進路意識形成を支える指導

探究活動の目的から考えるテーマ選び

探究活動の目的は、未解決の課題を見つけ、その解決に挑むことで「新たな知を創造する方法と姿勢」を身につけることにあります。さらに、それらの課題に自分はどう向き合い、関わっていくのかを考える機会であり、その中で生徒は、21世紀型能力の「実践力」を養い、とりわけ「持続可能な未来への責任」という資質を獲得します。教育の主目的は「社会に適応させるための訓練」から「社会の課題に取り組み、より良い社会を創る人材…

探究活動と進路指導でポートフォリオに残すログ

自らの学び(成果と過程)を振り返り、成長や進捗を確認しつつ、次に向けた課題を明確にすること(所謂「進捗と改善課題を捉えた学び」の実現)の重要性には、これまでも様々な記事で触れてきました。 教科学習の中では「主体的に学ぶ姿勢を育む」ために欠かせませんが、探究活動や進路意識を形成する学びの中でも重要な指導の一部です。それぞれの指導場面で、「ポートフォリオに残されたログをどう活用するのか、そのためにどん…

進路意識形成を支える指導

1 興味を追いかけ、しなやかに選択を重ねる 1.1 キャリアは選ぶものではなく重ねるもの ★ ・最短の進路がベストにあらず1.2 進路を選択する中での「自分を知る」をどう考えるか ★1.3 自分事としての目標か~達成への行動を考える前に New!1.4 調べたことの先に~新たな知と当事者としての関わり1.5 カッコつきの“キャリア教育の充実!”に思うところ1.6 ゴールを決めて最短距離?(全3編)…

AIで深める自己理解~志望理由書作成での活用例

教育現場に限らず、AIを活用するのはもはや「日常」でしょう。仕事の相棒として欠かせない存在という先生方も多いかと思います。過日の拙稿「次期学習指導要領に向けて~教育へのAI利活用」でも触れましたが、教育現場での活用シーンはこれからもどんどん増えそうです。教科学習指導以外にも、「個別化」が必要な場面では、AIの積極的な活用を進めたいところ。進路指導の場でもAIを活用するケースが増えているようです。特…

進路指導で育む“選択の力”(後編)

進路指導の現場では、生徒に個々の資質や志向に合致した進路を見つけさせ、その実現を後押しするのが第一義ですが、同時に「選択の力」を獲得させることにも注力すべきというのが前編の趣旨でした。進路選択までに踏まえるべきプロセスの一つひとつは、「より良く生きる(=正しい選択を重ねる)ための力」を得る学習機会でもあります。後編では、進路指導を通じてどんな資質や姿勢、スキルを身につけさせるか、それらは教科学習や…

進路指導で育む“選択の力”(前編)

進路指導の目的の一つは、生徒がそれぞれの能力や志向に合った進路を見つけ、実現することです。しかしながら、この目的を達成する過程で生徒が身につけるべき様々な資質や姿勢のことも忘れてはいけません。中でも、進路を選択するプロセスの中で養われる「選択の力」は生徒が人生を歩む上でとりわけ大切。進路指導はその力を育む重要な場です。 2014/12/29 公開の記事を再アップデートしました。 ❏ 高校卒業の時点…

準備が整わないうちに選択を迫っていないか

進路形成は大小様々な選択の積み重ねであり、ある局面の選択によってその先に見える景色が違ってきます。もちろん、選択のやり直しはいつでも可能ですが、ある分岐点を右に曲がった場合、左に折れたら見えたはずの光景(≒興味や関心)に出会うチャンスは小さくなります。どちらの道に進むかは、できる限りの情報を集め、吟味し、それぞれの道の先に広がる世界を想像してから決めたいもの。生徒を選択の機会に臨ませるとき、拙速な…

大きな分岐に臨ませるまでに行うべき指導

進路を決定するまでのプロセスにおいて、生徒は小さいものから大きなものまで多くの選択を経ながら自分の未来を拓いていくもの。ある場面でおこなった選択は、その後の選択肢の構成を変えてしまいます。選択を間違えたとしても、方向転換や多少の後戻りで正しいルートに戻ることは可能ですが、それには多大なエネルギーが必要となります。時間も巻き戻しはできませんので、「進路決定までのタイムリミット」を超えるリスクのある歩…

先に控える選択の機会をいつ認識させるか

進路指導計画を作るときも、それに基づいて実際の指導を進めていくときも、「先に控える選択の機会」をどのタイミングで生徒に認識させるかは、様々なことを想定して決めていくべき重要事項です。タイミングが早すぎると、今やるべきことに集中できなくなり、その中で得られるはずの成果を逃してしまうリスクを抱えますし、逆に遅すぎれば、準備を十分に整えないまま選択に臨ませてしまい、「とりあえずの選択」でその先の可能性を…

選択した結果を正解にするのは「これからの行動」

選択を迫られれば、誰しも「これが本当に正解なのか」と迷い、選択の結果が左右するものが大きいほど悩みは深まります。それでも「人生で何をすべきか」は外の誰でもなく、自分で決めなければならないもの。進路を選ぶところに来てなお、まったく悩みがないという生徒は、調べたり考えたりするのが足りていないだけかも。多くの情報を集め真剣に考えるほどに選択肢は増え、悩みが増えることも少なくなさそうです。選択に悩んでいる…

