不用意な“待て”をかけない(その2)

生徒が出来るようになっていることをきちんと見極めて、不用意な「待て」を掛けず、上手に「手を放していく」ようにしたいものです。数学や物理などで初見の概念を学ばせるときだって、それまでの勉強をしっかり積み上げてきた生徒には、例題の解説を読んで理解し、類題や練習問題を自力で解き進めさせるのは十分に可能ではないでしょうか。理解の早い生徒には次にチャレンジする問題を与えたり、他の生徒に教えたり、シェアした答…

不用意な“待て”をかけない(その1)

生徒の側ではとっくに準備が整っているのに、先生がいつまでも指示や説明を繰り返している場面は思いの外たくさん見かけます。先生が話を終えるのを待っている間に活動に当てる時間がどんどん減っていきますし、生徒のやる気や集中力も削がれていきます。くれぐれも余計な「待て」は掛けないようにしたいものです。 2015/06/29 に公開した記事を再アップデートしました。 ❏ 例えば、実習や実験の手順を理解させると…

コロナ禍で欠けてしまった指導の補完、次への前提確保

新型コロナに翻弄されて2年が経ちますが、その間に学校行事や体験学習、進路関連行事などは様々な制約を受け、縮小・中止されたり、代替策が取られたりしたかと思います。その影響は当然のことながら生徒の成長やコミュニティの形成にも及んでいるはずです。学校評価アンケートや授業評価アンケートなどのデータには、進路意識の形成の遅れ(指導計画の遅延)や、生徒が協働で課題解決に取り組む方法と楽しさを学びきれていない様…

指導目標の達成を確かなものに~数値を用いた効果測定

学力の三要素は「知識・技能」「思考⼒・判断⼒・表現⼒」「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度(主体性・多様性・協働性)」ですが、教科学習指導を通してこれらを着実に育んでいくために、きちんと行わなければならないのは「指導の効果測定」です。効果があるはずと見込んで行った指導も、本当に狙った効果があったのかを確かめないことには、試行錯誤に生徒を巻き込んでしまいますし、生徒の状況を瞬間ごとにきちんと…

指導の成果を確かなものに~新入生を迎えるとき

指導計画が設計通りの性能を発揮するには、計画自体が合理的で実行可能なものであり、且つ、計画を実行する現場の先生方が知識とスキルを備えていることが大前提ですが、指導の対象となる生徒が備える学びのレディネス(知識・理解や技能、土台となる経験[学習履歴]の有無など)が、計画を立案したときの想定と違っていないことも重要です。 2017/12/15 公開の記事をアップデートしました。 ❏ 対象者の正しい理解…

学力向上を支えるクラス内での相互啓発とメタ認知

様々な学校の授業評価アンケートや学校評価アンケートのデータをお預かりして分析を進める中で、昨年と今年についてはコロナ禍に見舞われたこともあってか、例年と比べ、受験期を迎えた高3生の「学力向上感の伸び」に鈍さのようなものを感じるケースが少なからずあります。感染対策で実際のご指導に生じた制約は、学校ごとに違いますし、それに対処するために採られた方法も違うため、ひと括りにして論じるのはあまりにも乱暴だと…

表現力を高める指導

表現力は、思考力・判断力とともに、学力の重要な部分を構成します。志望大学の入試に記述・論述問題が課されているかどうかに拘わらず、自分の考えに他者の理解と共感を得る必要は、日々の活動を送る中にも多々あります。合理的な思考がきちんとできていても、表現力の不足がボトルネックとなっては、持てるものを十分に発揮できません。各教科の学習指導のみならず、進路指導、探究活動、さらには学校行事や体験学習などあらゆる…

身の回りの問題を多角的に捉えさせる

身の回りに起きていることの中にも様々な問題があり、それらの多くは日々の授業や総合的な探究の時間の中に、学んだり、解決策を考えたりする機会を持ち得ると思います。各単元の学習の中で扱うことができるものもあれば、単元を跨いだ融合問題を設定することで学習機会が作れるものもありますし、他の教科と連携した合教科型学習、探究活動で扱うのが好適なものもあります。そうした問題について学んだり考えたりする中で、生徒は…

正解がひとつに決まらない問題

別稿で取り上げた「学習型問題」と並び、近年の入試で出題が見られるようになったものに「答えが一つに決まらない問題」があります。答えが一つに決まらないのと「答えが存在しない/解答不能」は全くの別物です。論理的に(=理屈で考えれば)成立する様々な答えがあり得る/一つに限られないというだけのことです。社会に出れば、こういったタイプの問題に多く遭遇しますので、様々な答え/アプローチを考え、それらが論理的に成…

学習型問題への対応力を養う

2020年の高大接続改革の前後から「学習型問題」をよく見かけるようになりました。教科書では扱われていない、つまり生徒がそれまで学んだことがない事柄についての説明や資料を読ませ、そこで得た理解を土台に問いに答えさせたり、意見を述べさせたりするものです。以前はごく一部の大学に出題が限られましたので、個別指導でも対応ができましたが、出題が一般化してくるとなると、授業のあり方や3年/6年を通した指導計画に…

