学ぶ理由/自立した学習者

次のステージ(進級後の学び)への準備は整っているか

年度末に向けて、来年度の指導計画作りが進んでいると思います。模試成績や受験結果の検討会などを経て進級後の学びを妨げかねない問題が見つかることもあれば、一年間の成績伸長からは「前学年での躓きが原因となって成績伸長を妨げた」との反省がなされるケースもあります。こうして発見された課題に対して有効な対策を講じることができるかどうかが問われるところ。反省は行動に繋げてこそ意味を持ちます。次のステージ(進級後…

学習者としての成長を促す"活動評価"と"振り返り"

生徒は各教科を学ぶ中で、教科固有の知識や理解を蓄えているだけではありません。学びへの姿勢や物事の学び方、課題を解決するための思考手順、協働場面でのふるまい方など、様々なものを身につけています。どんな能力や資質、姿勢を獲得させたいのか(ゴール)を明確にし、生徒一人ひとりが今、成長過程のどこにいるのか(現在位置)を掴まないことには、両者を結ぶプロセスである「指導」も計画できません。生徒自身もまた、段階…

学んでいることの有用性に気づかせる

勉強は「役に立つからする」「役に立たないからしない」というものではありませんが、それでも「学んでいることが何かの役に立ちそうだ」と思えれば、身の入り方が変わってくることも確かです。手元のデータもそれを裏付けています。 履修の途中(あるいは入り口)にいる生徒や学生にとって、学びを進めた先にどんな利益や活用の場面があるかは、容易には想像できないはずです。解くべき課題で「何のために学んでいるか」を伝える…

興味関心と自ら学ぶ姿勢とのギャップ

主体的に学ぶ姿勢、自ら調べたり考えたりする態度を獲得させることが指導上の重要目標であるのは言うまでもありません。教室で生徒に知識や技能を身につけさせても、社会の変化や科学の進歩の中で、それらがいつまでも価値を持つとは限らず、知識は常に獲得/アップデートする必要があり、生徒には自ら学び続ける姿勢が求められます。自ら学ぶ姿勢を持つには、対象への興味関心が不可欠でしょうが、要件はそれだけではなさそうです…

生徒の興味・関心をどこまで育めたか

授業を通じて科目に対する(あるいは学びそのものへの)生徒の興味や関心を高めることはどの教室にも共通する目標だと思いますが、そのための方法を論じる機会の多さに比べて、「興味・関心とは何か」という根幹に立ち戻った議論はあまりなされていないような気がします。興味・関心とは何かをきちんと定義しないままでは、その高まりを客観的に測定することはできません。方法をあれこれと論じても、それらがどのくらいの成果を得…

学び方そのものを学ばせる

教科学習指導の目標は、教科固有の知識や技能を身につけさせて、使いこなせるようにさせることが第一であるのは言うまでもありませんが、これらを優先させるあまり、学び方を身につけさせたり、学ぶことへの自分の理由を作らせたりするのが疎かになってはいけません。ここで言う「学び方」とは、知識を獲得する方法だけでなく、体験を構成して理解を形成する方法、協働で課題解決に当たる場面でのふるまい方など、学びの場での行動…

振り返りと行動変容(まとめページ)

21世紀型能力(新課程の具体化に向けた議論の土台)における思考力の構成要素には、「問題解決・発見力・創造力」と「論理的・批判的思考力」に加えて、「メタ認知、適応的学習力」が挙げられています。各教科の学習に限れば、「自分の問題の解き方や学び方を振り返るメタ認知、そこから次に学ぶべきことを探す適応的学習力等」と説明される力ですが、生活や進路などにも拡張すれば、広く「先に控える課題を見据えて、取るべき行…

正しい選択を重ねられる生徒に育てる

どんな場面でも生徒を指導をするときに最終的に目指すのは、「正しい選択を重ねられる生徒に育てる」ことだと思います。これは進路指導に限らず、生活や学習の場面についても言えることだと考えます。正しい選択が行えるようになるには、幾つかの要件を満たす必要がありますが、そのうち最たるものは以下のようなところでしょうか。 1では、必要な情報は何かを特定し、それを効果的に集める力(土台となるのは「読んだり、聞いた…

難易度からの得意/苦手の意識が受ける影響

教材や課題の難易度が上がるとその科目への苦手意識が膨らむのは容易に想像できますし、実際のデータでも確認できます。しかしながら、苦手意識の発生には様々な要因が絡み合っており、目標水準を引き上げたからといってそのまま苦手の拡大に直結するわけではありません。以前の記事「活動性を高めて苦手意識を抑える」でデータを示してお伝えした通り、授業内活動には苦手意識の発生を抑える効果があります。教え合いや学び合いを…

主体的・対話的で深い学び~どこまで実現したか #2

新しい学力観に沿った学ばせ方への転換を図る中で「主体的・対話的で深い学び」がどこまで実現できたか測定することは、これまでに重ねた授業改善に向けた行動の妥当性を検証し、効果を挙げてきた優良実践を抽出するために欠かせません。今後のさらなる改善に向けて、どこに次の一歩を踏み出すべきかの判断をするにも欠かせないデータの一つになるはずです。授業者としての行動/活動の配列などに視点を置くことも大切でしょうが、…

