活動の配列/授業デザイン

授業内活動のあれこれ(その1)

思考力や判断力、表現力を高める上では言うまでもなく、知識の定着を図るにも、理解を深く確かなものにするにも学習者自らが活動する必要があります。どれだけ丁寧に教えても覚えるのは生徒ですし、習ったことを使ってみてこそ、道具としての知識に意味の拡張が図られます。知識の獲得・拡充を図る場面でも、自ら調べて情報を集め、知識に編む練習をさせなければ、いつまでたっても教わること以外に学ぶすべを知らないままです。課…

活動の配列/授業デザイン

1 問いを軸に授業を設計~学習活動の適切な配列 1.1 教室でしかできない学びを充実~問いを軸に授業を設計 ★ ・学びの場での「問いの活かし方」 New! ・目標理解と活用機会を整える授業デザイン (まとめページ)問いをテーマに授業を考える Updated!1.2 確かな学力を獲得させるための「学習活動の適切な配列」 ★1.3 授業を通して21世紀型能力は育めているか ・資料を与えて読ませる/探さ…

問いをテーマに授業を考える(まとめページ)

どんな問いを立てて授業をデザインするか(学習活動を配列するか)で生徒がそこで学べるもの/獲得できるものはまったく違ってきます。新課程への移行で学力観が大きく変わった今、 「生徒に何を問い、何を考えさせるか」 「授業の中で問いをどう使うか」 は、改めてじっくりと考えてみる必要があるのではないでしょうか。こうした考え方に基づいてこれまでに起こしてきた拙稿を一覧にまとめてみました。お時間の許すときにご高…

学びの場での「問いの活かし方」

学びの過程で「問い」が担う役割は極めて大きいものです。「思考」は問いに触れて初めて発動するものであり、適切な問いが設定されないところでは、思考力を鍛えることも評価することもできません。深い(=思考を十分に掘り下げた)学びの実現にも、問いを重ねることが不可欠。「学びの深さ」はどれだけ問いを重ねたかで決まります。また、単元の導入からまとめ(次に向けた新たな起点)に至るフェイズのすべてで、問いはそれぞれ…

新しい学力観の下での授業デザイン(記事まとめ)

新課程への移行に伴い、パフォーマンスモデルからコンピテンシーモデルへ、学力観の更新が加速しています。大学入学共通テストや各大学の個別入試でも新しい学力観を反映した「意欲的な出題」が見られます。目指すところは、大学進学者のみならず、全ての生徒が卒業後に正しい選択を重ね、より良く生きるための基盤となる「学力」の形成です。基礎力という言葉ひとつとっても、それが指すのは従来の「単元の内容を構成する、中心的…

学びの個別化と授業者に課される役割の変化

昨日(8月26日)の朝刊に、今春に本格導入となったデジタル教科書で教室に起きた変化を紹介する記事が載っていました。(デジタル教科書使うほど「主体的学習」に、授業が課題)生徒がそれぞれ自分のペースとやり方で勉強を進められ、学びの成果や過程を端末を通じてシェアできることは「主体的・対話的で深い学び」の実現を容易にすると同時に「学びの個別化」も加速していきます。最初の利点(自分のペースと方法)で、説明を…

学力層に応じた「指導の力点」

クラスの中には様々な学力(獲得済みの結果学力のみならず、学ぶ意欲も含む)の生徒がいますが、学力層ごとに、指導の力点/獲得させるべき能力や資質の「重みづけ」には違いがあって然るべきかと思います。各単元の内容を学ばせながら、様々な能力や資質(21世紀型能力で言えば、基礎力、思考力、実践力を構成する要素群)を獲得させるのはどの層でも同じですが、卒業後の人生で引き受ける「主たる役割」によって、各要素の獲得…

大きな問いに挑ませるとき~問いの分割と準備の学習

与えられた問題が大きすぎて、どこから手を付けていいものやら見当もつかないときがあります。そのまま何の手立ても打たず、問題の加工もせずに教室に持ち込んで生徒に挑ませたとしたら、生徒の手と頭は止まったまま、貴重な時間を失います。下手をすれば「わからない、できない、手に負えない」という印象だけを残すことにもなりかねません。別稿「入試問題を授業の教材に使うときに」でも申し上げましたが、こうした場合、いくつ…

大学入学共通テストの出題研究で持つべき視点

大学入学共通テストから一週間あまりが経過しました。出題分析を終えて、次年度以降の指導の計画を描き始めておられることと存じます。生徒の進路希望を実現する授業を目指すには、当然ながら、テストへの対策(≒どう学ばせ、解かせるか)を考える必要もありますが、先ずは個々の問題がどんな学力を測っているか正しく捉えるところからです。入学者選抜という場でわざわざ課した以上、その問題が測定している力は、進学後の学修を…

伝達スキルと授業デザイン

新しい学力観に沿った学ばせ方を実現し、生きる力としての能力や資質を育むためには、獲得した知識や技能を活きて働かせる(=活用する)機会や、対話や協働などの学習活動をきちんと配列した授業デザインが不可欠なのは言うまでもありません。(cf. 活動の配列/授業デザイン)しかしながら、その一方では、伝わりやすい話し方、指示や説明の組み立て、効果的な板書といった「伝達スキル」の完成度が、授業の成否を大きく分け…

