が得られたかどうかは、タスクを与えた…

アイデアを作らせる~きちんと調べ、思考を拡充・整理

総合的な探究の時間において、生徒に研究テーマを考えさせるところでご苦労を抱えておられる先生方も少なくありません。地域連携や新しいビジネスなどの考案に取り組ませて自らの進路と向き合わせる教育活動でも、アイデアを出させるフェイズでのご苦労が多いようです。進路指導もまた、自分の将来を対象として行う探究活動であり、その探究の成果が「志望理由書」や「学修計画書」といった形で、大学進学に際して合否判定の材料と…

アイデアを膨らませ、まとめる方法への習熟

生徒に新しいアイデアを出させるためには、事前に行う調べ学習が重要というのは別稿でもお伝えした通りです。そこで得た様々な情報を関連付けたり構造化したりすることで、アイデアを考える土台が整います。本稿では、調べ学習の中で得た知識や気づきを拡張しながら、整理していくフェイズでの指導の工夫を考えてみたいと思います。 2019/11/26 公開の記事を再アップデートしました。 ❏ 様々なツールを使い、思考を…

アイデアを出させる前に、まずはきっちり調べ学習

学校の中に新しい教育活動が採り込まれるにつれて、生徒にアイデアを出させる機会が増えてきました。日々の教科学習指導の中でもPBL型の授業デザインなら、解の導き方や物事を確かめる手順などを生徒自身の発想に委ねることもあれば、探究学習のテーマを考えさせたり、新しいビジネスの発案に挑ませたりすることもあります。そんなときに、何の土台も準備もなく「さあ、アイデアを出そう」と旗だけ振っても上手くは行きません。…

問いを立てる力~より良い社会を作るために

当ブログでしばしば取り上げてきた「問いを立てる力」は、単なる学習技術ではなく、「より良く生きる」ために欠かせないスキルです。身の回りの「当たり前」の中に問題を見出し、その解決策を考え、実現することによって、社会とそこでの暮らしはより良くなります。当たり前のことですが、問題を見つけられないことには、解決への道筋をつけるところには到達せず、いつまでも同じ問題を抱えます。総合的な探究の時間で生徒に取り組…

探究の各フェイズで行う「事前指導」と「目線合わせ」

― 空回りを防ぎ、確かな学びに導くために ― 探究活動の指導を行っているとき、意図するところ(各フェイズの活動への取り組み方、そこでの成果が満たすべき要件など)が生徒に上手く伝わらず、狙った方向の取り組みにならないことが少なくありません。取り組んでいる生徒の側でも、戸惑いながらも努力しているつもりなのに、しっくりくるものにならず、挙句の果てに、だいぶ進んだところでダメ出しを喰らっては、やる気も削が…

探究から進路へのきっかけを作るプラスαの一問

教科学習指導において、各単元の内容を理解することは、「ゴール」というよりむしろ「中間地点」と捉えるべきものと考えます。単なる理解に止まらず、獲得した知識や技能が活きて働くことは必達目標ですが、さらにその先もあるはず。そこに導くのも先生方のお仕事です。理解したことの中に新たな疑問を見つけて掘り下げていけば、知の地平が広がり、解決すべき自分事としての課題を見つけることもあると思いますが、外からの働き掛…

成果より、プロセスに焦点を~探究活動の評価

高校生の探究活動で評価の対象とすべきは、所謂「成果」(論文やポスター、口頭発表といった最終的なアウトプット)ではなく、「探究のプロセスをきちんと体験したか、そこから十分な学びを得たか(=所期の能力・資質を育めたか)」に焦点を当てて行うべきだと考えます。 今のところ、このような視点で「総合的な探究の時間」における評価を設計している学校は多くありません。評価は学びの方向を修正し、目標達成をより確実にす…

探究活動、課題研究

1 横断的・体験的な調べ学習の先にある探究活動 1.1 調べたことの先に~新たな知と当事者としての関わり ・資料を与えて読ませる/探させる、そしてその先に ・探究活動の課題~調べ学習との境界と進路への接点1.2 探究活動の目的から考えるテーマ選び ★ Updated! ・探究テーマに偏りは生じていないか ・知りたいから始める探究テーマ選び1.3 中学での経験を踏まえて考える「高校での探究活動」 2…

探究活動や課題研究と成果発表会(まとめと追記)

課題研究や探究活動の成果発表会は、生徒一人ひとりが取り組んできたことを互いに知り、相互に新たな刺激を得る「相互啓発」の機会としてとても大切だと思います。先輩たちの発表を見た後輩学年も大いに刺激を受け、自分たちも頑張ろうとの思いを持ってくれるはず。こうして受け継がれていく成果と刺激が、やがては学校に「文化」になります。さて、その成果発表会ですが、押さえるべきところをきちんと押さえないと、形だけのもの…

