学校広報の充実を図るには、校内各所から情報を集め、届ける先ごとのニーズと関心に沿った編集ができる「校内記者」の存在がカギになるのではないかと考えています。
分掌、学年、教科といった先生方の組織に加えて、部活動や委員会など生徒の「組織」もそれぞれ活動していますが、その情報がきちんと共有され、戦略的に発信されている学校は多くなさそうです。
情報を掘り起こし校内外のステークホルダーに届けることをミッションとした組織/チームの創設と、そのスキルを備えた校内記者を育成することが必要かもしれません。
2018/03/20 公開の記事をアップデートしました。
❏ 生徒募集で伝えるべき情報が埋もれたままでは…
生徒募集には、学校の魅力を十分に伝えることが欠かせませんが、教育活動の充実や生徒の活躍に関する情報が、それぞれの組織の中に閉じてしまっては、発信に繋ぐことができません。
プロジェクトチームが企画と運用に当たっている「特色ある教育活動」についてすら、学校ホームページの該当ページが、半年、1年と放置されているケースが少なくありません。
学校ホームページを手軽に更新できる仕組みに変えたり、SNSに組織別のアカウントを設けたりして、各組織が発信できるようにした学校でも、発信される密度や発信への意欲は組織によってまちまちです。
容易に発信ができる環境にあることと、発信への強い動機を持つことは全くの別物ということでしょう。
コースの新設や進学実績といったわかりやすい部分は外に伝えられていても、日々の教育活動で大切にされていることや、指導機会ごとの生徒の成長、授業改善の様子などは、ホームページを見ても想像するしかない/想像すらできないケースが多々あります。
❏ 校内に埋もれる情報を掘り起こすスペシャリストを
学校広報を専門に、分掌、学年、教科から情報を集める「取材と編集」ができる人材が必要だと思います。
校務が既にパンパンで、広報に人材を出すのは難しいと感じるかと思いますが、各組織本来の業務と並行して、広報にも意識と手間を向けるより、その部分をスキルに勝る専任チームに任せてしまった方が、トータルでの効率に勝るかもしれません。
各組織の予定表や議事録を提出してもらい、校内外に伝える価値がありそうなことを見つけたら、それぞれの担当者に聴き取りを行います。
取材される側にとっても、自組織の活動を校内でより良く知ってもらうことは、理解者と協力者を得ることにも繋がり、メリットは大です。
取材で集めた情報は、教職員間で共有すべきもの、生徒・保護者に伝えるもの、生徒募集に使うべきものなどに分類・整理して、それぞれ編んでいきます。
PTAや同窓会に対する「プレス発表」も期待されているところです。
広報担当の組織の仕事は、外に向けた発信だけでなく、内に埋もれている情報の「発掘」にもあるはずです。
❏ 生徒会活動の広報は生徒によって行わせる
部活動や生徒会については、新聞部や放送部、マスコミ研究会などの生徒に記者として活躍する場を与えることもできるはずです。
自校の魅力を外に伝え、各部や委員会の活躍を校内に知らしめることでより良い学校づくりに貢献するというミッションには食いついてくれる生徒もいそうです。
そうした活動を通じてパブリックリレーションズやコミュニケーションに興味を持ち、より深く、本格的に学んでみようと考え、その中に進路希望を見いだす生徒も現れてくるかもしれません。
もちろん、好き放題に発信されたらとんでもないことになる可能性もありますから、発信の直前にはきちんとフィルターをかけましょう。
言ってみれば、編集部の「デスク」です。広報担当の先生と生徒会担当の先生が協力してその任に当たるのが良さそうです。
ホームページやパンフレットのデザインも、発信するべき内容があってのもの。コアメッセージと周辺情報の構造を深く理解してこそ、レイアウトやデザインも決められます。
編集プロダクションを選ぶときは、デザインのセンスにばかり注目せず、記者・エディターとしての力量も見極めるようにしましょう。
教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一