活動の配列/授業デザイン

新しい学力観の下での授業デザイン(記事まとめ)

現行課程の下、学力観はパフォーマンスモデルからコンピテンシーモデルへと更新が加速しています。大学入学共通テストや各大学の個別入試でも新しい学力観を反映した「意欲的な出題」が見られます。目指すところは、大学進学者のみならず、全ての生徒が卒業後に正しい選択を重ね、より良く生きるための基盤となる「学力」の形成です。基礎力という言葉一つをとっても、それが指すのは従来の「単元内容の根幹をなす知識群」から「言…

学びの初期値を計測(後編)

先生方による「学ばせ方」を、生徒が備えている既得知識や問題意識、学習方策などにマッチしたものにアレンジすること。さらに、指導がどれだけの効果を得たのか、効果測定を着実に行い、改善を重ねていくこと。この2つはより良い授業を実現するには欠かせません。双方(授業デザインの最適化と効果の正確な測定)を成立させるには、前提要件として「学びの初期値」を測定しておくことが不可欠、というのが、本稿(前編・後編)で…

学びの初期値を計測~授業デザインと効果測定のために

授業の効果は、先生方による学ばせ方と、生徒が備えるもの(既得知識や問題意識、学習方策など)とのマッチングで決まります。生徒がこれまでにどんなことを学び(+どう学ぶ中でどんな能力や資質を獲得しているか)、対象への理解や問題意識がどのようなものであるかを捉えないと、効果的な授業はデザインできません。これらは、実際の授業を始めるときより、さらに遡って授業をデザインする/指導計画を起こす段階でも把握を試み…

授業改善の方向性は合っているか?(チェックリスト)

現行課程において、知識・理解の着実な形成に加え、基礎力(=言語、数量、情報の各スキル)や、思考力(狭義の問題解決力に限らず、問題発見力、メタ認知・適応的学習力なども含む)などの獲得が、これまで以上に求められているのは、これまでの別稿でも書いてきた通りです。 日々の教室での「学ばせ方」にも、こうした「新しい学力観」に沿うことが求められ、その方向で授業改善も進んでいるはずです。さらに歩を進める前に一度…

教材づくりは、学習活動の配列を想定して

授業で用いる教材(プリントやワークシート、スライドなど)を作るとき、「わかりやすい」ものを目指すのは当然だと思いますが、それだけでは「学びに資する有益な教材」にはならないことがあります。わかりやすさ(≒着実な理解の形成)は、掲載する内容の精選、関連性がつかみやすい配列・構成などで高められますが、授業/学習を通して獲得を図るべきは「知識・理解」だけではありません。効果的な伝達に偏ると、ほかの部分の学…

活動の配列/授業デザイン

1 問いを軸に授業を設計~学習活動の適切な配列 1.1 教室でしかできない学びを充実~問いを軸に授業を設計 ★ ・学びの場での「問いの活かし方」 ・教材としての好適性~「問い」の性能評価 ・目標理解と活用機会を整える授業デザイン1.2 学習内容が同じでもアプローチによって学びの質は異なる ★ ・確かな学力を獲得させるための「学習活動の適切な配列」1.3 どんな問いを立てるかで授業デザインは決まる …

各教科で実践する「探究的な学び」

総合的な探究の時間だけでなく、各教科の授業でも「探究的な学び」を生徒に経験させようとする取り組みが広まっているのを実感します。先日、授業公開でお訪ねした学校でも、保健の授業では生徒がそれぞれのテーマと切り口で行った調べ学習の発表場面を、公民では企業と金融についてのシミュレーションを行うグループワークを見かけました。大学入学共通テストでも、「探究的な学び」の場を想定した出題をよく見かけます。現場の先…

どんな問いを立てるかで授業デザインは決まる

どんな問いを携えて教室に臨むか、授業の成否を分ける最大のポイントだと思います。拙稿「学習目標は解くべき課題で示す」でも申し上げた通り、「問い」は学習者にとって取り組むべき課題そのものです。問いのあり方について改めて考え、問いを軸に授業をどうデザインするか、発想とスキルを常にアップデートすることが求められています。 2018/12/20 公開の記事を再アップデートしました。 ❏ 問いの立て方で、学ば…

生徒が問いを立てる授業(導入から仕上げまで)

昨日の記事「教科書をコスパよく使う~適切な問いの付与」では、先生が用意した本時/単元の学びを俯瞰しうる問い(ターゲット設問)を軸に授業をデザインすることを提案しましたが、「問いを立てる」ことにも、学習者(生徒)を関わらせていきましょう。21世紀型能力の中核をなす「思考力」の構成要素には、問題発見力も含まれますので、観察をタスクに問題を見つけ出す力を育む場(指導と評価)を用意する必要があるのは言うま…

教科書をコスパよく使う~適切な問いの付与

授業デザインを考えるときに最も重要なのは「どんな問いを立てるか」であると考えます。教科書という「食材」もそのままかじったのでは、美味しく調いません。そもそも、生のままではお腹をこわすかも…教科書に範囲を設けて適切な問いを立てれば、情報を集め、知に編むのにも軸が持て、調べる/考える/話し合うなどの行動も活性化します。さらにその「問い」が、生徒にとって自分事、答えを出すべき問題と認識できるものなら、「…

