生徒の進路希望の実現を支えることは、指導に当たる先生にとって大事な仕事の一つであるのは間違いありませんが、それに先立ってしっかり行うべきは、生徒一人ひとりが明確な理由を持った進路希望を持てるところまで、選択に至るプロセスをきちんと踏ませていくことです。
進路希望を作り上げていく過程で、調べるべきことを調べ尽くしていなかったり、考えるべきところできちんと対象や自分に向き合っていなかったりしたら、作り出された進路希望そのものが、実現に値するものになるとは限りません。「取り敢えず」を重ねた選択の結果には、生徒もいざというときに向き合いきれないのではないでしょうか。
現存する職業のどれかをターゲットに設定し、そこに到達するのに必要な知識や技能、資格を得る最適なルートを探し出して進路希望を選んでいく「ゴールありきの進路選択」は、急激に変化を遂げていく現代社会にはあまり馴染まないものになってきているようにも思います。
職業を通じて自らが果たす「社会への貢献」を考えることに何ら問題はありませんが、10年後、20年後にその職業が存在する保証はありませんし、16歳、17歳の生徒が見渡せる範囲や深さには限りがあり、まだ見ていないところに「自分にとっての正解(=納得できる選択」が存在する可能性もあります。問題を解くとき、選択肢の構成がまだ明らかにならない段階で「答えはア」と決め打ちする人はいないはずです。
職業適性テストなども、使い方によっては進路意識形成のプロセスをゆがめるリスクがあります。テストの結果が出たことで、それ以上自分に向き合うことを止めてしまったり、リストに上がった候補以外を選択肢から外してしまったりすることも少なくありません。
色々なことに当事者として体験すること、何かのきっかけで見出した興味を突き詰めていくことによって、はじめて自分がどんな人間で何を求めているのか気づくのではないでしょうか。
ゴールを決めて最短距離?(全3編)
社会の変化が加速するとの予測は現実に
計画的偶発性理論~予期せぬ偶然との出会い
興味を追究する行動の中でこそ開ける未来
身近なところを起点に社会の営みを広く知る
グループワークで情報の共有と発想の交換を促す
知るところが広がったら、学部・学科、学問研究へ
進路の選択がキャリアを決定するわけではない
面白いものを追及する中で出会う新たな興味
予期せぬ偶然との出会いでキャリアは形成される
(関連記事)カッコつきの“キャリア教育の充実!”に思うところ
興味が芽生え、目標が見つかるのを待っていては…
最も広く興味の対象を探せるのは教科学習
見つけた「興味の芽」の育て方を学ばせる
努力して達成した中に興味が生まれる
知るべき「自分」は経験と学習を重ねて変化する
やってみて、自分がどう反応するか確かめる
探究型学習を使った進路指導(全6編)
一般入試でも志望理由が問われる時代へ
進路意識を作る機会としての探究型学習の可能性
探究型学習と進路指導・キャリア教育の一体化
他人ごとではない「自分の問題」としてのテーマを
社会が取り組む課題、研究者が抱く興味に触れてみて
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ログを残させる場面と、ログを指導に活用する場面
総合的な探究の時間のポートフォリオ
進路指導を進める中で残させるポートフォリオ
各教科の学習の中にも進路に繋がる活動が
せっかくの気づきは、揮発させずに深めさせる
自分が書いたものとの対話で新たな気づき
進路選択に向かう体験と内省の記録
体験と気づきを串刺しにしてみて得られるもの
(関連記事)体験学習をただの体験で終わらせない
将来を分ける選択の場は、至る所に存在している
正しい選択をさせると同時に「選択の力」を養う
次に控える選択の機会をしっかり認識させることから
準備フェイズで言語化したことをもとに面談指導
幅広い選択肢に手が届く位置を維持させる
重大な選択の前には時間をかけて内省を重ねさせる
ひとつの体験が、次の可能性の広がり方を変える
体験の場に臨むにも、十分な時間を掛けた準備を
コース/履修科目の選択は後戻りしにくい分岐点
選択の機会を伝える時期、相互啓発を用いた後押し
明確な目標を持つことが「頑張りへの自分の理由」に
志望理由がどう生まれたかが問題
書き出すことで「自分の理由」を確認させる
補うべきものに気づくだけでも大きな進歩
もう一度、進路意識形成のプロセスを辿り直す
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