各地で行われる研究授業を拝見する中、協働学習やアクティビティなど授業内での生徒の活動性が、以前とは比較にならないほど高まっていることを実感します。
その一方で、活動性が、「深い学び、対話的な学び、主体的な学び」 に直結し、思考力・判断力・表現力の向上やコンピテンシーとしての学力形成に直接的に寄与しているかというと、一定の疑問も残ります。
そんな疑問を起点に、データを検証してみると、「個々の活動に生徒が自分の課題と目的意識を持っているかどうかが学びの成果に結びつくかを分ける」ことも明らかになりました。
何のために活動をさせるのかを教える側が明確に認識していなければ、成果につながる活動に近づく継続的な改善が重ねられないことを、一連の記事を起こしながら、改めて強く感じています。
授業を通じた学習者の活動量は格段に高まっているが、…
全員が揃ってきれいに反応できることには違和感も
最初からタスクをこなせていた生徒の成長はどこに?
戸惑いを、周囲のコピーと反復でクリアした生徒も
振り返りも形骸化していないか?
これらの問題点にどう対処していくべきか
目標理解、活用機会、授業内活動は学習効果と高相関
重回帰分析で影響度を探ると“学習目標の理解”が最上位
生徒は解くべき課題を通じて学習目標を認識する
アウトプットを通じて“自分の課題を設定させる”
課題解決学習と能動的・協働的学習を組み合わせる
授業における学習者の活動性を高めることは目的ではなく、別の目的を達成するための手段です。個々の活動の狙い、目指しているものをきちんと切り分けするところから、活動の妥当性を点検し、さらなる工夫の余地がないかを考えていく必要があるのではないでしょうか。
- 生徒の頭の中を覗く「観察の窓」を開く
- 他の生徒の意見や考えに触れさせて相互啓発を働かせる
- 学習方策や知識の不足を生徒が相互に補完する
- 知識や経験を交換することでの発想の拡充を図る
- 活動課題に取り組む中で使用機会を自然に増やし習熟を促す
- 生徒一人ひとりに役割を持たせることで能動的に関わらせる
これらについて、以下の記事で考えるところをまとめてみました。
観察が足りなければ、活動させた意味は半減する
異なる意見や考えに触れて相対化&相互啓発
ちょっとした隙間を作り、自助・互助に使わせる
知識や経験の持ち寄りで得られるものの大きさを知る
別の目的を達成しようとする中で、意識せずに学びに集中
役割を持たせることが、失敗を恐れる気持ちを超える動機に
追記。
優れた実践における授業者行動を表層的に真似ても、うまくいく保証はありません。
教室の盛り上がりを目にして「よし、自分の教室でも」 と試してみるのは結構ですが、何を目指してのものなのか、方法を目的と結び付けて評価しないと、「生徒にとっての学びを最大化する」 ことから遠ざかるリスクもありそうです。
方法を学ぼうとする前には、その背後にある目的や狙いは何か、根源的なところに一度立ち戻る冷静さが必要なのだと思います。
授業研究の成果発表では、それまで積み上げてきた工夫と知恵に触れることができます。そこで起きていることをしっかり咀嚼し、消化しきったものを新たな形にして自分の授業におろしていけば、預かっている目の前の生徒により多くを還元できるはずです。
時には、異校種の教室も覗きたいものです。生徒がどんな学びを経験してきたか、卒業後はどんな学びに挑むのかを知っておけば、扱っている単元の内容を理解させるという当座の目的の先に目指すものが見えるような気がします。
教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一