表現は多少違っても、「第一志望を諦めさせない」「進路希望を堅持させる」ことを指導目標に掲げているケースは少なくありません。
目標とした以上、どこまで達成できたか確認は行うべきですし、継承・共有すべき指導法の所在を特定するには、成果を定量的に捉える必要もあるはずです。
❏ 最後まであきらめずに挑んだ生徒はどのくらいいたか
最終的に合格できたかどうかは、大学入試が選抜試験という競争の場である以上、「諦めずに頑張ったかどうか」とは別の要素を含みます。
むしろ、第一志望として出願したか(=受験したか)どうかを指標とするのでも良いのではないかと思います。
挑まずに諦めた場合と、結果はどうあれ本気で挑んだ場合とでは、後に残るものも違うはずです。(cf. 受験期は、またとない成長の好機)
❏ 最終的な第一志望を意識しはじめた時期
合否の結果は別にして、生徒が最終的な第一志望として出願した大学・学部をどの時期から進路の選択肢(出願先)として意識していたか調べてみると、「第一志望をあきらめない指導」がどのくらい機能していたのか測る指標が得られます。
昨年度のことですが、如上の調査をお手伝いした学校では、データの整理を行って以下のようなグラフを作成しました。
❏ 指導のあり方で、頑張った期間が大きく異なる
同一学年でもクラス間でグラフの形は全く違いますし、学年間でも同様です。
第一志望を目指して生徒が頑張り続けた期間が長いクラスでどんな雰囲気づくりを行ったかなど、共有・抽出すべきノウハウの所在を探すのに役立ちました。
ちなみに、進路希望を作るまでの活動を確かめるでも書いた通り、進路希望を具体化していくには段階性がありますし、早すぎる選択は、将来を見渡す視野を狭めかねませんので、早ければ良いという単純な話でもありません。
どの時期に第一志望を設定させるかは、進路指導計画を立てるときに想定しておくべきだと思います。
❏ まずは、受験結果報告や志望校調査からデータを集める
調べ方(データの集め方)としては、受験結果報告を提出してもらうときに、各受験校の志望順位とあわせて、
- 進路の選択肢として初めて意識した時期はいつか
- 受験しようと具体的に意識した時期は何年の何月のことか
を書いてもらうのが直接的なやり方です。
生徒カルテが整っているのであれば、それまでの進路希望調査の結果を辿ることもできるかもしれません。
意識したのと表明した時期とではタイムラグが生じますし、進路希望調査の実施間隔が「最小目盛り」ですから、それ以上の細かい把握はできませんが、それでも、ある程度までは状況の把握ができそうです。
模擬試験を受験するときに書いた志望校群を追跡することでも、データを取得することは可能です。
❏ 志望校/希望進路の変遷を一覧にまとめてみる
各時期における志望/希望校(大学・学部)のデータが集まったら、横軸に時期を、縦軸に志望順位で下表の形にまとめてしまいましょう。
この生徒は、終盤になって第一志望をあきらめてしまったようですね。
また、国公立大への進学を夢見ていたのが、3年時の履修科目を選択する2年生11月で私大志望に切り替えていることもわかります。
なぜ、諦めなければならなかったのか理由を明らかにできれば、その前にどんなことができたか/何をさせれば良かったかも考えられます。
ここで得られた知見を蓄積していくことが、次年度以降の指導を改善していく前提であると考えます。
❏ 技術的な工夫しだいでデータの加工は容易になる
如上のグラフや表を作るのは面倒にお感じになるかもしれませんが、様式さえ決めれば、あとは技術的な工夫で自動化/省力化ができます。
例えば、最終的に第一志望として出願した大学が、初めてデータに現れた時期を探すのは、セルに条件付き書式を設定すれば簡単です。
エクセルに実装されている「色フィルター」機能を用いたり、countif関数やsubtotal関数を用いて、目標状態に到達した生徒の割合(目標到達率)も手間数をかけずに数値化できます。
また、詳しくは別の機会にしますが、この表さえできてしまえば、前出のグラフを作成するのも、ほぼ完全な自動化が可能です。
進路希望調査の結果や模試で書いた志望校をデータとして集めるところは手間もかかり、如上の取り組みを始めるときの最初のハードルです。
学校内では様々な調査をいろんな場面でやっていますが、集積されていなければデータとしての活用はできません。
分散していたデータを集約・整理するのは面倒だと思いますが、仕組みを整えさえすれば、様々な用途にデータを使えるようになるはずです。
教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一