体験のたびに感じたことをしっかり考え、言語化&記録

日々の学校生活の中では、生徒は様々なことを感じたり気づいたりしていますが、それを漠然とした感想にとどめず、少し立ち止まって考えを深めさせるとともに、言語化し記録に残すことを習慣にさせましょう。先生方とのやり取りや周囲との会話、あるいは授業で読んだ資料など、生徒が受ける「成長のための刺激」は学校生活を送る中のあらゆる場面に存在していますが、それらをもとに熟慮する機会がなければ、気づきや学びは深まりま…

調べたことの先に~新たな知と当事者としての関わり

探究活動や課題研究のプログラムを作って導入し、生徒に取り組ませるとき、「何を目的とする活動か」という根源の問いに先生方がどのような答えを共有しているかはとても大事なことだと思います。探究活動には様々な役割がありますが、以下の2つは他の活動での代替は困難です。 指導に当たる中、「調べ学習」で終わっている生徒、そこにも到達していない「検索&コピペ作業」だけで調べ終えた気になっている生徒を見過ごしてしま…

自分事としての目標か~達成への行動を考える前に

進路希望なり、将来の夢なり、目標となるものを決めたら、それを達成するためにクリアすべき課題が何かを洗い出し、その一つひとつにどう取り組んでいくかを考えていく必要があるのは言うまでもありません。目標達成の要件/課題を正しく捉え、それを充足するための行動を持ち時間の中に効率よく配列しておかないと、無駄なことに時間を費やしたり、肝心なことが意識から漏れて手付かずになったりしがちです。最上級生となる3年生…

目標を持った状態で巣立たせる

全国各地の学校が「特色ある学校づくり」にこれだけ意欲的に取り組む中、実現を目指す教育の価値やその成果を示す指標には、もっと様々なものがあって良いのではないかと感じます。例えば、卒業に臨んで「私はどうしてこの進路を選んだ、この道でこんなことをしてみたい」との思いをしっかり抱き、言葉にできる生徒の割合などは、その一つになり得るはずです。進学を志す生徒には、総合型選抜の拡充に伴い、志望理由書や学修計画書…

進路関連行事に向けた企画・準備・事前指導

キャリア教育への注力や高大連携の強化といった流れの中で、進路意識形成を目的とする、外部から講師やファシリテーターを招いての講演会やワークショップが増えているように思います。見学をさせていただく度にたいへん勉強になりますが、「あれっ?」と疑問を感じることも少なくありません。例えば、こんな感じです。 こうした場面を目にすると、せっかく手間と時間をかけて設けた指導の機会を存分に活かしきれていないことに勿…

行事にじっくり向き合える、忙しすぎない学校生活

各地の学校で教育活動の拡充が進んでいます。新課程で導入された「総合的な探究の時間」のプログラムに加え、「21世紀型能力の実践力」の涵養を目指す進路/キャリアに関する多様な学びが整ってきました。そんな中、生徒が3年間/6年間で経験する行事は、当然ながらその数を増やし、一つひとつの行事にじっくりと向き合うことが難しくなってきているようにも感じます。進路関連の行事や成果発表会なども、準備を整えてじっくり…

進路行事としてのワークショップ

別稿「進路講演などに向けた事前指導」では、進路講演などのイベントでの成果をより確かなものにする事前の準備について考えました。進路指導関連行事の形式でも、従来からよく見られる「講演タイプ」に加え、新たに「ワークショップ型」が導入されるケースも増えており、ファシリテーターには外部の人材活用も少なくありません。 こうした変化の中、準備や行事内の活動への取り組ませ方などにも従来と違ったものが求められていま…

進路講演などに向けた事前指導

外部から講師を呼んで行う進路講演は、普段聞けない話に見聞を広げることで新たな世界の見方を知る、生徒にとって大切な成長の機会の一つですが、何の準備もなくただ話を聞かせるだけでは効果は限定的です。前もって講演のテーマについて、調べたり、考えたりする「事前学習」の機会を設けることで、講演からの学びは大きく膨らみます。多忙な日常の中で、生徒も先生も行事にむけた事前準備などにそうそう時間を当てられないという…

目標を見つける入り口~日々の学びでの興味・関心

目標を持った状態で巣立たせるには、日々の学びの中に興味や関心を見つけてもらうことがスタートです。興味は自力で考え工夫して達成したこと(=できるようになったこと)の中に生まれ、関心は「自分事」として認識できる課題に触れて芽生えてきます。せっかく生まれた興味・関心もそのままにしては、深化・拡張することなく埋もれてしまいます。機を逃すことなく、探究的な学びで興味を掘り下げ、関わりの視野を広げることで、「…

進路意識の高揚を目的とした講演会の企画

進路意識の高揚を図ることを目的に、生徒が目標としている大学に進んだ卒業生や、その大学の入試広報担当者を招いて講演会を実施することがありますが、せっかくの企画も単発のイベントに終わってしまい、継続的な効果をもたらしていないケースも少なくありません。進路行事が、継続性のある進路意識の高揚や受験生としての個人/集団レベルでの成長という所期の目的を達するには、 といったことを十分に意識した上での企画・運営…