「授業で何を教えるか」と「考査で何を測るか」はともに、担当する先生方の頭の中にある学力観を反映したものだけに、両者はほぼ同じものです。片方の最適化を図れば、もう一方もおのずと改善されます。
授業改善を図ろうとするとき、相互参観や研究授業を手段とすることが多いかと思いますが、指導で何を目指すかという「主眼」に関わる部分については、時々刻々と局面を変える授業を対象とするより、紙の上に固定された考査問題を材料にする方がすり合わせもしやすく、また成果を固定できる分だけ費用対効果にも勝ります。
定期考査が、ゴールでの形成を目指す学力との距離を正確に測り、結果を正しく点数に換算する機能を備えていなければ、教科学習指導における目標達成を確実にするための中間検証も的確に行えません。
より良い考査問題作りへのチャレンジを通じた教科観・学力観の更新と最適化は、授業の改善を正しい方向に加速させてくれるはずです。
2016/11/17 公開の記事インデックスを再アップデートしました。
ゆがみを作っている原因~測定する学力の違い
配点の不備も「学力を点数に変換する機能」を歪める
教えたことすべてを記憶したかの確認に拘泥しない
生徒はテストに合わせて学びのスタイルを作る
目的に応じた、評価方法の適切な使い分けを
出口で求められる学力を考査が正しく測定しているか
まずは、考査と模試の相関をとって確かめてみる
データを使って、出題改善の効率化を図る
相関を下げる「主眼のズレ」と「ノイズの介在」
正答率が極端に低い問題は出さない
得点の実効スケールが小さくなることにも問題あり
「ちゃんとやればできる問題」も何をやるのかが問題
訓練すれば正しく適用できる採点基準か
平均得点率(平均正答率)と標準偏差
ヒストグラムで点検する「有効得点レンジ」
設問正答率幹葉図で、硬軟のバランスを確かめる
妥当性検証に用いるその他の手法
・誤肢選択率と正答選択率の比較
・五分位図のLo群とHi群の正答率の差
・ピアソン相関を用いた検証
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アップデートに際しての追記:
多忙を極める先生方に、お手間を増やしかねないご提案かもしれませんが、考査の妥当性を確かめ、その向上を図る取り組みは、十分にコストに見合った成果をもたらしてくれるものと確信しています。
目標学力への接近を正しく測れる考査は、学びの羅針盤です。本編でも書きましたが、生徒は考査問題に合わせて学びのスタイルを作りますので、定期考査の出題が、万が一にも方向性を誤っていたら、学習者が受ける不利益はとてつもなく大きなものになります。
考査の結果が常に正しい方向を指しているか、結果の点数が生徒の進歩の度合いを正しく表しているか、常に点検を重ねるべきです。
信用のおける定期考査であれば、先生の指導の成果も正しく検証してくれます。複数の先生が(学校を跨いで同じ問題を共有することだって可能です)それぞれ最善と思う方法で指導に当たり、その成果を考査の結果で比較すれば、学習者を最も成長させた授業を探せます。
そこでの指導ノウハウを共有し、先生方の協働で更にブラッシュアップを図れば、その恩恵を多くの生徒が享受できるのではないでしょうか。
また、定期考査で正しい方向で目標学力への接近を的確に測定できれば、一定期間を挟んだ2回のテストで作った散布図には、伸びた生徒と苦戦した生徒が現れます。伸びた生徒の行動から「望ましい学習者像」を描ければ次学年の生徒に示していくこともできそうです。
教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一