1学期もそろそろ折り返し。年度の冒頭で打ち出した「学校経営計画」はどこまで実行され、目標とした事柄は達成できそうでしょうか。
特に夏までに一定の成果を得たい、方向を固めたい取り組みについてはこの機に中間検証を行い、今後の展望を立て直しておくべきです。
当然ながら、目標達成に不安が残る箇所、計画通りに進めるのが難しそうな箇所には、達成可能性を高めるべく、効果的な対策が必要です。
2018/07/09 公開の記事を再アップデートしました。
❏ 1学期の進捗を確かめ、夏以降の課題を特定する
計画が順調に進み、期限までの目標達成が十分に見込めるようなら問題ありませんが、もし、取り組みに遅れが生じていたり、達成の見込みが立たなかったりするようであれば、何らかの手立てを講じるべきです。
ただ様子を観ていて状況が改善するのは稀ですし、分掌や学年、教科といった各組織が手詰まりを感じているのに何の支援も届かないようでは現場がモチベーションを維持できなくなることさえ懸念されます。
適切な時期に中間検証を行い、目標の達成を妨げる要因を取り除き、計画を練り直していきましょう。夏休みに入る前には「後はこのまま進めれば大丈夫!」というところまで持っていきたいところです。
秋になったら行事も目白押し。受験体制も整えなければならず、じっくり立ち止まって考える時間を現場が持つのは難しくなります。
また、多くの学校では11月から12月にかけて学校評価アンケートが行われますが、2学期を迎えたら「評価を受ける」までに残すところは数ヶ月。まとまった対策を打つ余裕がなくなっていくのは自明です。
❏ 目標への理解・共感、実現への方策とリソース
学校経営計画に記載した達成目標やその方策について、各組織/各教員がどこまで「理解」を深め、「共感」をもって達成に向けた「行動」を起こし、「目標の達成」を見込んでいるでしょうか。
管理職が打ち出したものに対して「理解」「共感」がないと、取り組みには熱がこもらず、与えられた業務をこなすだけになりがちです。
管理職が「大切だ」と思って打ち出した施策や取り組みも、その背後にある「何のために」という上位にある目標が深いところで共有されていないと、現場の先生方のコミットメントは期待できず、個々の行動は形骸化してしまうのではないでしょうか。
個々の教育活動や指導の先にあるゴールをしっかりと打ち出し、十分な理解や共感を得る努力を重ねた上で、ゴールに近づく具体的方法(計画や指導の内容)は現場の創意と工夫で考え出してもらい、その実行に必要なリソースを提供するのが、管理職に期待されるお仕事です。
現場が創意と工夫を重ねても、目標の達成が十分に見込める方法を考え出せずにいたり、工程を進める上で必要なリソース(人繰りや時間[工期/工数]、モノを揃える予算など)が不足したりしているのに、管理職がそれに気づかずにいたら、計画が実現に向かうはずもありません。
❏ 障害がどこにあるかを探るために行うアンケート
まずは、学校経営計画に記載した「本年度の取り組みと方策」の一つひとつに対する、現場の先生方の捉え方や取り組み状況、加えて現況への認識をアンケートなどで尋ねてみてはいかがでしょうか。
年度の冒頭に管理職から伝えた事柄に対しても、実際に動き始めてみて抱いた現場の感覚や見通しは、訊いてみなければわかりません。
ただし、訊くべきは最重要事項に絞りましょう。重点目標の下にもそれを実現するための具体的な施策は多岐に及び、組織ごとの担当業務まで落とし込むと、その数は膨大なものになるはず。
あれもこれも訊いたところで、答える側の負担も馬鹿にならず、尋ねた以上、寄せられた回答へのレスポンスという責任が生じます。追加でどれだけ動けるか、見通しを立てて訊く範囲を決めていくべきです。
- (施策の内容を)十分に理解している~まったく理解していない
- (意図するところに)強く共感できる~まったく共感できない
- (実現に向けて)積極的に行動している~特に何もしていない
- (所期の目標の)達成の見込みは十分~達成は難しいと思う
という4つのフェイズがそれぞれどの状態にあるか訊いてみると、主管の組織ですら後半2つに肯定的な答えを選べていないこともあります。
