新学期が始まってひと月半くらいでしょうか。そろそろ本年度最初の定期考査の時期に掛かります。このタイミングで注力すべきは、年度当初に描いていた指導目標が達成に向かっているかどうかの点検です。
生徒の学習行動についてなら、学習を中心とする生活のリズムを確立できているか、各科目の学び方に習熟してきているか、といったところをしっかりと観察するところからだと思います。
学校(あるいは学年)の指導計画についても、生活、学習、進路の3領域に加え、探究活動や体験学習が計画通りの成果を収めているか、この機にチェックしておかないと、今後遅れが拡大する危険があります。
また、先生方ご自身についても、新たな指導法を試したり、昨年度の授業評価アンケート等で見出した課題の解消を図っていたりすると思いますが、それらが手応えを得られる状態かどうかを確かめ、十分でないとしたら、今後の進め方(作戦)を修正していく必要があります。
❏ 生徒が獲得している行動(学習姿勢、生活リズム等)
まずは何と言っても、生徒がしっかりとした生活リズムや学習サイクルを確立しているかどうか。中間考査の期間にかかる前に、一週間の生活を時系列で記録させてみましょう。
睡眠が不足したり不規則だったりする生徒、家庭学習の時間が確保できていない生徒がいたら、放置するわけにはいかないはず。そうした生徒がいないか、先ずは点検をしないことには、放置が増えるばかりです。
また、各教科を担当する先生方には、授業開きや学習ガイダンスで伝えた「科目の学習への取り組み方」がどこまで定着しているか、しっかりと観察していただきたいところ。指示をしても、それが遂行されていないようでは、指導者としての責任は半分しか果たしていないはずです。
また、指示した学習方法をきちんと履行している生徒が、来るべき中間考査で十分な成績を得られるかも大事なチェックポイントです。先生が指示した方法がすべての生徒の「正解」となる保証はありません。
指示通りに学んでいる生徒の学習(学び方)が停滞している/成果が十分に出ていないようなら、何らかの修正が必要なはずです。生徒自身に振り返りをさせるとともに、先生も原因を探っていきましょう。
❏ 指導計画や行事予定は、所期の成果を結んでいるか
始業式以降、授業以外にも様々な学びの機会を生徒は経てきているはずですが、それらは所期の成果を結んでいるでしょうか。
1学期に経験したことは、夏休み以降に予定されている学習機会の土台を作るはずですので、既に経験したことが必要な学びに再構成されていないとすると、この先の学びが上手く機能しなくなる危険があります。
経験ごとに生徒はリフレクション・ログを起こしている(はずです)ので、それらにもう一度目を通してみて、学びに不足が疑われる生徒がいたら、補完的な学び(話を聴かせる、資料を読ませるなど)を挟んだ上で再び、振り返りをさせておきたいところです。
なお、リフレクション・ログのチェックにはAIの活用もご検討ください。効率と精度を高めることもできそうです。
また、学びの不足が一定以上の割合の生徒に観られたとしたら、指導機会の設計(学びの場の作り方、指導法)に改めるべきところがあったと考えるのが妥当でしょう。こうした検証を年度末まで行わずにいると、どのフェイズでの指導に不足があったかわからなくなります。
指導機会の後、一定期間を経たタイミングでの「指導成果の確認」は、次年度の指導を改善していくときに貴重な(唯一ともいえる)判断材料を提供してくれます。努々疎かにしないようにしましょう。学校/学年/教科を挙げて、新たなことに挑戦しているならばなおさらです。
❏ より良い授業を目指した工夫は、成果を得つつあるか
先生方ご自身もまた、より良い授業づくりに向けて、新年度から(あるいは昨年度以前から)様々な工夫を重ねてこられていると思います。
その工夫が、狙い通りに形を成し、きちんと成果を生んでいるかは、このタイミングで一度測定してみたいところです。不足があれば補い、上手くいっているならさらに工夫することで改善が加速します。
これまで力を入れてきたことには、中間考査においても評価の焦点にしっかりと据えて、解像度高く、その成果を捉えるようにしましょう。思考力を鍛えることに注力してきたのに、考査が「習ったことを覚えるだけ」の問題では、その成果はわかりません。
初見の文章や資料を用意し、授業の中で獲得させた能力(言語のスキルや問題発見力など)を駆使させてこそ、力の獲得状況が測れます。
授業だけ変えても考査が変わらなければ、生徒の学びは「従来と変わらないテスト」に引きずられ、後戻りしてしまうことを銘記しましょう。
また、指導法がどれだけの効果を得るかは「生徒が備える学習者特性」とのマッチングの度合いにも左右されます。あるクラスで上手くいっているやり方も、別のクラスではアレンジが必要になることもしばしば。
例えば、授業評価で尋ねる「説明のわかりやすさ」「難易度」「目的意識を持った授業への取り組み」なども、同じように教えていても、クラスごとに評価(アンケートの回答分布)は違ってくるもの。
生徒の声をしっかり聴き(=アンケートを行い)、先生方がイメージしている通りの結果になるかを確かめていきたいところです。本格的な授業評価アンケートは学期末などを待つことが多いかと思いますが、ご自身の授業でのミニアンケートなら、考査前の授業でも取れます。
本稿を構成する3節について、それぞれ点検を行う主体はクラス担任や学年、指導を立案した分掌等、個々の先生もしくは教科会でしょう。
チェックをなすべき領域ごとに、「誰がいつまでに、どんな観点で行うか」を校内で共有しておくと、個々の効果が相補的に高まりそうです。
教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一