討論や練習、作業などの活動を通じて生徒が充足感を得ているクラスほど難しい課題にチャレンジさせても苦手意識を作らせにくいようです。
課題や授業内容を難しくしていくと生徒の意識は「得意」から「苦手」にシフトしていくのが普通ですが、生徒自身が能動的に学びに関わる場面を作ることで、苦手意識の発生を遅らせることが出来そうです。
❏ 活動性が高ければ、難易度を上げても苦手に振れない
上のグラフは、同じ質問を採用していただいている複数の学校における授業から、国社数理英のみを抽出して作成しました。
それぞれの質問文は以下の通りです。グラフの横軸・縦軸には、各選択肢に与えた配点にそれぞれの選択率を乗じて足し上げたものを有効回答数で除した結果を置きました。
Ⅷ難易度: 授業内容や課題の難易度は、あなたにとって、
選択肢は、難しすぎる(+10)~易しすぎる(-10)の5段階
Ⅹ意識姿勢: この科目は、あなたにとって、
選択肢は、とても得意(+10)~かなり苦手(-10)の5段階
散布図では、Ⅸ授業内活動(討論や練習、作業などの活動を通じて充足感を得ることは、{とてもある(+10)~まったくない(-10)})での得点(計算方法は上記と同じ)での上位、下位それぞれ 25% に含まれる授業を抽出して表示しています。
グラフを見れば明らかなとおり、討論や練習、作業などの活動への参加機会がしっかり整えられているクラスでは、同じ負荷を与えても、得意寄りの意識が強く出ています。
また、負荷(難易度)が上がったときの苦手意識に向かう傾斜が緩やかであることも、一目でお分かりいただけるはずです。
活動性上位群では、なんと難易度+5のレベルまで上げても、近似線は得意寄りのエリアをキープしています。
❏ 苦手意識から生まれる低活動スパイラルを断ち切る
苦手意識が優位になれば、当然ながら挑む意欲も薄れ、結果として課題を達成できる可能性を下げてしまいます。
自分で努力して達成した経験が、自信に繋がるとすれば、如上の悪循環の中では自信を失っていくばかりです。
- 苦手→やらない→できない→さらに苦手
- 得意→やってみる→できた→さらに得意
どちら向きのスパイラルも、外から働きかけができる「入口」は唯一、「やるか、やらないか」 の部分だけです。
失敗を恐れる気持ちを、強さで上回る動機を与えることは、その有効な方策になるはずです。
以下、失敗を積極的に経験させる(その2) からの転載です。
失敗を恐れる気持ちを強さで上回る動機を与えると言っても、決して複雑なことではありません。活動に「誰か別の人のために行う活動」「チームに貢献するための行動」という要素を持たせるだけでも十分な効果が期待できます。
成功しようと失敗しようと、利益を得るのも損害を受けるのも自分だけという状態では、煽られるものはありません。ところが、自分のパートをちゃんとやらないとチーム全体に迷惑がかかる、パートナーが困ったことになるということになれば、話は別です。
例えば、こんな場面ならどうでしょう。
ひとまとまりの英文をグループの人数に切り分けてカードにして配ります。生徒はそれぞれ別のカードを持っており、互いに見せてはいけません。自分のカードを黙読して、その内容をグループの全員に伝えます。
中にはひたすら音読して相手になんとかわかってもらおうとする生徒もいれば、辞書を引いて的確に要約し伝えている生徒もいます。それぞれの力量の範囲で出来る限りのことをしようとしています。ここでは、多少の読み違えなど、意識の中で「避けるべき失敗」に入りません。
伝えるという目的のもと、読む、話す、聞くという活動に、失敗をおそれず取り組んでいる姿を想像していただけると思います。
調べ学習でも、担当パートをそれぞれ別に割り当てることで、「チームへの貢献」という要素を持ち込むことが可能です。
教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一