より良い授業の実現を目指して、参加する先生方の気づきと智恵を交換する場が研究授業です。実施には小さからぬエネルギーが必要ですが、他には代えがたい、先生方にとって貴重な学びの機会です。
コストに見合った成果が得られるかどうかは、ファシリテーターを含む参加メンバーの構成に加えて、実施の方法によるところも大です。このシリーズでは、以下の6フェイズで構成する実施手順を提案します。
2017/10/30 公開の記事インデックスを更新しました。
1. 授業を観ながら参観メモを起こす
参観で得た気づきを言語化してみることの効果は小さくありません。気づきを大きく、考察を深くするには、参観メモの記入フォームにも工夫を込めたいところ。様式次第で観察と記述の方向が決まります。
2. 参観メモの回し読みから始める小グループでの協議
同じ授業を観ても、得られる気づきは、参観者それぞれのバックグランドにより様々です。気づきを交換することで発想の拡充/学びの深化が図れますが、このフェイズの効率化に役立つのがメモの回し読みです。
3. 学習効果を高める方法を仮説として考える
各グループでの協議では、参観授業に見出された意図や工夫を更なる効果につなげるための方法を考えます。この段階ではまだ仮説に過ぎず、自校に持ち帰って実地に検証して、共有すべき知見を確立しましょう。
4. 効果を確かめながらその向上策を考える
最大効果をもたらす方法を共有することは、参加者全員での授業力向上に繋がりますが、効果を比較するためにはその測定方法が不可欠です。どのような問いや課題が効果測定に適するのかも同時に考えましょう。
5. 宿題として持ち帰る課題を確認
研究授業の締めくくりは今日の参観で何を得たかの振り返りですが、大事なのはその成果を日々の授業の改善にどう活かすか。協議の中で見いだした「改善への仮説」を自教室に持ち帰り、検証していきましょう。
6. 次の機会に、改めて成果を持ち寄る
先生方それぞれが自分の現場に持ち帰り、取り組んでみた成果や新たに見出した課題などは次の機会に持ち寄って、再び共有を図りましょう。互いの成果の上に工夫を重ねてこそ、「巨人の肩」の上に立てます。
各フェイズのより具体的な手順/進め方については、本シリーズの各記事(以下)に考えるところをまとめました。お時間の許すときにご高覧いただければ幸いです。
効果の上がる研究授業、形だけで終わる研究授業
先ずは、参観者の間で気づきの交換&共有
それぞれ参観メモを起こして回し読み
成否を決めるのは参観メモのフォーマット
発表に備えてグループ討議の結果をまとめていく
グループ発表は、板書役を配してしっかり記録
授業の工夫がもたらした「効果」を検証する
獲得した知識・技能を測るのに好適な一問
その設問の正答率/得点率の分布を想定してみる
正答率をもう一段引き上げる工夫を考えてみる
研究授業の終了に当たり、次回に向けた宿題を選び出す
教室(自分の授業)に持ち帰り、仮説を検証する
宿題の成果を持ち寄り、さらなる「気づきの交換」へ
「授業法」以外にも研究の対象とすべきもの
・新しい学力観に合わせた考査問題の最適化
・知識や理解に生きて働く場を与える好適な問い
・出題研究を通した良問の発掘と蓄積&共有
【別稿追記】問いのあり方に焦点を置いた授業研究
如上の流れでの研究授業を想定した「ワークシート(案)」をこちらにご用意いたしました。もし、使えそうであれば、是非ともご活用ください。ご使用に際し、お断りのご連絡をいただく必要はありません。
このシリーズでご紹介した方法以外にも、やり方は様々です。
例えば、授業改善に向けて共通する課題・興味をお持ちの先生方がコミュニティを形成し、同じテーマに沿って継続的に研究を行いながら、集まる機会ごとに互いの成果を共有する形もみられます。
多忙な日々を縫って実行する以上、それぞれのコミュニティの置かれた環境に合わせた運用方式を模索していく必要がありますが、今回のご提案が何かのご参考になれば幸いです。
教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一