受験本番が近づく中、十分な勝算のもとで第一志望に挑める受験生もいれば、多少のビハインドを抱えながら逆転をかけて勝負を選ぶ受験生もいると思います。この時期の過ごし方は、受験生/学習者としての成長も大きく左右しますので、日々を大切にしてほしいと思います。
中には浪人の可能性も思い浮かべながらの終盤戦という生徒もいるかもしれませんが、浪人して捲土重来を期すなら猶のこと、この受験期の過ごし方が大切です。勝負は4月からの浪人生活ではなく、今年の受験に最後まで「合格する気」で挑むところから始まります。
2019/01/30 公開の記事をアップデートしました。
❏ 滑り止めを蹴った浪人生の方が伸びる?
進路指導の場を拝見していると、「どこにも合格せずに浪人するより、滑り止めでもどこかに受かっていた生徒の方が、浪人してから伸びる」なんてことを、時々耳にしますが本当でしょうか。
長らく予備校に勤めていましたが、確かに、合格通知を1枚も持っていない生徒より、どこかを蹴ってきた生徒の方が成績が伸びる傾向がありますが、それはあくまでも「結果」に過ぎないように感じます。
「アイスクリームが売れると水難事故が増える」というのと同じで、別の背景因子が働いての「疑似相関」と考えるべきだと思います。
最後まであきらめずに頑張り切ったことで「どこかに受かった」という結果になり、頑張りを通して獲得したものが、浪人してからの成績伸長や一年後の志望実現をもたらすのに過ぎないのではないでしょうか。
❏ 諦めずに頑張りきった中でこそ獲得できるもの
端から第一志望への合格をあきらめ「4月から再スタート」とばかりにのんびり浪人生ゼロ学期(1月~3月)を過ごしては、学力も伸びなければ、学習者/受験生として一皮むけることもありません。
やるべきことをやり切ったことで持ち得る「自分の頑張る力への自信」も11か月間の浪人生活を送る上で大切なよりどころです。
限られた時間の中にタスクを上手に配列して実行していく、セルフマネジメントのスキルも実際に頑張る中でしか身につかないものでしょう。
不利な状況でも合格を目指してできる限りを尽くす中で、学力を蓄え、勉強の仕方を見つけていった受験生が、浪人生活の良好なスタートを切るということだと思います。
一つ下の学年が、ゼロ学期を迎えて走り始めているときに、長々と休憩していたら、浪人生の必勝パターンである「先行逃げ切り」に持ち込むのも難しいはず。
4月最初の模試で1年前との違う自分に出会えてこそ、集団から抜け出して気持ちよく走れます。
最後の1校の受験までの過ごし方が、浪人最初の模試の結果を左右し、そこでのアドバンテージを最後まで維持できるかどうかが浪人生活の結末に大きな影響を及ぼすことを生徒にはしっかり自覚させましょう。
❏ 勉強の仕方を見直すのも、この時期にやるべきこと
第一志望に手が届かなかったということは、これまでの勉強の仕方にも見直すべき点があった可能性が大です。
単なる時間切れだけが不合格の原因だったケースはむしろレアです。
与えられた解法を、その意味や作り方を深く考えることなしに、根性&反復方策でただ一生懸命に覚えてきただけでは応用もききません。
集中力が切れているのに同じ勉強をだらだら続けていたり、頭がさえている時間を作業的タスクに費やしてしまったり、という拙策に気づいていないこともあるかもしれません。
浪人生活に突入するまでに、これまでの自分の学び方を振り返って「学び方の再構築」に取り組む必要があります。
予備校に通い出してからも「勉強法の研究」にばかり熱を上げて、実際の勉強にちっとも手がついていないという生徒もときどき見かけます。
そんな愚を犯させないようにするには、現役での受験生活が終わってから浪人としての受験生活が始まるまでの限られた期間の過ごし方が大切ではないでしょうか。
生徒を3年間観てきた先生方だからこそできる助言もあるはずです。
生徒一人ひとりの受験計画を把握するのに際し、どのタイミングでそうした指導・助言ができるか考えておきたいところ。結果の知らせが届いてからの泥縄にはしたくないものです。
2学期末の定期考査を終えてから最後の受験日まで、毎日の学習の記録をつけさせていた先生がいらっしゃいました。
受験生としての一日一日を振り返り、成果を確認しつつ反省点を洗い出し、翌日の予定と決意を考える5分間がとても効果的だと感じてくれた生徒も少なくないとのことです。
すべての受験が終わったときに、最後に伸びを見せて合格を勝ち取った生徒の記録を、思わぬ結果に終わった生徒のものと比較してみれば、次の学年の指導に生かすべき、「受験本番期の好ましい過ごし方」も見えてくるかもしれません。
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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一