蛇足ながら、教育のデジタル化も進んできていますので、いちいちアンケート用紙を印刷し、配布、回収の手間をかけずとも、Googleフォームなどでアンケートを作り、電子メールなどで回答を依頼すれば、集計までの手間と工期は従来に比べて圧倒的に小さなものにできるはずです。
蛇足ながら、教育DXが叫ばれて久しい今、まずは管理職から、校務での活用の「モデル」を示していきたいところです。
❏ 処方を考えるのは、躓きがどこにあるか把握してから
集計結果を見て、各目標の達成に向けて現場の躓きがどこにあるか探ってから処方を考える、という手順が重要なのは言うまでもありません。
- 理解が進んでいないなら、会議や校内広報を通して再周知を図る
- 共感が進んでいないなら、エビデンスを示して説得する
- 行動がとれていないなら、アクションプランを作り直してもらう
- 見込みが描けないなら、方法を一緒に考える/作戦を立て直す
停滞の原因や解消すべき「障害」の所在が違うのに、同じ処方で押し切ろうとしても、うまく行くはずがありません。意図が理解されていないところで、アクションプランの再作成を求めたところで、当事者である先生方は白けてしまうだけだと思います。
通常であれば、1. 理解→2. 共感→3. 行動→4. 達成の順に肯定的な回答の割合が減っていくはずです。回答が否定寄りに傾き出すところが、手を打つべき要所ということになるはずです。
なお、かなり稀にですが、理解や共感より行動の方が肯定回答が多いという「異常」が検知されることもあります。同様に、行動が十分でないのに達成の見込みだけ高いというのも変ですよね。
各組織の現場に携わる先生方からじっくり話を聞くなど、回答にこうした「捻じれ/歪み」を生じさせている要因を特定し、解消を図るべく、各組織の状況や取り組みの様子の把握に努める必要があると思います。
❏ 担当組織以外の理解や共感は十分か?
全教職員に如上のアンケートを行ってみると、担当組織(分掌や学年、プロジェクトチームなど)のコミットメントは高くても、担当外の教員の理解や共感が得られていないということもあります。
実際の業務を進める上では、担当者/担当組織のコミットメントだけで十分とお考えになる向きもありますが、それ以外の先生方も不足のない関心を持ち、同じ方向を見ていてもらわなければ、先生方の間で発言や指導にムラや競合が生じる恐れがあります。
指導の企画は分掌やPTが担っても、実際の指導は学年団が行うのは普通のこと。目的や拘るべきポイントなどが前線で共有されていないと、意図した通りの指導は行われず、当然ながら成果は小さくなります。
他組織が取り組んでいることへの認識が不十分だと、意図せずに(何の悪気もなく)、生徒に「(他を指して)今はここを頑張るところだろ」といった声掛けをしてしまうことがあります。
発言者は全く意図していなくても、声を掛けられた生徒の側では「そんなこと(=他組織が企画している指導)よりも」という含意を想像してしまいます。選択を迫られた生徒は、結果的に、用意された学習や体験の機会にどっぷりとはまることができなくなることもあり得ます。
目線合わせは、指導にブレをもたらす最大の要因です。生徒の立場に視点を置けば、他の教員組織が取り組んでいることにも十分な認識と理解を持っているべきだということもご理解いただけるはずです。
各学年団の取り組みも、その学年だけに情報が閉じがちです。せっかく意欲的な指導がなされ、効果を上げているのに、次の学年団に何も引き継がれていないのではあまりにも勿体ない。
個々の先生が、すべての分掌・学年・教科の取り組みに自ら目を向け、必要な情報を集めるのでは負担が大きくなり過ぎです。
各組織が積極的に自らの取り組みの内容とそこに込めた意図、得られた成果と反省をしっかりと発信する「校内広報」に力を入れることが重要だと思います。それを促すこともまた、学校経営計画の達成可能性を高めていく上で大切なお仕事の一つではないでしょうか。
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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一