ボールを投げるのはミットを構えさせてから

相手にボールを投げようとするときには、相手がミットを構えているかを確認するもの。少なくともこちらを見ているかどうか確かめているはずですが、普段の指導の中で同じことが徹底できているでしょうか。大事なことを伝える前に、前振りもせず、問題意識や関心を刺激しておかなかったら、伝えたことは生徒の意識をすり抜けてしまい、受け取ってもらえません。あたかも、投げられたことにすら気づいてもらえなかったボールが、グラ…

生徒が持つ知識/イメージを把握してから学びをスタート

新しいことを学ばせるときは、「これから学ぶこと」について、生徒がこれまでの(教室に限らず生活のすべてを含む)学習を通し、何をどこまで知り、どう捉えているかを把握しておくことはとても大切です。生徒が既に知っていること/イメージできていることと、授業を経て形成を図る「十分で正しい理解」との差分を埋めることが、本時の指導で達成すべきことである以上、学びのスタートで生徒がどこにいるのかを把握することは、指…

予復習に課すタスクで”教室の学び”を最適化

教室でしかできない活動(課題解決に向けた協働など)の充実を図ることで、学びの実りはより大きくなります。授業評価アンケート(対象授業21074)のデータでも、学習効果を目的変数、活用機会と対話協働を説明変数とする重回帰分析の決定係数は0.698と大きな値を示します。この数字は、伝達スキルや、学びの準備と仕上げへの取り組ませ方などに改善課題を残している授業も含んでのもの。これらが改善し、且つ、生徒の学…

指導法の比較と組み合わせで授業デザインの発想拡大

どの教科にも様々なスタイルの指導法があります。どれも、長年に亘る各地の先生方が重ねた創造的な工夫によって生み出された資産です。日々の授業では、先生方がそれぞれに磨いてきた指導法を実践されていることと拝察いたしますが、時には異なるアプローチからの授業改善にも目を向け、授業観の固定化を防ぎ、発想を拡充していきましょう。どんな指導法にも、期待できる効果と抱えがちな課題(メリット/デメリット)があるもの。…

道具が変わっても必要であり続けること(まとめ)

ICTの導入が進み、教室で使えるサービスやアプリもどんどん増えてきました。学ばせ方の可能性が大きく膨らみ、生徒に獲得させることができる能力・資質はさらに幅広いものになったということです。別稿「新しい道具は、思考法や行動様式も変える」で書いたことと通底しますが、「道具の使い方を含めての課題解決力」です。新しい道具を使った様々なチャレンジの場を学びの中に整えていく必要があります。さらにChatGPTの…

教科の枠を超えて「学び」を語るために

以前に増して「思考させる授業」や「探究的な学び」が求められる中、私たちが目指すべきは、単なる知識伝達を超えた授業デザインです。探究活動やPBLに取り組む機会が増える中、狙いの中心に据えるべき対象は、単元固有の知識や理解の形成と並行して(=それを手段に)獲得を目指す「さまざまな能力や資質」へと変わってきています。 各学校が打ち出している「特色ある教育活動」もまた、既存の教科の学びに「後付け」しただけ…

教材としての好適性~「問い」の性能評価

どんな問いを授業の軸にするかで生徒が学べるものは異なり、問いの周辺にどんな学習活動を配列するか(=授業をデザインするか)で、獲得できる能力や資質も違ったものになるのは、別稿でも書いた通りです。 別の見方をすれば、様々な問いの一つひとつには、授業デザインの軸にどこまでなり得るものか、資質のようなものがあるということです。その評価を授業者の「感覚」だけに依らずに、ある程度の根拠を持って行えるようになる…

授業内活動のあれこれ(その1)

思考力や判断力、表現力を高める上では言うまでもなく、知識の定着を図るにも、理解を深く確かなものにするにも学習者自らが活動する必要があります。どれだけ丁寧に教えても覚えるのは生徒ですし、習ったことを使ってみてこそ、道具としての知識に意味の拡張が図られます。知識の獲得・拡充を図る場面でも、自ら調べて情報を集め、知識に編む練習をさせなければ、いつまでたっても教わること以外に学ぶすべを知らないままです。課…

問いをテーマに授業を考える(まとめページ)

どんな問いを立てて授業をデザインするか(学習活動を配列するか)で生徒がそこで学べるもの/獲得できるものはまったく違ってきます。新課程への移行で学力観が大きく変わった今、 「生徒に何を問い、何を考えさせるか」 「授業の中で問いをどう使うか」 は、改めてじっくりと考えてみる必要があるのではないでしょうか。こうした考え方に基づいてこれまでに起こしてきた拙稿を一覧にまとめてみました。お時間の許すときにご高…

学びの場での「問いの活かし方」

学びの過程で「問い」が担う役割は極めて大きいものです。「思考」は問いに触れて初めて発動するものであり、適切な問いが設定されないところでは、思考力を鍛えることも評価することもできません。深い(=思考を十分に掘り下げた)学びの実現にも、問いを重ねることが不可欠。「学びの深さ」はどれだけ問いを重ねたかで決まります。また、単元の導入からまとめ(次に向けた新たな起点)に至るフェイズのすべてで、問いはそれぞれ…