協働の進み具合を測る指標

授業改善はチームで進める方が効率的であり、自分ひとりで頑張っても壁がありますが、実際に授業改善に向けた教員間の協働がどのくらい進んでいるかと問われても、はっきりした答えが見つからないものです。
先生方を対象に聞き取り調査を行っても、進み方の評価や捉え方が様々です。「学校全体の取り組み」「教科ごとの取り組み」「個人の取り組み」の区別がはっきりしないことも少なくありません。
そんなややこしさを抱える問題ですが、生徒による授業評価アンケートの結果を使って、同一学校・同一教科内での評価のばらつきを比較してみることで、教科内でどのくらい協働が進んでいるのか、大まかな「位置」を探ることができそうです。
下図は、【授業内活動】「討論や練習、作業などの活動を通じて充足感を得ることは、{とてもある~まったくない}」を例に調べてみた結果です。
なお、得点レンジは全員が「とてもある」とした+10から、全員が「まったくない」と答えた-10です。

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15の学校の、それぞれの教科内の全授業をひとまとまりにして、その評価平均と標本標準偏差を算出しました。前者を縦軸に、後者を横軸に配置しています。なお、得点レンジは全員が「とてもある」 とした+10から、全員が「まったくない」と答えた-10までです。
授業改善に教科全体でチームとして取り組んでいる場合、相互のキャッチアップ(=成果をあげた方法が共有されること)が進んで「差」が縮小し、互いの知識や発想を交換する中でより良い答えも導き出されてきた結果、●の位置は散布図の右上に寄っていくと考えられます。
一方、チームとしてではなく、個人的に研究を進め試行錯誤の中で優れた方法を作り上げている先生がいた場合は左上方向(Aエリア)に●が集まります。その先生への高評価が全体の平均を引き上げますが、他の先生との差がついて標準偏差が大きくなるためです。
チームでも、個人でも新たな学びへの研究・試行が進んでいない場合、当然ながら評価平均は低めに集中しますので、差も出にくいというパターン(Bエリア)が想定されます。
実際にいくつかの学校で、授業を参観したり、お話を伺ったりした様子を思い浮かべながら散布図をじっくり見ると、かなりのところまでイメージが一致します。
活用機会としての課題付与についても調べてみましたが、同じ結果が得られました。
話し方や板書など、どちらかと言えば「個人の技能」に属するものと比べた場合、効果的な課題を共有したり、授業内での活動を倣ったりすることは、情報共有により相互の学びが容易です。
これらの項目で、いつまでもBエリアやCエリアに止まるのは、手法開発に向けた研究や、その成果の共有があまり進んでいないことを示唆しているのではないでしょうか。
まだ、仮説の段階ですが、もう少しサンプル(今回は15校、のべ75教科、約2,400の授業)を増やして、再度検証してみようと思います。
同じ科目、同じクラスを担当している年度内で、回次間のデータを比べてみれば、その期間内での協働の成果や進み具合を、数値で確認することができるかもしれません。

教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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