年度末が近づくと、今期の指導の仕上げと同時に、来年度に向けた指導計画づくりも進んでいきますが、後者を進めるときの土台は「これまでの指導が得た成果(進捗)と不足していたこと(改善課題)」の的確な把握にあることは改めて申し上げるまでもありません。
生徒に対する指導と評価の一体化と同様に、「進捗と改善課題を捉えた学び」は、先生方の営み(=教育活動)の改善にも不可欠です。
❏ まずは、取り組みに込めていた意図を再確認
新しく取り入れたものであれ、以前から続けていることであれ、しっかりと成果があがっており、且つ学校全体が目指す教育の方向性と合致しているものは、着実に継承していかなければなりません。
導入したのが比較的近い(数年以内)のものなら 、様々なデータに現れた「導入前と現在の違い」の中に成果を捉えることができるはずです。
- データをいかに利用するか(全4編)
一方、昔からの取り組みは、導入時点で学校が抱えていた課題への問題意識が共有されなくなってくるにつれて、形骸化が進みがちです。
取り組み開始から時間が経つと、その成果によって当初の課題は顕在化しなくなってくるため、導入時の思いは薄くなるのが当然でしょう。
しかしながら、その取り組みがあるからこそ防げている問題があり、それが他の教育活動を支える土台になっていることも少なくないはず。
教育活動や指導のこだわりに込めた意図は、定期的に言語化してみることで、その意義が今も生きているのか確かめるべきだと思います。
新採や異動で新たに加わった先生方にとっては、こうした「言語化」の結果に触れる機会がないと、「意図のわかりにくい指導」が多く、戸惑うばかりでなく、心からの深い関与もできなくなりがちです。
❏ 効果のあった取り組みをきちんと可視化、共有・継承
初期の成果を得た(効果を上げた)取り組みは、着実に継承する必要がありますが、その前提となるのは「取り組みの可視化」です。
意図していたことを言語化して伝えても、聴いた側が具体的なイメージを持てないのでは、取り組みの再現も、その先の改善もできません。
どんな領域(生活、学習、進路など)での指導にも共通することの一つは、「生徒にどんな問いを投げかけて考えさせたか」と「考えたことを拡充・深化するためにどんな仕掛けを講じたか」だと思います。
そこで用いた問い(発問や課題)をきちんと記録に残すとともに、生徒がどんな答えを出し、対話などを経てその答えをどう改善したかを伝えるべく、リフレクション・ログの蓄積と保存も心掛けたいところです。
問いを投げかけた後、どんな活動(調べる、考える、話し合う、まとめるなど)を配列したかも、メモに起こして残して記録に加えましょう。
また、様々な学習に取り組んだ後の「振り返り」への取り組ませ方、とりわけリフレクション・ログを介して自分とどう向き合わせたかも指導の成否を分けたはずです。cf. 対話的な学びにおける”第4の相手”
年度が替わると先生方は、次の学年団などに指導をバトンタッチしますが、そこで如上の記録を手渡せるかどうかは次年度の指導の成否を大きく分けるはずです。マニュアルで縛る愚は犯すべきではありませんが、ノーヒントでゼロから試行錯誤を強いるのも建設的とは言えません。
❏ 狙い通りの成果を結びきれなかった指導をアップデート
学校(あるいは学年や教科)を挙げて取り組んできたことの中には十分な(当初の狙い通りの)効果が得られていないものもありそうです。
そうしたものを、特に手を入れずに次年度も繰り返したところで、成果が上がってくるとは思えません。成果を結んでいる実感の乏しさで、指導へのこだわりも薄れれば、さらに実りの小さなものになります。
貴重な教育リソースを無駄遣いすることにもなりますので、まずは「目指していることは必要なことか」を改めて問い、取り組みを続けるべきとの判断に至ったら、やり方をきちんと改善していきましょう。
振り返りの中で、より良いパフォーマンスを得るために何が必要かを考えること(生徒が学習活動に取り組むときと同じです)は、教育活動に対する新たな目的意識を先生方の中に創り出していくと思います。
本年度の指導を振り返ったときに、足りなかった/上手くいかなかったことが思い出されたら、言語化してみてその問題の本質と向き合いましょう。具体化できたイメージは、周囲とシェアするのが好適です。互いの気づきに触発されれば、改善へのアイデアも膨らんできます。
教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一