活動を配列するときに考えるべきこと #INDEX

主体的・対話的で深い学びの視点での授業改善が図られる中、各地で授業を拝見していても実に様々な活動が授業の中に組み込まれています。途切れることなく配列されたアクティビティに、生徒がノンストップで取り組んでいる光景もすでに珍しいものではありません。しかし、多彩なアクティビティの中で生徒同士の対話が増え、活動性が高まっても、それが主体的で深い学びになっているかどうかは、また別の話ではないでしょうか。学習…

活動を配列するときに考えるべきこと(その4)

個人で取り組ませる活動、教室外に設ける活動 授業内外に配列する学習活動には様々なものがありますが、いくつかの分類軸を設けてみると整理がつきやすく、すべての活動について配列上の考慮を十分に巡らせているかの点検に抜け落ちを減らせます。ひとつめは「個人で行うか、ペアやグループで行うか」での分類です。個々に行う活動というと、練習や問題演習がすぐに思い浮かびますが、教科書や資料を読むことにも、基礎力(言語、…

活動を配列するときに考えるべきこと(その3)

活動を通じて目指すはコンピテンシーの増大 授業内にアクティビティ(活動)をどのように配列するかを考えるときには、その前に「できるようにさせたいこと」(到達目標)をはっきりさせておくことが大切です。ここでの到達目標には、学習内容の理解だけではなく、内容(コンテンツ)を学ぶことで獲得する能力や資質(コンピテンシー)、加えて学びの姿勢と方法なども含まれるはずです。目標をしっかり見据えて、その達成に必要な…

活動を配列するときに考えるべきこと(その2)

チェックポイントを意識した練習や作業 授業中に配列する活動は、くれぐれも自己目的化させないようにしたいもの。漫然と活動したところで成果は大きくならず、目的を達成できたとの実感を得なければ次へのモチベーションも生まれません。活動の一つひとつに目的意識を持ち込ませるというのは、「できるようになること/気を付けるべきこと(チェックポイント)」をあらかじめ生徒にしっかりと認識させることにほかなりません。チ…

活動を配列するときに考えるべきこと(その1)

活動の一つひとつに目的を持たせる 主体的・対話的で深い学びの視点での授業改善が図られる中、各地での授業を拝見していても様々な活動が授業の中に組み込まれるようになりました。途切れることなく配列されたアクティビティにノンストップで生徒が取り組んでいる光景もすでに珍しいものではありません。しかし、活動性が十分に高まっていても、それが主体的な学びになっているか、深い学びになっているかはまた別の話のようにも…

宿題を課すときに(再考)

先週末から、朝日新聞で「宿題が終わらない」と題する連載がありました。新課程への移行による学習観の変化や、一人一台の端末が普及したことなどで、新たなタイプの宿題が増えたことが、生徒一人ひとりの学びに様々な形で、好ましくない影響を及ぼしている様子が窺えます。 連載「宿題が終わらない」:朝日新聞デジタル (asahi.com) ❏ 新しい学力観に応じたタスクを加えるだけでは… 各単元の学習内容を学ぶこと…

基礎力不足の生徒にどう学ばせるか

当たり前のことですが、どの教科の学習指導を行うときも、「基礎」が固まっていない生徒がその先に学びを進めるのは容易ではありません。新しい単元を学ばせようにも、関連する既習単元の内容を理解していない/知識として定着していないのでは、それらを土台とする新たな知を積み上げることはできず、勢い、復習や学び直しに終始しがちです。こうした状況を前に、基礎が身についていない生徒に教えるとき、「わかりやすさ」「ポイ…

入試問題の「長文化」を指導者としてどう考えるか

大学入学共通テストをはじめ、大学入試、高校入試の「長文化」が話題になることが少なくありません。問題冊子のページ数はますます増え、本文や資料、設問文、選択肢を合わせると膨大な文字数になり、これに図版やデータも加わり、読み通すだけでも大変です。こうした出題傾向の変化(いわゆる「読解力重視の方向性」)がどこから来たのか、改めてしっかり考えてみる必要もありそうです。本当の狙いを曖昧にしたまま、生徒に読解ス…

問いそのものを深化、拡張する練習の場

授業を受けている中でも、日々の生活の中でも、何かしら疑問が思い浮かぶことがありますが、多くの場合、スマホでググってちょこっと調べてみたりするところに止まるのではないでしょうか。ときには何の行動も取らず、そのまま放置してしまうことも少なくないかと思います。疑問が逼迫したものでなければ、それでも実害はないかと思いますが、そこに潜む問題の実態を探り、その解決策を考え出していく力(姿勢と方法)を獲得するチ…

観察をタスクに「問題発見力」を育てる

21世紀型能力(現行学習指導要領の土台)の中核をなす「思考力」の構成要素の一つに「問題発見力」がありますが、問題を見つけるには、まずは「対象をじっくりと/精緻に観察」することが欠かせません。 グラフやデータテーブルは言うまでもなく、写真や動画、絵画や図版、文章で書かれた資料なども「観察」の対象になりますが、生徒一人ひとりにこうした対象をきちんと観察させる機会は十分でしょうか。 ❏ 問題は「観察」し…