わかりやすい話し方#INDEX

先生方の話がきちんと聞き取れることは、「わかった→できた」という流れの大切な起点です。しかしながら、「ちゃんと話しているつもりなのに…」と苦労しておられる先生方も少なくありません。話が聞き取りにくいことの背景には様々な原因が存在します。複数の原因が絡み合っている以上、問題の解決には、原因を一つひとつ切り分けながら、その解消を図っていく必要があります。 2014/09/11 公開の記事をアップデート…

わかりやすい話し方(その4)

プラスアルファの工夫と配慮 わかりやすい話し方を身につけることの目的は、生徒に確かな知識や理解を効率的に獲得させることにあるのは言うまでもありません。丁寧に説明して理解させようとするだけでは、生徒を退屈させて結果的に「情報を受け取る態勢」を解かせてしまうこともあれば、読んで理解する、話し合って疑問を解消するなどの「知識・理解の獲得に効果的な他の手段」を活用する方法や姿勢を学ばせ損ねることもあります…

わかりやすい話し方(その3)

ルーチンの確立/活動の切替 わかりやすい話し方を実現するには、話し方そのものの改善だけでは不十分です。生徒にしっかりと先生の声が届く環境を整えることなども、重要な情報に生徒の意識をフォーカスさせる上で欠かせません。また、余計な言葉(説明/指示/注意)を減らせれば、大切なところを着実に伝えることも容易になるはずです。これまでのやり方に、余計な指示や説明を繰り返す部分がなかったかも見直しましょう。 2…

わかりやすい話し方(その2)

短期記憶を飽和させない 生徒から自分の目と口が見える状態で話をするのは、着実な伝達のための大前提ですが、それだけで「わかりやすい話し方」が実現するわけではありません。わかるようにちゃんと説明したつもりなのに、後になって確かめてみると、あちらこちらで聞き漏らしやポイントの押さえ損ねが生じていることも多々あります。 聞き漏らしや聞き間違いの原因になるところは幾つかあり、それぞれに効果的な防止策を講じて…

わかりやすい話し方(その1)

#01 目と口が生徒から見える状態で 先生の話が聞き取りにくかったり、わかりにくかったりすれば、当然のことながら、知識の伝達も理解の形成も効率的には進みません。獲得させた知識や理解を道具/土台に、思考や対話などの学習活動に取り組ませて様々な能力・資質を養うにも、伝達で躓いているようでは学習活動に割り当てられる時間が短くなっていくばかりです。話を聞いている生徒も、言葉を聞き取ること/話を理解すること…

2021年に多くお読みいただいた記事

遅ればせながら…、旧年中は大変お世話になりました。改めて御礼を申し上げます。本日よりブログの更新再開です。本年も何卒宜しくお願いいたします。今週末に行われる、大学入学共通テストの出題がどんな内容になるか、とても気になるところです。昨年の第1回のものが基本的には踏襲されるものと予想しますが、さらなる工夫も盛り込まれるかもしれません。4月から始まる高校での新課程の主旨を先取りした出題も含まれるのではな…

ひとつの教材を扱う中で4技能を養う(その2)

前稿に引き続いて、これまで以上に重視される「思考力・判断力・表現力」の育成と、「4技能の向上」という2つのミッションを同時に達成し、さらには「自学を可能にする学習方策の獲得」も目指した授業を、限られた指導機会/時間の中でどう実現すべきか考えてみます。教材をいたずらに増やすのではなく、精選した教材で(可能な限り教科書から離れずに)多角的な活動を通して学びを深めるのが戦略の中心になりますが、他教科/探…

ひとつの教材を扱う中で4技能を養う(その1)

新課程のベースとなった「21世紀型能力」では、言語、数量、情報の各スキルが「基礎力」と定義されていますが、英語は国際化がさらに進む社会において、すべての教科を学ぶための基礎として、これまで以上に重要なポジションに置かれます。英語学習が直接的に目的とするところは「4技能のバランスの取れた獲得」であることに間違いありませんが、他教科を学んだり、探究活動に取り組んだりするときの、情報の収集、発信といった…

単元で学んだことの体系化に挑ませる

どの科目でも、ひとつの単元で沢山のことを学びますが、それをひとつずつ順番に覚えて行くだけでは単元の全体像をつかみきれなかったり、体系化された知識にならなかったりします。まとめプリントを先生が作って配ってあげたとしても、生徒は「自力で知識を体系化する場面」を経験しておらず、その姿勢と方法を獲得する機会も持てずにいるはずです。学んだことを生徒が自分で整理してまとめ上げる機会を持たせることには大きな教育…

カリキュラム全体の中での英語の位置づけと授業デザイン

大学入学共通テストの導入を控えて「英語の民間試験の導入」で大騒ぎがあったのは記憶に新しいところです。その後は目立った騒ぎもなく、中高の英語教育を取り巻く環境は少し落ち着きを取り戻したようです。しかしながら、新課程への移行で学力観が大きく変わったのは、どの教科・科目でも同じこと。英語も例外ではありません。騒動が収まったからといって、従来の指導のままで良しというわけにも行きません。総合的な探究の時間の…