日々の教育活動の中で、常に意識に持ち続けるべきは、「どんな人材を育てようとしているのか」という問いだと思います。学校が教育目標として掲げ、入学してくる生徒たちに約束したことや、分掌、学年、教科という三つの立場での自分のミッションを自覚できていることが、個々の場面でもブレのない指導を実現するのではないでしょうか。
どんな人材を育てるかという問いに答えるためには、生徒が生きていくのがどんな時代かの見極めが土台になるのではないかと思います。
これまでに起こした拙稿から、関連する記事をまとめてみました。
併せてジャンル別記事インデックス”学ぶ理由/自立した学習者“にサブテーマをひとつ設けました。
お時間の許すときにご高覧いただければ光栄です。
生徒一人ひとりについて、本人の資質や志向に見合った進路を見つけさせ、それを実現させることは高校の大切な役割ですが、高校は上級学校などに進むためのステップボードではありません。「人は高校時代が9割」という仮説もあるそうです。高校で身につけたものを土台にその先の学習や研究、活動が行われる以上、高校で何を身につけたかは、その生徒が卒業後にどんな成長を遂げ、どんな人物に育っていくかを大きく左右するはずです。
生徒や学生にアンケートなどで授業の感想を聞くと、「正解をちゃんと言ってもらいたい」という声がちらほらと聞こえます。先生はある意図をもって、敢えて正解を示していないのが傍から見ていても明らかな場合にもです。答えは与えられるものではなく、自分で作るものという発想を持てる生徒・学生ばかりではなさそうです。正解を教えてもらうのが最も効率的な学び方という意識をどこかで植え付けてしまったのかも知れません。
社会の変化が加速し、新たな知見が生み出されるスピードが格段に上がる中、勉強して覚えた知識がわずかな期間で通用しなくなることも増えてくるかもしれませんが、勉強する中で身につけた「学び方」 や「考え方」 は場面を変えても役立つもの。そう考えてくると、教科固有の知識や技能を学ぶことは、それ自体が「目的」ではなく、学び方・考え方を身につけるための「手段」でもあると捉えた方が、今の時代には馴染むような気がします。
日々の教育活動の中で生じた課題の解決を図ろうとするとき、あるいは新課程の対応などで従来のやり方を変更しようとするときに気をつけなければならないのは、部分を最適化しようとして全体のバランスを崩さないようにすることです。大きな変革を迎え、あちこち修正の手を入れていく前に、「本校が実現を目指している教育は何か」「どんな人材を育てようとしているのかという問いに、教職員が一つの答えを共有しておきましょう。
第3期教育振興基本計画の策定に向けた基本的な考え方には「夢と自信を持ち」「可能性に挑戦する」「社会の持続的な発展を牽引」といった文言が並びます。その理念には反対する理由こそ見つからないものの、実現への具体的な方策は容易にイメージできません。様々な学校が意欲的な取り組みを始めており、探究型学習や課題研究、国際交流や地域連携などでこの課題に応えようしていますが、実態には解決すべき問題も少なくありません。
■ ご参考記事:
教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一