模試を「中間目標」に、それまでの準備を計画させるときに大切にしたいことの一つは、「やるべきことを生徒自身に選択させる」ことです。先生方が課題を指定し履行させるだけでは、効果的で実行可能性を備えた計画を立てる力を身につけるためのトレーニングになりません。
やるべきことのピックアップと持ち時間内への配列も決して簡単なタスクではありませんが、「できるようになってもらいたいことは、どんどんやらせてみる」ようにしたいところです。やらせなければ、いつまでたっても出来るようにはなりません。
もちろん、何の事前指導もなしに「自分で考えて計画しろ」では生徒も戸惑うばかり。経験をただ重ねても正しく計画できるようになる保証もありません。指導の序盤はある程度までガイドし、徐々に手を放し(=生徒に任せる部分を増やし)ていく「守破離」の発想が必要です。
2014/11/26 公開の記事を再アップデートしました。
❏ 手放す時期を見込んで徐々に進める「守破離」
高3も後半を迎えれば、否が応でも手放すときが迫っていることを実感しますが、新入生を迎えた瞬間から「手放すまでのカウントダウン」は既に始まっています。
やるべきことを自分で選択し、計画を立てて実行できる力を身につけさせて高校を送り出してあげなければ、大学に進んだ/社会に出たときに困ってしまうのは、生徒自身にほかなりません。
次の模擬試験までを区切りに、受験に備えた準備の計画を立てさせるのも、タスク管理&スケジューリングの大切な練習機会です。
生徒が取り組むタスクの内、教える側が与えてコントロールする部分と生徒が自ら選んで取り組む部分の比率を考えたとき、3年/6年間の流れの中で後者の割合が徐々に増えていくようにしたいものです。
なお、序盤で大部分を占める「教師が与えてコントロールする課題」については、以下の各記事も併せてご参照いただければ光栄です。
❏ やることを見つけさせる「生徒自身による振り返り」
色々なメディアで「おすすめ参考書」や「この時期の学び方」が扱われています。前者でググってみると、何千万ものページがヒットします。条件で絞り込んでも、そこから自分に合うものを選ぶのは大変です。
そもそも、推薦者にとっては確かに「おすすめ」であり「うまくいった方法」なのでしょうが、生徒一人ひとりの個別の事情にマッチするとは限りません。
生徒それぞれ、抱える弱点/伸ばすべき力も違えば、やり残してきてしまった課題も違います。先ずはそれまでの学びをしっかり振り返らせ、
「仕上げずに/手付かずのまま放置してきたこと」のリストアップ
「C判定に達するのに必要な補強策」の立案(cf. 次稿参照)
などに取り組ませた方が、はるかに良い結果(的確な学習計画の立案)に繋がるように思います。
いずれも、これまでの自分の学びを振り返って、現在の位置を確認するところが起点です。先生方のお仕事は、そうした「振り返り/確認の機会」をどこに、どんな形で設けるかを考えることではないでしょうか。
❏ 計画を立てたら、全体量を「週数」で分割
やるべきものを選ばせたら、所用時間の見込みを立てさせ、模試の受験日までのカレンダーに割り当てさせて進行計画を作らせましょう。
模試まで7週間あるなら、課題の全体量を7分割すれば、一週間あたりの進める分量はわかります。あとは、手帳やカレンダーを使って進捗管理をさせていくだけですね。
単語集の覚え直しを模試受験までのタスクに選んだ生徒は、以下のような方眼紙で進捗管理表を作り、進んだ分をマーカーで塗って、到達した日付を書き込んでいました。1マスが単語集の1ページを表します。
順調に進めば気分も良いでしょうし、計画に遅れが生じたときもどのくらいのペースで頑張れば計画に追いつけるかイメージできそうです。
高3になっても、こうした取り組みをガイドで補助しなければならない事態に陥らないよう、入学後の早いタイミングから実地にやらせ、自分なりの工夫を重ねさせることが重要だと思います。
❏ 計画は1週間単位、最初は「成果量」より「投資量」で
生徒の日常は週単位で回りますので、目標管理は週ごとに行うのが好適です。日ごとに進める量を決めてしまうと、曜日によって予習や復習の負担量が違いますので、予定をこなせない日が出てきてしまいます。
週に半日程度、予定を空白に残した予備時間を設けておくのもお奨めです。遅れが生じてきたときのリカバーに当てることができるからです。週末を迎え、そこまでの計画がこなせていたら、余った時間は自分の好きなことに使えることも、モチベーションにはプラスに作用します。
計画は、本来「仕上げた分(=成果量)」で決めるものでしょうが、学習の習慣形成が初期段階にあり、タスクコントロールが覚束ないうちは「毎日30分頑張って、できるところまで進める」という投資量で設定させるのも好適です。
本人が一生懸命に頑張っていても、結果がついて来ないと気持ちも折れるというもの。投資量型の計画は、成果量型の計画に比べて、外的要因に左右されにくく、自力でのコントロールが容易になります。
計画通りに進んだという成功体験を重ねるうちに、それを維持したいという欲求が生まれ、学習の習慣化を後押しするエネルギーになります。
勉強を重ねていくうちに、同じ投資量で得られる成果が増えてくれば、自分の進歩も実感できて、より意欲的に取り組めるようになります。
その3「好機はいつ?」に進む。
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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一