新しい学力観の下での授業デザイン(記事まとめ)

新課程への移行に伴い、パフォーマンスモデルからコンピテンシーモデルへ、学力観の更新が加速しています。大学入学共通テストや各大学の個別入試でも新しい学力観を反映した「意欲的な出題」が見られます。目指すところは、大学進学者のみならず、全ての生徒が卒業後に正しい選択を重ね、より良く生きるための基盤となる「学力」の形成です。基礎力という言葉ひとつとっても、それが指すのは従来の「単元の内容を構成する、中心的…

学びの個別化と授業者に課される役割の変化

昨日(8月26日)の朝刊に、今春に本格導入となったデジタル教科書で教室に起きた変化を紹介する記事が載っていました。(デジタル教科書使うほど「主体的学習」に、授業が課題)生徒がそれぞれ自分のペースとやり方で勉強を進められ、学びの成果や過程を端末を通じてシェアできることは「主体的・対話的で深い学び」の実現を容易にすると同時に「学びの個別化」も加速していきます。最初の利点(自分のペースと方法)で、説明を…

改善が遅れた授業のキャッチアップを支える

授業評価アンケートの集計結果や、模試や外部検定のデータを拝見していると、改善を重ねてより良い指導を実現している授業/先生/クラスがある一方で、キャッチアップが必要なのに改善が遅れてしまうケースも少なからず見られます。これをそのままにしては、改善が進まない先生ご自身もお困りでしょうし、そこで学んでいる生徒にも小さからぬ不利益が及びます。自校に通うすべての生徒に「より良い学び」を約束するために、改善が…

学習方策の獲得、学習の改善~データと考察

学びへの目的意識~データと考察(その1、その2)と同じように、学習方策(科目の学び方や取り組み方の獲得)についても、直近に集まったデータを、教科×学年という切り口で集計し直してみました。以下がその結果です。学習内容が高度化していく中、「自分が身に付けている学び方」に自信を失っていくと考えれば説明がつきそうなデータです。どの教科も最終学年で跳ね上がるのには、そこまでに学び方が身につかなかった科目は履…

学びへの目的意識~データと考察(その2)

前稿(その1)でご紹介したデータを国社数理英の教科に分けて学年毎の集計値分布の推移を調べてみると、以下のような結果になりました。なお、グラフ中のブルーの破線は「教科別中央値」です。 (クリックで拡大) 予想通り、どの教科でも例外なく、「中間学年」は教科別中央値を下回っており、中弛みが観察されますが、その下がり具合や、最終学年での戻り方には、教科ごとの特徴のようなものも見て取れる気がします。また、ど…

学びへの目的意識~データと考察(その1)

当オフィス監修の「生徒による授業評価&生徒意識アンケート」では、伝達スキルや授業デザインに加えて、主体的な学びの実現度も推し量るべく、学習方策と目的意識について生徒の意識を質しています。 学ぼうとしても自力で学べるだけの術を身に付けていなければ、誰かが教えてくれるのを頼るしかない「依存」から抜け出せず、学ぶことへの自分の理由(課題や目的)がなければ、言われてやるだけの「受動」に止まります。いずれも…

夏季休業等のお知らせ

残暑お見舞い申し上げます。 暦の上では「立秋」とのことですが、秋の気配とは歩ほど遠く、本日も当地の最高気温予想は33℃、熱中症も「厳重警戒」です。先生方におかれましては、夏の間もご多用のことと拝察いたしますが、くれぐれも御身大切にお過ごしください。 さて、夏季休業等のお知らせです。当オフィスは、8月9日(金)より17日(日)まで夏季休業といたします。ブログの更新は、明日から20日(火)までお休みし…

模試の結果を正しく振り返る(学習行動の改善)

以前の記事「模試や考査の事後学習~間違え直しだけでは不十分」でも書きましたが、模試や考査の結果を戻すとき、所謂「間違い直し」に取り組ませるだけでは不十分。学習行動の十分な改善は期待できません。テストの結果を通じて振り返るべきは「これまでの自分の勉強への取り組み方や学習方法」であり、振り返りを行う目的は「より良いパフォーマンスを得るにはどのように行動すれば良いか」という自分の課題を見つけること。ひい…

先生も生徒も、評価者としてのトレーニング

新しい学力観への転換に伴い、指導方法の工夫を重ねるのと並行して評価方法にも組み直しが必要になります。(cf. 指導と評価の一体化)当ブログでも繰り返し申し上げてきましたが、学習評価は以下のような様々な材料とそれに応じたツールを用いて多面的に行うものであり、いずれも新しい学力観に沿ったものへの更新が必要です。 考査問題や課題類を新しい学力観に沿ったものにアップデートしたり、活動場面ごとに用いるルーブ…

生徒は評価者としてどこまで成長しているか

発表やプレゼンの評価、論述答案の採点などにルーブリックを適用してみたとき、生徒による自己評価の結果と先生方の目での評価の結果との間にどのくらいのズレが生じているでしょうか。同じ評価/採点基準(観点別に定めた段階的な評価規準)に照らしている以上、基準の適用が正しくできれば、先生がやっても生徒がやっても結果は同じになるはずなのに違いが出ているというのは、生徒は観点や規準をきちんと理解できていない/適用…

