教科学習指導に限ったことではありませんが、「目標とするところ」と「目標に到達するための方法や計画」の間には高い整合性が必要です。両者の間のズレを放置しては、目標が達成される見込みも立ちません。
同時に、指導がどこまで成果を得たかを測定する評価方法も、学習目標にマッチしたものである必要があります。目標までの距離を正確に測れないことには、どうやって接近するか作戦も立てられないからです。
新課程への移行で教科学習指導の目標とその達成方法に変化が生じたからには、評価方法の中心にある定期考査においても出題の見直しと更新を行い、三者の一致を高い水準で実現していく必要があります。
2019/08/07 公開の記事をアップデートしました。
❏ 新しい学力観を反映した学ばせ方を実現したら
新課程への移行で、獲得を目指すべき学力は大きく変わってきました。
今年1月に行われた大学入学共通テストでは、2度の試行テストと同様に、「中高の授業はかくあるべき」とのメッセージが前面に打ち出されています。この点が、出題内容に「現場への配慮」が強く見られた従来のセンター試験とは大きな違いです。
別稿でも触れましたが、過日公開された令和7年度以降の大学入学共通テストのサンプル問題にも、その意図がはっきりと表れています。
こうした流れにあって、指導方法(教え方、学ばせ方)には様々な工夫が重ねられ、主体的、対話的で深い学びの実現が図られてきているように思いますが、定期考査などの評価方法はいかがでしょうか。
❏ 従来の出題のままでは、指導効果を正しく測れない
考査が、知識・技能と思考力・判断力・表現力をバランスよく測定できるものに転換が進んだか、この機にしっかり振り返ってみるべきです。
定期考査の問題が従来と変わらなければ、新しい学力観のもとでどれだけ学ばせ方の工夫をしても、その成果が考査の点数に反映できません。
先生方の側では、指導の効果を正確に把握できず、新しい手法がどこまで効果を得ているのか確かめられないということ。より良い授業の実現に向けてどこに手を入れれば良いのか判断ができなくなります。
生徒の側でも、普段の勉強とテスト勉強にそれぞれ別の捉え方で取り組まなければならないという「ダブルスタンダード」を強いられる上に、頑張ってもその成果が点数に現れないようでは、手応えも曖昧になり、次の学びに向けてのモチベーションも高まりません。
❏ 考査問題の刷新で、目標・方法・評価の一致を図る
これまでに幾度も繰り返されてきた学習指導要領の改訂に際し、「入試は変わらない以上、新課程の理念通りの授業はできない」といった反応があったかと思います。
要するにこれまでは、問題の大きなところの根っこは「入試の要求と授業への求めの間のズレ」にあったということだと思います。
しかしながら、今や状況が大きく変わりつつあります。大学入試の出題が変わっていくことで、教室での学ばせ方に変化が求められています。
同時に定期考査の刷新を図らず、出題内容が高大接続改革以前と同じままであったとしたら、今度は考査と授業の間にズレの問題が生じます。
きちんと勉強してきたらテストで納得いく点数が取れたという「努力と結果の一致」は、学びに方向性を見出し、考査での得点が向上するにつれて、公開模試や外部検定のスコアが上昇するのを体験すれば、生徒は先生方の指導を信頼し、安心してついていけるのではないでしょうか。
授業開きで先生方が伝えた「学力観」、日々の授業で体験している「学び」、定期考査に挑んで得た手応え(点数や成績)の3つの間にズレのようなものがあっては、生徒は、「授業を受けて学力の向上、自分の進歩を実感できるか」と尋ねられてもはっきりYESと答えられません。
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新しい学力観の下での授業デザイン(まとめ)
教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一