主体的・対話的で深い学び~どこまで実現したか #1

現場で頑張る先生方が「主体的・対話的で深い学び」の実現を目指して様々な工夫を凝らし、日々の授業改善に取り組んでおられる様子に大いに刺激される今日この頃です。このキーフレーズを定義し直し、構成要素ごとに到達段階の指標を書き出せれば、新しい授業観にそった学ばせ方の転換がどこまで進んできているかの検証もできそうです。 2018/06/19 公開の記事をアップデートしました。 ❏ 検証の指標は、授業者では…

自己評価、相互評価を行わせるときの工夫

個人の練習やグループでの活動の成果を発表させるとき、生徒に自己評価や相互評価を行わせることで、取り組みの成果のたな卸しもできますし、さらに良くなる/良くするための手掛かりも見つけられます。しかしながら、形だけの自己評価/相互評価を繰り返してもその効果は限定的です。効果に繋げるために必要な工夫について考えてみました。 2017/09/11 公開の記事をアップデートしました。 ❏ 評価をさせることはメ…

授業規律VS学ぶことへの自分の理由

教室は集団で学ぶ場ですので、生徒一人ひとりが安心して勉強に集中するには、一定の規律が保たれる必要があります。しかしながら、勉強に集中しない生徒や規律を乱してしまう生徒がいたとき、きつく指導して従わせるだけでは「主体的な学び」から遠ざかるばかりです。先生に言われたことに従っているだけで、学びが従属的なものになっていては、指示という外圧ががなくなったときに学習は継続しないのではないでしょうか。「自ら学…

"本校は何を目指すのか?"という問いへの答えを共有

日々の教育活動の中で生じた課題の解決を図ろうとするとき、あるいは新課程の対応などで従来のやり方を変更しようとするときに気をつけなければならないのは、部分を最適化しようとして全体のバランスを崩さないようにすることです。全体のバランスを保つには、個々の教育機会の指導目標の上位に、学校の教育目的がしっかり据えれられていることが何よりも重要です。大きな変革を迎え、あちらこちらに修正の手を入れていく前に、 …

年末に行わせる「4月からの学びの振り返り」

期末試験の時期を迎えました。答案返却日には、生徒はここまでの期間に重ねてきた学びの成果を、点数というひとつの指標に照らして確認することになります。考査が終わった解放感もあるでしょうが、ここできちんと振り返りをさせることが先の歩みを大きくさせます。思ったほど成績が振るわなかった生徒もいるでしょう。「まあ、仕方ないよね」と開き直られても一歩も前に進みませんし、悪い点数を前に落ち込んでいるだけでも同じで…

最終局面での進路指導~出願校選定から卒業まで

いよいよ受験期本番が間近に迫りました。ここから先、生徒一人ひとりの状況を把握しつつ、その頑張りを支えるため、指導にはきめ細かな配慮が必要になりますし、出願をはじめとする重大な選択も続きます。この最終局面での指導に明確な見通しと戦略をもち、しっかり準備して臨めるかどうかは、生徒の未来に小さからぬ影響を及ぼすはずです。冬休みに入れば、先生方の間での情報交換や目線合わせの機会は持てなくなります。年末の忙…

大学に進んでから燃え尽きさせないために

進路希望の実現に向けて頑張ってきた生徒には、進学先でも新たな夢の実現に充実した日々を過ごしてほしいところですが、様々な統計を見ると、学業不振や学校生活への適応で苦しんでいる学生も少なくないようです。こうした問題に対して、大学に送り出すまでに高校の中で打っておくべき対策もあるように感じます。 2017/03/30 公開の記事を再アップデートしました。 ❏ 学業不振や学業への無関心が中途退学の主因 古…

現2年、現1年に対する、進級を見据えたゼロ学期指導

別稿「ゼロ学期を迎えるに当たり~指導計画作りへの下準備」では、新年度を迎えるために行う教員組織内の業務に焦点を当てましたが、もう一つ忘れてはいけないのは、進級を控える生徒(現2年、現1年)に対する「新年度に向けた準備を整えさせる指導」です。春を迎えて最上級生となる現2年生は、来年度の履修科目選択の希望を提出したことで「受験生」になる第一歩を踏み出したことになります。ここで歩を止めさせず、二歩め、三…

情報を集めて編む作業で知識獲得の方法を学ぶ(その2)

知識の獲得は、思考力や判断力の土台作りですので、どの教科を学ばせるときにも力を抜くことはできませんが、生徒自身が必要に応じて情報を集めて知に編めるようにすることも学習指導の重要な役割です。昨日の記事(その1)では、授業の導入フェイズや学び終えてからの知識拡充の場面で課すべき「手元にある教材から必要な情報を拾い上げ、知に編み、蓄えるタスク」をご紹介し、生徒が自力で知識を獲得できるように導く方法につい…

情報を集めて編む作業で知識獲得の方法を学ぶ(その1)

生徒に一定の知識や理解を獲得させようとするときに、昔から最もよく用いられているのは「話して聞かせてわからせる」という方法かと思われますが、単元固有の知識・理解を獲得すると同時に、それらを獲得する方法を身につけさせることにも十分に意識を向けたいところです。学校を卒業した後も、科学技術の進歩や社会の変化によって新たな知識や理解を積み重ねていく必要がなくなることはありません。必要なことは自力で調べ、きち…