新年度も近づいています。オリエンテーションや授業開きに向けた準備も進んでいることと思います。その場では、生徒に守るべきルールや履行を心掛けて欲しい行動を明確且つ具体的に伝えることも大切です。
伝えるためには、その内容が確固たる土台を持ち、的確な表現を与えられている必要があるのは言うまでもありません。根っこに立ち返り、生徒にどんな成長を遂げて欲しいか、どんな生徒を育てるのか、教育活動を通して目指すゴールの確認も怠らないようにしましょう。
2019/03/19 公開の記事をアップデートしました。
❏ 教育目標や指導方針をちゃんと伝える
学校評価アンケートなどで生徒の認識傾向を解析してみると、「学校の教育目標や指導方針を明確に伝え、理解させているケースほど、個々の指導を生徒は肯定的に捉える傾向」が例外なく確認できます。
■ 教育目標や指導方針をちゃんと伝える
どんな活動に取り組むときも、”目指しているところ” を相手や周囲にきちんと伝えることは大事です。個々の指導がどれほど綿密に練り上げられ、徹底されていたとしても、その背景にある意図を相手と共有できていないことには、曲解や誤解も生まれ、相手からの共感的な理解を得るのは困難です。
先生方がこれまでの指導経験の中で、「これは大事」「こうあるべき」という思いをどれだけ強く抱いていても、先生方が見てきた景色をまだ見ていない生徒には、意図するところはなかなか伝わりません。
目指すべき人物像(=どんな能力や資質、姿勢を備えた生徒を育てようとしているのか)をきちんと言葉にして伝えると同時に、年間行事予定などに照らしながら、入学後に辿る成長のストーリーを漠然とでも生徒にイメージさせておきたいところ。
これが、先生方が個々の指導場面で生徒に伝える言葉の一つひとつを、より良く理解してもらうための前提になり得ると思います。
生徒は、これから自分が向き合うことになる様々な課題を知ってこそ、それを乗り越えるのにどんな力を身に付ける必要があるのかを理解し、学びの場の一つひとつへの取り組み方も考え始めてくれるはずです。
❏ 先生ごとに言うことが違っては、生徒は戸惑うばかり
指導に込めた意図を説明したり、そこでのこだわりを伝えたりするときにも、個々の先生がそれぞれの思いでバラバラなことを言っては、生徒は混乱するばかりです。
生徒を指導する場に臨む前には、先生方がきちんと目線合わせを行い、共有する思いを適切な言葉で表現できるようにしておくことが重要ではないでしょうか。
一つの考え方に無理に合わせるというのではなく、それぞれの先生が蓄えてきた指導観や知識、経験を持ち寄って共通認識を形成してから生徒の前に出るということです。
先生方の経験はそれぞれ異なりますので、ときには互いの考えが競合することもあろうかと思います。
そのときの取捨選択における拠り所は、上位目標である「学校の教育目標」や「生徒募集を通じて入学前の生徒と交わした約束」です。
これらとの整合性がより高いもの(目標や方針)が、個々の指導場面で優先すべきもの、高い価値をおくべきものだと思います。
新年度のオリエンテーションやガイダンス、授業開きも控えています。多忙は重々承知ですが、こうした目線合わせには、時間をこじ開けてでも、しっかり取り組む必要があるのではないでしょうか。
❏ 目線合わせの結果は、先生方の指導目標として共有
目線合わせを行って共有できた指導目標は、その達成にすべての先生方が、個人として、組織としてコミットすべきもの。
如上の目線合わせは、それぞれの立場から学校の教育目標の達成にどうコミットするかを再確認することでもあります。
分掌、学年、教科のそれぞれの立場から、達成への取り組みを進めるとともに、定期的に中間検証を行いつつ、その時点までの指導の不足を補い、必要に応じて計画の修正を重ねていく必要があるはずです。
過日の記事「授業改善を確実に進めるための年間実施計画作り」で書いたこととも通底しますが、生徒を評価する仕組みを使って先生方の指導が所期の目的にどこまで近づいているか、継続的に把握しましょう。
授業開きやオリエンテーションで生徒に配る書面に、生徒が到達状態を自己点検できるチェックリストを調えて掲載しておけば、それを用い、学期の真ん中、学期末などのタイミングで、ご自身の/所属組織のそこまでの指導を振り返ることもできそうです。
こちらの記事も併せてお読みいただければ光栄です。
授業開き/オリエンテーション(全4編)
1. シミュレーションを通じた学習法ガイダンス
2. やらせてみて観察しながら、自ら修正させる
3. 目指すべき到達状態に照らした生徒観察
4. スタートに立った生徒に伝えたいこと
教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一