緊急事態宣言を受けて休校措置が続く中、教育活動をストップさせないために様々な取り組みがなされています。教科学習指導においても、
- zoomをはじめとするコラボレーションツールを活用した双方向授業
- YouTubeでの授業動画配信など普段の授業に近づけようとする試み
- 宿題を与えて自習させ、期限までに提出させる長期休みと同じ手法
といった様々な方法が見られますが、「深く確かな学び」の実現可能性において学校間などで小さからぬ差が生じているように思われます。
言うまでもありませんが、ICTを自在に活用できる環境にあればそれだけ様々な学びを実現できる可能性が広がります。しかしながら、指導の成果である「生徒の学びの質と量(広さと深さ)」を決定するのは、こうした設備・環境の整備状況だけではありません。
生徒に指示を届ける方法が学校ホームページや公式ツイッターくらいしかないという学校でも、先生個々の工夫で普段と同等以上の指導効果が上がっているであろうと推測されるケースも多々存在します。
普段の授業でも同じですが、単に知識と理解を教え込んで獲得させるだけでは、それらが生きて働き、思考力・判断力・表現力として発揮されるとは限りませんし、丁寧に教えるだけで生徒が学習方策を獲得し、学習者としての自立に向かう保証もありません。
ICT環境の整備には相応の費用に加え、かなりの時間が掛かります。しかしながら、利用可能な環境の下でどんな授業を設計するかは授業者の発想しだい。明日の授業から変えることだってできるはずです。
せっかく生徒がPCやタブレットを所持して通信環境もばっちりというのに解説動画をじっと視聴させているだけでは、効果的な問いを用意して教科書や副教材を学ばせ、限られた環境でも教え合いや相互啓発を働かせる工夫をした授業に学びの成果で敵わないのではないでしょうか。
様々な制約の中、普段通りの授業ができない今だからこそ、あらん限りの知恵を使って生徒の学びを最大化する工夫を重ねるべきですし、その中で得た知見や発想は、新型コロナ感染症を克服して日常を取り戻した教室での学びにも大きな質的変化をもたらすはずです。
整った環境を作り上げ、高いリタラシーと広く深い視野と知見を備えた各地の先生方による先進的な実践には目を見張るものがあります。しかしながら、限られた環境でも、以下の拙稿でご紹介/ご提案したように先生方の発想と工夫で実現可能なことは多々あります。
休校期間中の自学自習をより確かなものにするために
- ユニットごとに明確な到達目標(=解くべき課題)
- 必達課題、上位課題、挑戦課題で複線的ゴール
- 見通しをもって学びに向かわせる
- 目が届かないからこそ、振り返りの結果を把握
- 読んで理解し、思考を表現する要素を備えた課題
- 日頃の授業で「自力で学ぶ力」を養っておく必要性
- リモート環境でいかに「対話的な学び」を作るか
- 対話の拡充を図ることで目的とするところ
- 文字を介した間接的な対話
- どうしても自力で解明できないことは友達や先生に
- それぞれが作った答えをシェアして
- 答えが一つに決まらない問いに取り組ませる手順
- 問いの答えや課題へのアプローチを生徒一人ひとりが考える
- 一定の時間を経たら各自の考えをシェア(個人ワークも継続)
- 発想が十分に広がったところで整理に臨む
- 整理した結果を出し合い、互いに見比べてみる
- 構造化し整理をつけた問題に対するアプローチを言語化
- グループ化し正体を明らかにした問題について調べ学習
- 不便な環境だから効果的に鍛えられる資質とスキル
- 1回の授業で完結させる必要はない
- これまでの学ばせ方に起因する問題点
- 教科書で学ばせる鍵はターゲット設問の付与
- 学びに向かうエネルギーを補給し続ける
- 休校というピンチを利し、学習者として自立させる
- 直接的に観察の機会が乏しい中での生徒の学び
- 初めての取り組みだからこそしっかり効果測定
- Googleフォームなどの汎用プラットフォームを活用すれば
記事追加
「生徒を教室に集められずに苦肉の策としてオンライン学習を試してみたところ、教室以上に対話的な学びの実現が進んだ」というお話も方々で伺いました。より良い授業を目指した努力が実を結び、手応えを感じ取った先生方はさらに工夫を加速させます。
一方、できない理由に囚われて現状に止まっては一歩も先に進めず差は開くばかりです。まずは一歩踏み出してみることが大事だと思います。やり方がわからないことも多々あろうかと思いますが、先行した先生方に相談してみれば喜んで教えてくれるのではないでしょうか。
教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一