当オフィス監修の「生徒による授業評価アンケート」ではホームルームの様子や自分の成長などについて、生徒の意識を質すアンケート(生徒意識調査)をオプションで行える仕様になっています。
毎年、多くのデータが全国各地の学校から集まってきますが、「全国的にみると各項目の集計値(換算得点)の分布はどうなっているのか」とのお尋ねをいただくこともあり、改めて再集計を行ってみました。
各評価項目の質問文については、以下の拙稿をご参照ください。選択肢は「非常によくあてはまる」から「当てはまらない」の5つです。
質問は全部で10項目。そのうち前半の5つがホームルームの様子や担任の先生のご指導について、後半の5つが学校生活を通して実感する自分の成長や周囲との関係についてです。なお、追加の枠が2つありますので、学校独自の質問を加えることも可能です。
これまでに蓄積した回答を解析する中でわかってきたことは、記事に起こして、ジャンル別記事インデックス「学級経営、生徒意識の把握」にまとめてあります。お時間の許すときにご高覧ください。
❏ 全10項目の集計値分布(全国からのランダム抽出)
まずは、全項目の集計結果を調べてみました。ホームルームごとに算出して得点(満点=100、肯定的な回答が9割を占めると概ね75ポイントに到達)の分布です。中央値で降順ソートして左から並べました。
左端の「連絡の徹底」と右端の「行動選択」では、中央値に7ポイント近い差があり、「公平な指導」や「整理整頓」ではクラス間の差が大きく出ている様子が窺えます。
学校ごとに行う同様の集計でも、学年内/クラス間で大きな差が生じていることも多く、年度毎に箱の位置が上下するのも珍しくありません。
ホームルーム経営でも、各教科の学習指導と同様に、優れた実践(相対的に高い評価を得ているクラスでの指導)を可視化・共有し、改善が遅れたクラスのキャッチアップを支えていく必要があろうかと思います。
❏ ごく当たり前の「連絡の徹底」でも不徹底が散見される
全項目で最も高い評価を得ているのはQ01連絡の徹底「ホームルームを通じ、学校からの連絡はもれなく伝えられている」ですが、下方のひげは如上の75ポイントに届かないところまで伸びています。非表示とした「外れ値」を含むと分布の尾は相当な長さです。
ホームルームでの連絡は、次に控える学習の場(先生方からすると指導の場)に向けた準備を行わせるための活動であり、ここでの不徹底は、その後の指導を準備不足で迎えることを意味します。
積極的な肯定(「どちらかと言えば」との但し書きがつく肯定=選択肢Cを除く、A+Bのみ)が占める割合を調べてみた結果が下図です。
分布のピークは「積極的な回答が85%以上を占める」ところにありますが、70%を切るクラスも2割近く(19%)に及びます。
クラス担任の先生としては、「毎朝のSHRでちゃんと伝えているし、掲示や配布も確実に行っている」と思っていても、「学びの主体」たる生徒の側での認識が大きく異なっていることもしばしばのようです。
アンケートの結果を通じて、担当クラスの相対的な位置を確かめることは、改善課題を知ることのみならず、共有すべき優れた実践の所在を明らかにする上でも欠かせないことではないでしょうか。
❏ 改善策を講じるなら、強く相関する項目をセットで
ある評価項目で評価が相対的に低いようなら、改善策を講じてキャッチアップを図ることになりますが、その項目だけに着目して改善を図ろうとしても中々うまくいかないことがあります。
下表(相関行列:斜線の右上側が「単相関係数」、左下側が「偏相関係数」<外部リンクが開きます>、それぞれの上位25%に編み掛け)に見る通り、強い相関で結ばれた項目群がいくつか存在します。
例えば、クラス間の差が大きく出ていた、Q03公平な指導「担任の先生は、生徒の言い分によく耳を傾け、公平に接してくれる」は、Q02期待する行動「担任の先生が生徒にどんな行動を期待しているか、はっきり理解できる」と非常に強い相関で結ばれていることがわかります。
単相関係数だけでなく、他の項目に変動がない場合を想定した(=直接的な因果の強さを推定する)偏相関係数でも0.37という大きな値です。
生活、学習、進路などの各領域で、どうふるまってほしいか、どう成長を遂げてほしいかを「あらかじめ」しっかりと伝えておかないと、個々の指導に先生方が込めた意図を生徒は正しく理解できず、誤解から「不公平、不合理」を感じるケースも増えるはずです。
公平に接することだけでなく、その前提になる「期待する行動の明確な打ち出し、理解と共感が得られるだけの説明」を心掛けることで、改善に投じたエネルギーが着実に効果を結ぶことになると思います。
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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一