学校広報におけるSNSの利用

Twitterを学校広報に利用する学校は着実に増えていますが、使い方は、各学校でまちまちです。緊急連絡用に在校生向けに限った運用をしている学校もあれば、生徒募集活動をメインにしている学校もある一方で、地域の方や保護者を含めたステークホルダーとの良好な関係を結ぶ意図が感じられる運用も見かけます。
何を目的に(≒誰をターゲットに)SNSを活用するかは、学校の広報戦略しだいですが、目的に照らして好ましい内容や運用になっているかどうかは、一度点検してみた方が良さそうです。

❏ 在校生と保護者を対象とした緊急連絡に用いるなら

ある時期には緊急連絡メールを配信していた学校でも、アドレスが変更されていたり、そもそもメールを確認しない方が多かったりすることなどを理由に、Twitterへの切り替えに踏み切った学校も多いようです。
緊急時の連絡に用いるなら、更新が容易で短時間のうちに情報発信ができるTwitterは最適でしょうし、メールアドレスの管理から解放されることは、担当者の負担も軽くします。
しかしながら、フォロワーが在校生の数に比して極端に少ないようであれば、緊急時の一斉連絡という機能を十分に担える状態とは言えないのではないでしょうか。
台風や地震といった災害時には「学校の対応はどうなっているかな?」と覗きに来てくれますので、PULL型の情報利用で十分に事足りますが、それ以外の場合は、生徒や保護者のスマホに通知が届くPUSH型の発信が必要になります。
フォローしてもらい、お気に入りに登録してもらっておかないと、緊急連絡という場面での役にたたないということです。

❏ お気に入りの登録があってこそのPUSH型発信

Twitterを開設したら、その告知を徹底するとともに、お気に入り登録を繰り返してお願いする必要があります。
生徒に対しては、修学旅行や校外活動の前に、お気に入り登録を済ませるようにさせておくと、居場所がわからないときでも着実に指示や情報を伝えられますよね。
保護者に対しても、学校通信の配布や学校評価アンケートの回答依頼のときや懇談会、保護者会を機にご案内を徹底すべきです。
ただし、「フォローしておことで有益な情報が漏れなく届く」というメリットと「 Twitter 経由での情報が届かないと困る」という状況が揃わないと、いくらお願いしてもお願いの効果は上がりません。
そもそも何か月も、時には何年も更新されずに放置されたアカウントでは、フォローする甲斐もありません。ステークホルダーに情報を伝えようとする意欲と姿勢が疑われるのがオチです。

❏ WEBサイトとTwitterを連携させた一体での運用

学校行事の案内や校外活動の実況なども織り交ぜて、生徒や保護者に有用な情報を一定以上の頻度で発信していくことが、SNSでの情報発信を機能させる前提と言えるのではないでしょうか。
ただし、緊急性や重要性の低いツイートが続くと、頻繁にプッシュ通知が届くわずらわしさから、お気に入りを外されてしまい、本当に必要な時にPUSH型の発信ができなくなるリスクも高まります。
緊急性の低いものはWEBサイトで、時期を逸することなく全体への周知が必要なものはTwitterでという切り分けを明確にした運用が好適です。
WEBサイトとTwitterのすみ分けを明確にしたときに注意すべきは、双方がシームレスに行き来できるようにしておくことです。
少なからぬ学校でWEBサイトとTwitter が一体化されておらず、行き来に不便を感じさせますし、発信する側でも更新と投稿をそれぞれ行わなければならず無駄な仕事が増えるばかりです。
WEBサイトの中にTwitter を組み込むことは技術的にそれほど難しくありませんので、学校HPと公式Twitter が互いにリンクせず別々に運用されているようなら、WEBサイトの改修を急ぎましょう。

❏ 生徒募集活動や斜めの関係作りにSNSを利用する場合

校内関係者である生徒や保護者への緊急連絡に使途を閉じないで、生徒募集活動などにもSNSを利用する場合は、アカウントを複数用意して使い分けるという方法もあります。
企業でも、複数のアカウントを作って、ターゲット別に発信する情報を分けているケースがあります。
例えば、ソフトバンクでは、新商品やキャンペーンの告知などに使っている「SoftBank」アカウントとカスタマーサポートをする「カスタマーサービス担当」アカウントを分けています。
目的がはっきりと分かれているため、アカウントごとに情報を分けられますので、受け手が必要とする/欲しいと思う情報だけを受け取れるメリットがあります。
在校生や保護者に、校外で行われる学校説明会の情報をプッシュしても意味はありませんよね。鬱陶しく感じられるのが関の山です。

❏ 説明会の来訪者にはお気に入り登録をお願いする

学校説明会に来られた受験生や保護者には、「入試広報アカウント」のURLをQRコードで資料に印刷しておき、一度覗きに来てもらうようにすれば、説明会終了後も接触を続けることができます。
次回の説明会日程や、授業公開、入試要項の配布といったお知らせなども Twitter に投稿すれば、お気に入り登録してくれた方には着実に情報を届けることができます。
入試広報アカウントの中で、「説明会で訊きたいこと」などのアンケートを取っておけば、説明会の内容構成を検討するときの貴重な材料が得られるはずです。
また、説明会の会場でも、Googleフォームなどで作っておいた学校説明会での来訪者アンケートにTwitterから飛んでもらい、答えてもらうようにすれば、説明会に足を運んでくださった方の貴重な声を、最小限の労力でデータ化できます。

教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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