チェックリストを用いた目標提示と達成検証

学習目標を示すのに最も効果的なのは、別稿で書いた通り、「学び終えたときに解を導くべき問い」を導入フェイズで示しておくことですが、練習や話し合いなどの活動の場面では「解を導く」こと以外にも目標があり、その効果的な伝え方を別の形で確立しなければなりません。練習を通じてできるようになるべきこと、取り組みのポイントやふるまい方、協働場面でのチームへの貢献などの「実現を目指すべきこと」を行動評価の基準として…

説明がわかりにくいと言われたら

言うまでもなく、「説明や指示のわかりやすさ」は、授業の成否を左右する大切な要素です。先生の説明や指示、意図するところが十分に伝わっていなければ、生徒が課題解決や対話協働などの学習活動に取り組もうにも、その土台(=理解)は固まらず、目標の達成は見込めません。本時の「学習内容の理解」もままならず、如上の活動を通して狙っていた「能力や資質の獲得」も進まないのでは、学びが進むたびに、生徒が抱える不明や学習…

暑中お見舞い&メンテナンスのお知らせ

暑中お見舞い申し上げます。 梅雨明けから猛暑が続く中、近所の景色もすっかり夏です。 追伸、今年も近所の百日紅が咲きました。(先日撮影) 少し季節が進んで秋風を感じるようになるまで暑さには要注意ですね。先生方におかれましては夏休み中もご多忙と存じます。くれぐれも御身大切にお過ごしください。さて、明日7月25日(木)ですが、サーバーのメンテナンスが予定されていることもあり、ブログの更新をお休みいたしま…

振り返りのためのアウトプット #INDEX

インプットに不備や不足があっても、アウトプットの機会を持たなければそれに気づくことができません。しっかり教えて、きちんと覚えさせるというアプローチだけでは、振り返りの材料(=先生方にとっては評価の根拠)が得られず、学習/指導の改善が図れなくなります。 といった体験/活動を通は、本当に理解できたかどうか、どこまで思考が深まったかを確かめるためばかりでなく、次の機会により良いパフォーマンスを得るのに、…

振り返りのためのアウトプット(その2)

生徒が自らのインプット(それまでの学び)に不備や不足があったことに気づくためには、アウトプットの機会を用意することが必要です。アウトプットが首尾よく行え、学びの成果を上手く形にできたら、それはそれで生徒に達成感を与え、次の学びへのモチベーションを高めますが、うまく行かなかったときに取る「次の行動」こそが、学習者としての成長、自立に繋がっていく鍵だと思います。 2015/01/06 公開の記事を再ア…

振り返りのためのアウトプット(その1)

授業で学んだことを用いて問いに答えを導く場や、調べてきたことに基づく討論や発表など、学びの成果のアウトプットには様々なものがありますが、一連の学習活動の「終端」と捉えているだけでは、その機能を十分に活かせません。アウトプットはゴールではないということです。アウトプットを通して、そこまでの学習(インプットとインテイク)に不備や不足がなかったかを確かめ、補うべきもの、修正すべき点を正しく認識させてこそ…

発言がなかなか出ない/思考が膨らまないとき

授業中の活発な発言や思考を促そうと、様々なアクティビティを仕掛けてみても思ったように生徒が動いてくれないことも少なくありません。生徒が自力で/協働で解決すべき課題を与えないと、活動が自己目的化し、盛り上がりにも学びの深まりにも欠けてしまいます。しかしながら、しっかりお題を与え、生徒が考え/話し合う場を作ってみても、戸惑いもあるのか動き出しが悪かったり、然したる意見も出なかったりと、思考の深まりが一…

対話で行う理解確認

生徒の理解を一つひとつ確かめながら授業を進めることは、学びの成果を積み上げるのに不可欠なのは言うまでもありません。実際のデータでも、理解確認と学習効果の間には、かなり強固な相関が見て取れます。 【理解確認】先生は生徒の理解を確かめながら授業を進めてくれる。 【学習効果】授業を受けて、学力の向上や自分の進歩を実感できる。 散布図に重ねたヒストグラムを見ての通り、学習効果が75ポイント(=否定的な回答…

目的意識をもって学びに取り組んでいるか

自立的に学びを進められるだけの土台(学習方策)を備えることに加えて、学ぶ意欲や学ぶことへの自分の理由(目的意識)を持っていることは、主体的な学びを成立させるのに欠かせない前提条件です。前稿で考察した「学習方策」(この科目の学び方や取り組み方が身についた)に続き、本稿では目的意識に焦点を当てて、授業評価アンケートの回答データの解析結果が示唆するところをお伝えします。 2020/08/21 公開の記事…

学習方策の獲得はどこまで進んでいるか

新課程への移行を機に「主体的、対話的な深い学び」の実現が進んだと思いますが、検証の材料(授業評価アンケートや活動評価の結果に加えて、ポートフォリオの各種ログなど)を揃えて進捗を確かめましょう。その中で見つかった「好適実践」の共有も着実に図りたいところです。本稿と次稿では先ず、「主体的な」に焦点を当てて授業評価アンケートの回答データの解析と考察を試みます。主体的な学びは、生徒が学ぶ意欲や学ぶことへの…