練習場面での成果確認

練習に取り組むことで、どんなことができるようになるかイメージできていないと、練習はただの反復・作業と変わらなくなってしまいます。生徒が先生の指示に従って、元気よく練習していたとしても、「どんなことができるようになるのか、どのように進歩しているのか」をきちんと認識しているかどうかは、とても大切だと思います。
筋トレをするときも、どんな意識をするかで効果が違うとか。メニューを漠然とではなく、動かす筋肉をしっかりイメージして一つひとつのトレーニングをすることが大切だそうです。
練習で狙っている効果を生徒にどう認識させるか、進歩をどう実感させるかは、練習や授業内活動を設計するときのポイントの一つです。

❏ 練習の成果を実感できることの必要性

例えば、音読の練習をさせるときも、漫然と声を出し、回数のノルマをこなすだけでは、生徒が手応えを感じることは少ないはずです。
繰り返していれば、何らかの成果はあるでしょうが、その成果に気づかないことには練習へのモチベーションも得られません。
目的意識や達成感が薄ければ、だんだん取り組みが甘くなってくるはずです。
練習を行う前の段階でできていなかったことが、練習後にできるようになっていたことに気づくことで、成果を実感し、練習の意味を知るという前提を踏まえていく必要がありそうです。

❏ 目指すべき到達状態を知るために

音読練習であれば、音読するときに気を付けなければならないチェックポイントを探させる活動をスタートに挟み込んでみるのは効果的です。
CDやALTによるモデルリーディングを聴かせながら、教科書や本文を印刷した練習用シートなどに、聞き取って気づいた音韻上の特徴を書き込ませていきましょう。
強く読んでいる箇所はどこか、語中のアクセントはどこか、切れ目はどこかなど、普段の指導で先生が注意を与えていることを、生徒自身に見つけさせるということですね。
人に教わったときと、自分で気づいたときとでは喜びも違うはずです。

❏ ハードルの高さを調整する

音韻上の特徴について「どこで」「どんな」という2つの観察を同時にするのが、生徒にとってハードルが高いなら、どちらかを指定してしまうという手があります。
「強く読まれた語を探せ」、「語単独で読むときと音が変化しているところを探せ」といったタスクを印刷しておいたり、口頭で指示しても良いと思います。
ひとりではきちんとできない場合は、ペアやチームで気づきを持ち寄らせて、チェックリストを完成させてもいいですよね。
他の生徒やグループが気づいていたのに、自分は気づけなかった箇所もあろうかと。それこそが聞き取りの上での課題ということです。

❏ 到達状態に照らし、できていないことの把握

さて、いよいよ練習ですが、「気を付ける箇所がわかっているだけ」と「自分ができていないことに気づいている」ことはちょっと違います。
練習前後の違い(=練習の成果)を知るには、まずは練習前の状態を知らなければなりません。
先ほどの活動で出来上がっているチェックリストに照らしながら、音読を行い、それぞれの音韻上の特徴を再現できているかをチェックさせてみましょう。
ペアで相互に点検させる手もありますし、モデルに続いて音読をさせながら「ここは頑張って練習!」という箇所に自分で印をつけさせるのでも良いと思います。

❏ 練習した後、課題をいくつクリアできたか点検

こうして「練習に臨むための準備」が調いました。
何に気を付けて練習しなければならないか、単純に先生が示した時より、はるかに目的意識は強くなっているはずです。
十分に練習を積ませた後は、「自分で決めた練習のポイントをいくつクリアできたか」を数えさせましょう。
ポイントの数で、成果を捉えさせるだけでも、「真面目に頑張った」というあいまいな自己認識より強固な達成感が得られそうです。

❏ 練習後は、仕上げの機会として音声ファイルを提出

仕上げに取り組んだ成果をスマホに録音させて、音声ファイルをサーバーの指定のフォルダに保存させている先生がいらっしゃいました。
練習して進歩を自覚できても、きちんと音読できるようになるという目的のちょっと手前に過ぎません。
音読をきちんと仕上げさせることを忘れないようにしましょう。

如上のケースでは、提出された音声ファイルを、JETやALTの協力を得て採点し、優秀者(練習を通した進歩が大きかった生徒)を選出したりしていました。cf. どこにスケールを当てて学びの成果を測るか
練習での努力やその成果は、自分で実感するだけでなく、周囲にも認めてもらいたいもの。
頑張ったという自己認識とそれに気づいてくれない他者の認識のずれを解消することが、本人が得る充足感をより強くするようです。

教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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