目次を使って"全体像"を捉えさせる

単元ごとに学んできて、それまで個々バラバラの知識にしか感じられなかったものが、何かのきっかけ(重ね塗りによる復習もその一つ)で互いの関係性が掴め、「統合感」のようなものを得ることがあります。
統合された各単元が描き出す科目の全体像が見えることで、背景や奥行きにも認識が届き、より深い学びも生まれますし、その科目を「得意」と感じるようになるきっかけとなることも多々あります。

2017/05/09 公開の記事をアップデートしました。

❏ スパイラルを利用した学び直しに加えて

個々に学んだことを互いに結び付けるには、カリキュラム上のスパイラルを利用した関連項目の学び直し・まとめ直しが普通のやり方です。
学び直し・まとめ直しは、学んだことの「重ね塗り」にもなり、知識の定着にも役立ちますが、項目間に新たな関連性を持たせることで、学びに広さと深さが生じます。
なお、既習内容の復習は「教え直し」ではなく、発問を軸にして、以前に学んだときのノート・教科書の該当箇所を開かせる方が効果的です。
これに加え、タイトルの通り、教科書などの目次を上手に使うことでも、全体像を捉えさせ、統合感を獲得させる効果が期待できます。
教科書にしろ、参考書にしろ、必ず目次がありますが、教室内で目次を開いてみることはあまり多くないような気がします。ましてや、「目次を読ませる」という場面はそう多くないのではないでしょうか。

❏ 目次に照らしながら、全体像の中に単元を位置付ける

生徒にしてみれば、新しい教科書をもらったときに、目次を読まされたところで、まだ何も勉強していないだけに、無意味に近い文字列が並んでいるだけかもしれません。
それでも、新年度の授業開きや学期の切り替わりで、目次を開かせ、各単元のハイライトに言及しながら、これから何を学んでいくか見渡させるのは悪くないと思います。

少しでも興味や関心を刺激できたり、学びに展望を持たせられれば、その後の学びに小さからぬ良い影響を与えるはずです。
目次に並ぶ各単元が、前年度や入学前に学んだどの単元と関わりがあるのかを示していけば、未習単元と言えど、ある程度のイメージを持たせることは十分に可能ですし、中学までの学びと高校からの学びの違いに気づかせることもできます。

❏ 目次を軸に、学習内容を串刺しにしてみる

ある程度まで学習が進んできたら、再び目次を開かせて、

  • 今、学んでいる単元と深い関りがあるのはどの章?
  • それらを関連付けているものはいったい何?
  • 両者の違いはどんなところにあると思う?

などと問いかけてみても面白い反応が返ってくるかもしれません。
単元Aと単元Bとで、同じような事象を扱っていたとしても、単元が異なる以上、事象を捉える切り口は異なるのが普通でしょうし、逆に同じ切り口でありながら、異なる事象を扱っていることもあります。
それぞれで学んだことを比較しながら、互いにどのように関わっているかを考えさせることが、双方での理解を深めることがあります。
例えば英語でも、準動詞をひとまとめに扱いながら、態や時制について理解をさらに深めることができるはずです。
通史を学んだ後に、テーマ史で串刺しにしてみるのと似たアプローチですが、学んだ事柄に新たな視点を得て、意味の拡張が図られます。
縦軸に目次と同じ順序で学習内容/単元タイトルをピックアップしておき、横軸に事象の切り口やサブテーマを追加しながらマトリクスを作って、セルの一つひとつにそれぞれで扱った事象や学習上のポイントを書き込んでいくやり方もあります。

❏ 目次に現れた単元配列の意味を知ること

蛇足ながら、前職時代の前半は、教材の編集や模試問題の作成をしていましたが、どのような単元を立て、それぞれ何を扱い、全体をどう配列するかは一番の悩みどころでした。
教科書や参考書を編むとき、目次を先に起こして、アウトラインを決定してから個々のパートを書き上げていくこともありますが、むしろ、書きながら全体の構成が変わっていくことも少なくありません。
幾度もやり直しながら、「これだ!」と思える単元配列を見つけたときに、仕事は完成に近づきます。
教科書を作るのと教科書で学ぶのでは、大きな違いはあるでしょうが、目次に表現された単元配列の意味が分かり、離れた場所に置かれた項目間にある関係性に気づければ、その科目の学習は一定の仕上がりを見たということになるのかもしれません。
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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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