先生方の頭の中には「学力観」というものがあります。普段はことさら意識することがなかったとしても、それらは授業の進め方、テスト問題の作り方にはっきりと現れます。学力観が背景要因となって{何を教えるか=何を測るか}という関係が作られているということです。
瞬間ごとに相を変えていく授業は、固定して吟味の対象にするのも容易ではありませんが、紙の上に固定されたテスト問題はじっくりと眺めて検討したり、複数の先生が協議したりするのに向いています。
検討対象としやすい考査問題の改善を先行することで、授業改善を着実に推し進めていきましょう、というのが本シリーズの主旨です。
2015/11/19 公開の記事インデックスをアップデートしました。
評価項目(観点と基準)を正しく配列することは、とりもなおさず指導目標の配列も最適化します。段階的に配列され、到達目標を正しく測定できるテストを作ることで、学力観や指導目標が修正され、授業も本来の目指すべきところに沿った好適なものに変わっていくはずです。
本編でもご紹介しましたが、評価方法の改善を図ろうと定期考査の出題方針を大きく変えたある学校で、テストの難易度は跳ね上がったのに、得点分布は明らかに上方にシフトしたケースは、まさにこの一例です。
考査問題の改善を図ろうとする中で、当然ながら「より良い問い方」の探究も進みます。どんな問いを立てるかで授業デザインは決まるため、自ずと授業そのものも組み立てが変わってきます。
考査問題の最適化を起点とした授業改善には、教室の中に閉じた試行錯誤よりもはるかに大きな効果が期待できるとお考えください。
「教えたことを測るのがテスト」との発想を離れる
定期考査を外的動機づけの道具にしない
ゴールから逆算して「時期ごとの到達目標」を設定
指導方法を考える前に、評価方法をきちんと決める
考査で測るべきは学習内容の定着と能力資質の獲得
定期考査を変えて、難易度アップ&得点率もアップ
考査問題を先に考えたことで指導目標がより明確に
得点集計にも一工夫~学力要素ごとに効果検証
考査を跨いで測定項目を計画的に配列
考査問題の点検を起点に教科全体で授業を改善
テスト問題については、もう一つ注意を向けたいことがあります。「正答率は正しく予想できているか」ということです。正答率が正確に予想できるということは、生徒の状況を十分に観察・把握できているということにほかならず、後手を踏まない指導がより効果的に行えます。
テスト問題を作るたびに、あるいは模試を受験させるたびに、設問ごとの正答率や大問の得点率を予測してみましょう。予想したものと実際の結果を見比べることを繰り返す中で、日々の授業での生徒観察での見落しにも気づき、学習状況の把握精度を高めることができます。
観察の精度を高めれば、その場で必要な指導を的確に選択できますし、どのような学習活動を配列すべきかの判断もより正確になってきます。
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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一