学習方策の獲得、学習の改善~データと考察

学びへの目的意識~データと考察(その1その2)と同じように、学習方策(科目の学び方や取り組み方の獲得)についても、直近に集まったデータを、教科×学年という切り口で集計し直してみました。
以下がその結果です。学習内容が高度化していく中、「自分が身に付けている学び方」に自信を失っていくと考えれば説明がつきそうなデータです。どの教科も最終学年で跳ね上がるのには、そこまでに学び方が身につかなかった科目は履修しなかっただけ、というのもありそうです。

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❏ 学習方策は、学習内容の高度化に伴い低下傾向

目的意識の場合とグラフの形はよく似ていますが、学習方策(学び方)に「中弛み」というのはピンときません。別の要因があるはずです。
実際、両項目の平均値を取り出し、折れ線グラフにして重ねてみると、教科によって「谷の深さ」や両項目の位置関係が微妙に違っています。


目的意識ではどの学年でも最も低かった国語は、学習方策でも低位であり、確固たる、効率的な学び方(文章との対話の仕方)はイメージしにくいのだろうと想像しますが、ビハインドの幅は小さめです。
数学や理科の「急降下」と比べたときに、右下がりのスロープも緩やかなのは「学習内容の高度化」がさほど顕著でないということでしょう。
別稿でも申し上げた通り、3/6年間の指導を計画するときには、学習内容の高度化、学びの変化に備えさせることを念頭に置きましょう。
学年間の円滑な学びの接続には、単元内容の確かな理解のみならず、学びのステージが進んだときのことを常に考えておく必要があります。

❏ 学ばせ方の違いでも、学習方策は影響を受ける

如上のグラフでは、社会/地歴公民も「特徴的な形」を示しています。高1での「底」向かう途中、中3で少しだけ回復(目的意識も同様)しています。学習内容の違いからの影響もあろうと思いますが、教室での学ばせ方の違いによる影響の方が大きいかもしれません。
下左図の通り、今回の再集計データに限れば、中2は「対話協働」(話し合いなどの協働で、気づきや学びの深まりが得られる)が低位です。


生徒が取り組む学習活動が乏しいということは、先生の話を聞いているだけの時間が長く、自分で何かにトライし、その成果と過程を振り返る中で「より良い学び」の方法を身に付ける機会も不足したはずです。
実際、上右図の通り、学習活動(対話協働+課題解決/知識活用)の充実度とⅨ学習方策は有意な正の相関を示します。さらに、きちんとした振り返りがなされれば、相関はさらに強固なものになり得ます。
学習活動の高度化に伴う、学習方策の低下(≒自分の学び方への自信の喪失)に、如上の要因が拍車を掛けたということではないでしょうか。

❏ 学習方策の獲得が遅れている疑いが見つかったら

目的意識のときと同じく、以下の質問と選択肢でアンケートを行ってみれば、少なくともご自身が担当しているクラスにおける「学習方策の獲得/学び方への自信」に関する生徒の認識は捉えられます。


観点別学習評価では、「学びに向かう姿勢」を、「粘り強く取り組む姿勢」と「自らの学びを調整しようとする姿勢」の2つの要素にわけて観察し、それらを統合して評価を行うことになっています。

指導と評価の一体化~実現のための発想転換(後編)より再掲


先生方の観察を通した評価と、アンケートを通じて把握した生徒の自己認識は必ずしも一致しているとは限りませんので、両者を定期的に突き合わせてみるのは、評価の精度と指導の効果を高める上で重要です。
さて、担当クラスを対象にアンケートを行ってみて、換算得点を算出してみた結果、冒頭の箱ひげ図に照らして、相対的に評価が低い(箱の下端に届かないなど)ということであれば、改善の手立てが必要です。
メタ認知、適応的学習力を高める指導は、生徒を学習者としての自立に向かわせます。生徒が取り組む学習活動(課題解決や対話協働)をしっかりと整えた上で、明確な基準(採点基準や行動評価のルーブリック)に照らした自己評価/振り返りにきちんと取り組ませましょう。
具体的なアクションについては、以下の拙稿(及び記事内のリンク先)が何かのご参考となれば、光栄に存じます。

教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一