11月も半ばを迎え、高校2年生は3年時の履修科目選択に頭を悩ませている頃かと思います。1年生も2年での文理選択が迫ります。
履修科目/文理を選択させるに当たり、生徒の希望を調査するだけでは指導が完結しないのは言うまでもありません。生徒一人ひとりの状況を確認し、より好ましい選択に向かわせる必要があります。
何となくの選択では、その先に一人ひとりの志向や資質に見合った未来が待っている可能性は下がるばかりだと思います。選択に、しっかりとした理由を持たせる(=選択の結果に向き合わせる)ことが重要です。
どんな進路を思い浮かべているかを訊いてみないと、苦手科目を避けるだけの消去法の選択になっているかもしれませんし、入試の仕組みを知らないままでは、いざ出願というときに困ったことになります。
2022/11/16 公開の記事をアップデートしました。
❏ どんな進路を想定した上での履修科目(文理)選択か
履修科目や文理を選択させるにあたり、進路希望調査票のようなものを用意して生徒に記入させますが、多くの場合、進路希望(志望の学部、学科さらには大学名など)も一緒に回答させていると思います。
回収後には、回答の中身を十分にチェックしましょう。進路の希望と履修科目の選択がちぐはぐな生徒が混じっているかもしれません。生徒の不慣れによるうっかりも思いのほか多いものです。
そうした不一致はすぐに修正させる必要があるのは当然ですが、受験の仕組みがこれだけ複雑になってくると、生徒の進路希望のすべてについて、個々の入試科目まで先生が把握しておくのは容易ならざるところ。
生徒に調査票を記入させるときに、現時点で希望している進路(想定している出願先)を挙げさせた上で、履修が必要になる(=受験科目となる)科目も調べさせて、用紙に併記させるのも好適です。
実際にそうした記入をさせている事例では、それまでに取り組ませてきた「学部・学科研究」の仕上げの好機になっているとのことでした。
ただし、生徒が自分で調べた結果には、見落としや誤解もあり得ますので、調査票の記入内容は先生方の目でもしっかり点検しましょう。
生徒自身に、AIを使って志望校(学部)と履修科目のマッチングや履修外で行うべき対策などをチェックさせ、その結果も提出させているという先生もおられました。足りない科目があれば、提出前にも気づいて修正したり、相談に来たりしてくれるはずです。
❏ その進路を選ぼうとしているのはなぜか(志望理由)
希望進路とマッチした履修科目を選択できていたとしても、その希望が明確な理由に基づくものでなかったり、十分な材料を集めて熟慮を重ねた結果のものでなかったりしたら、何にもなりません。
希望している大学・学部の一つひとつについて、志望の理由もしっかりと言葉にさせて確かめていきましょう。
どんな体験を起点に、どんなことを調べ、何を考えてきた結果として思い描いている進路(未来)なのか、選択に至る工程を振り返り、文字に起こしてみることは、生徒にとっても自分の将来に向き合う好機です。
履修科目/文理の選択の時点で選んだものは、最終的に選択する進路とは違ったものになっても構いませんが、その時点での自分の考えを言語化して「外」に置いてみると、その先の内省もぐんと深まります。
上手く表現しきれないところには、考えを深め切れていないことや調べ尽くしていないことが隠れているのではないでしょうか。
調査票に書かれたものを挟んで、先生方との対話(面談)を重ねていけば、「より良い選択」「より確かな選択の理由」に近づけるはずです。
❏ 結論を固めさせる前に、しっかり対話を重ねる
進路希望調査に限りませんが、何かを尋ねてそれを文字に起こさせる/言葉にさせると、それが当人の意識の中で固定してしまい、その後の思考の範囲を狭めてしまうリスクがあります。
進路希望と結びつけた履修科目調査を行うときには、提出→面談→再提出→確定というような循環的な流れを設定しておくのが好適です。
すでに調査票を提出させてしまったケース(すでに11月の半ばを迎えていますので、結構あるかも)でも、最終確定までに面談を経た再提出などの「選択のやり直し」の機会を与えてみてはいかがでしょうか。
提出した内容を「既定のもの」と生徒が認識してしまうと、その後の選択肢は狭まり、より良い未来との出会いが遠ざかりかねません。
視野をさらに押し広げさせるべく、学部学科や大学についてもう一度調べさせたり、進路行事や探究活動の中で残してきたリフレクション・ログを読み直させてみたり、選択に見落としはないか確認させましょう。
履修科目の希望調査を終えるときに「ゼロ学期の始まりに志望理由を言葉にする」という宿題を与え、取り組ませていくのも好適です。
教育課程の編成に際して「より多くの生徒が進路希望の実現に効率よく取り組めること」を目指したはず。練り上げたカリキュラムを活かすには、生徒が明確な目的意識を持って科目選択に臨むことが重要です。
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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一