探究活動の目的から考えるテーマ選び

探究活動の目的は、未解決の課題を見つけ、その解決に挑むことで「新たな知を創造する方法と姿勢」を身につけることにあります。さらに、それらの課題に自分はどう向き合い、関わっていくのかを考える機会であり、その中で生徒は、21世紀型能力の「実践力」を養い、とりわけ「持続可能な未来への責任」という資質を獲得します。教育の主目的は「社会に適応させるための訓練」から「社会の課題に取り組み、より良い社会を創る人材…

探究活動の改善を図る「評価と振り返り」

探究活動の成果発表会は、生徒にとって貴重な学びの場です。他の生徒が重ねた努力の成果に触れて自らの取り組みを相対化してみることは適格な振り返りへの第一歩。多くの時間をかけた学びの成果をより深く、確かなものにできるかどうかを分ける重大な局面です。 代表者による発表に触れて、その良い所を理由とともに明確に掴めてこそ、同学年の生徒は自分の取り組みの成果と過程を振り返る際の「彼我の違い」に気づき、後輩学年は…

探究活動と進路指導でポートフォリオに残すログ

自らの学び(成果と過程)を振り返り、成長や進捗を確認しつつ、次に向けた課題を明確にすること(所謂「進捗と改善課題を捉えた学び」の実現)の重要性には、これまでも様々な記事で触れてきました。 教科学習の中では「主体的に学ぶ姿勢を育む」ために欠かせませんが、探究活動や進路意識を形成する学びの中でも重要な指導の一部です。それぞれの指導場面で、「ポートフォリオに残されたログをどう活用するのか、そのためにどん…

探究のプロセスを経た「問いの深化」

探究活動の評価では、成果物(論文やポスター、口頭発表など)の完成度や新規性に焦点が置きがちですが、探究のプロセスを経て、どんな能力や資質、スキルを獲得したかにもモノサシをきちんと当てましょう。きちんとプロセスを踏んだ探究活動なら、最初に立てた問いは、調べたり、考えたり、フィードバックを受けたりする中で、新たな様相を得てバージョンアップしていくはず。探究の過程が進む中で問いがどれだけ深化したかを見て…

「学びの拡張」まで考慮したカリキュラムの設計

カリキュラムの設計(指導計画の立案)に当たって予め考えておくべきことの一つに「学びをどこまで拡張するか」という問題があります。言うまでもありませんが、学びの拡張を図るのは、授業ごと/単元ごとの学びにおいてコアとなる理解をしっかり形成してからです。根っこと幹がしっかりしていない木が枝を伸ばしても、ぐらぐらするばかりで大きくがっしりしたものにはならないのと同じです。コアを形成した後、どこまで学習を掘り…

探究型学習(課題研究等)の成果をどう測るか

課題研究などの探究型学習に限ったことではありませんが、何かに取り組ませたら、その成果と過程(取り組み)をきちんと評価をする必要があるのは言うまでもありません。できるようになったことを「たな卸し」することで生徒に自らの成長を自覚させるとともに、これまでの取り組みに足りなかったものに気づかせ、「この先、何にどう取り組むべきか」を考えさせること(=進捗と改善課題を捉えた学びの実現)が評価を行うことの第一…

探究的な学びの中でのビジネスプラン作り

総合的な探究の時間で「ビジネスプラン作り」に取り組ませるケースも少なくありません。社会課題の解決を図る中で新たなサービスや商品が生まれますが、探究とビジネスプランの親和性は元々が高いものです。以前の教育が、現状における社会の仕組みありきで、生徒をそれに適合させるプログラムだったとしたら、今の教育が目指すのは「社会課題を解決してどんな未来を創るか」を考え、行動できる人材の育成です。身の回りから人類の…

イノベーションをもたらす認知の網と偶然との出会い

新しく見聞きしたことを理解したり、そこに問題を発見したりするのは、もともと持っていた知識と新たな情報が接点を持ったということ。新たな情報が放り込まれたところの周辺に、既に蓄えられていた知識が待ち受けていないと、情報は接点を得ることなく素通りしていきます。既に知っていること/理解していることは、新しい情報を拾い上げるための「認知の網」として機能します。学びや体験の欠如で「網」が張られていない/穴が開…

調べたことの先に~新たな知と当事者としての関わり

探究活動や課題研究のプログラムを作って導入し、生徒に取り組ませるとき、「何を目的とする活動か」という根源の問いに先生方がどのような答えを共有しているかはとても大事なことだと思います。探究活動には様々な役割がありますが、以下の2つは他の活動での代替は困難です。 指導に当たる中、「調べ学習」で終わっている生徒、そこにも到達していない「検索&コピペ作業」だけで調べ終えた気になっている生徒を見過ごしてしま…