授業中にメモを取る力は、深く確かな学びに欠かせないものであり、学びに関わる姿勢と方策の表れでもあります。他者の話を聴きながら(あるいは文章を読みながら)、自らしっかり考え、その痕跡を文字に残していくというのが学びの場におけるメモのあり方ではないでしょうか。
ある実験では、同じ講義を聞かせた場合に生徒がノートに残した文字数とそれぞれの生徒の学習効果との間には、統計的に有意な相関が見られました。板書を写す以外にどれだけノートにメモを残せたかが、学習の密度を示していると考えられます。
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話しを聞きながら記録する(メモに取る)ものには、大きく分けて2種類あります。一つは「相手(話し手)が発言したこと」。もう一つは「話を聴く中で自分が感じたこと、考えたこと」です。
前者なら、もし内容を忘れてしまっても、相手に尋ねてもう一度話をしてもらえば済む話ですが、後者はそうはいきません。短期記憶が飽和する前に、言語化して記録しないことには復元のすべがありません。
自分の中で生まれた気づき(感じたり、考えたりしたこと)は、その先の思考を広げていくための足掛かり、大切なアンカーであり、それを失っては発想はそこで止まり、その後の進展も期待できなくなります。
生徒がどんなノートを取っているかを観察すれば、個々の生徒が身につけている「学びの方策と姿勢」の把握も進みます。不足するものを把握しないことには、その後の指導も正しく設計できないはずです。
メモ用のスペースを作らせて
メモをとることの効果
何を書き込めば良いかを、実例の中で学ばせる
深く確かな学びに、メモを起こす力は不可欠
他人の発言ならば、メモに取らずとも何とかなるが…
自分の中に生まれたアイデアや思いは…
考えを書き留めることで、さらに広がる可能性
メモを取る力は、授業への集中力も高める
どんなノートを取れているか=どう学んでいるか
板書されたことすらきちんと写せない
板書を正確に書き写すことしかできない
ノートを汚さないよう、正解が確定するのを待つ生徒
ノートを取るスキルを確かめる(べき)機会
メモを取る姿勢とスキルは、特定の教科に閉じたものではなく、様々な場面で用いられる「汎用スキル」です。様々な教科・科目の授業で効果的なメモを取れるようにすることを共通の目標にして指導に臨むと、相乗効果も得られ生徒の進歩は大きく加速するように思われます。
一度抱いた疑問を放置せずきちんと解消していく姿勢を作るにも、タスクマネジメントのスキルを身につけさせるにも、ノートにメモを取らせる指導は大きな役割を担っています。
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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一