チームで取り組んでこその授業改善

より良い授業の実現は、先生方一人ひとりの仕事でもありますが、チームで取り組んでこそ、知見や発想の交換を通じて効率よく進めることができます。自分一人で頑張っていても、気づけないことや思いつかないことが多々あるはずです。
先生方一人ひとりの試行錯誤と努力の中で作り上げてきた優れた実践を互いの良さとして学び合ってこそ、校是とすべき授業像の姿が見えてくるのではないでしょうか。
個々の先生が自ら工夫を重ねることはとても大切ですが、同僚や先輩が辿った足跡を知ってこそ、その先に進めるはずです。
アイザック・ニュートンは「私がかなたを見渡せたのだとしたら、それはひとえに巨人の肩の上に乗っていたからです」と言ったそうですが、より良いものを目指すときに先人の積み重ねた発見に基づいて考えることは、授業改善においても大切なことだと思います。
昨日公開した、「組織的授業改善の土台: データを使った効果測定」を追加して、ジャンル別記事インデックス”授業改善での協働のあり方“を更新しました。
結果学力、学びへの自己肯定感、学び方など、さまざまな観点で指導の効果をきちんと測定することで、倣うべき優良実践、効果的な指導の所在を探ることができます。
授業改善を進めるとき、目指すべき正解は、多くの場合、すでに校内に存在しています。ときに見出されずに隠れているそれらの実践を探し出すために、様々なデータを活用することが重要です。

優れた実践を見て言語化する(見取り稽古)

剣道では「見取り稽古」という言葉があります。ほかの人の稽古や試合を見て学ぶことを指しますが、優れた技術などを見て、あとで真似をしたり、イメージを作るのに役立てるために行うものです。「一本」になるか見極められるようになるのも見取り稽古の大事な目標です。先生方が相互に行う授業参観も言ってみれば教科学習指導法における見取り稽古。指導の効果を見極め、良さを言葉にする練習を積むことで授業観の更新が図れます。

授業を観てもらう「チャンス」を活かす

授業改善に向けて、他の先生にご自身の授業を観てもらうのは、とても有用な機会です。改善に向けた直接的で効果的なアドバイスをもらえる期待もありますが、それ以上に「異なる見方に触れて自分の実践を相対化する」ことに大きな意味があります。傍目八目と言いますが、第三者の目は侮りがたいもの。新たな発想に触れることで改善への選択肢は大きく広がります。ご自身が取り組んでいる課題を伝えておけば、より効果的な助言をもらえます。

優良実践の共有~授業評価の結果を活かして

校内に存在している優良実践が共有されず、学校全体での授業改善に足踏みがみられるケースがあります。その一方で、模擬試験の成績や生徒による授業評価アンケートのデータの分析をきちんと行って、有用実践の抽出を図り、それをもとに互いの授業から学び合う機会を整えた学校では、驚くほど短期間で集計結果が大きく跳ね上がっていきます。

協働の進み具合を測る指標

授業改善にチームとして取り組んでいると、知識や発想の交換でより優れた解が作られ評価平均が高まるのに加え、相互のキャッチアップが進んで授業間の差異も縮小します。一方、個人での取り組みが中心だと、工夫の中で優れた方法を作り上げた先生の高評価が平均を引き上げますが、同時に他の先生との間に差が拡大します。数字を見ることで協働の進み具合が把握できそうです。

授業改善には授業デザインを先行させる

授業評価アンケートの集計結果を追跡してみると、伝達スキルより授業デザインの方が、短期的に改善成果が表れる傾向が見られます。伝達スキルは「わかった、できた、面白い」というサイクルの起点だけに軽視はできませんが、まずは「知識としての導入」で比較的短期間に改善が見込みやすい授業デザインでの改善を先行させ、伝達スキルの改善が成果を結ぶまで待てる状態を作るという戦略も十分な合理性があることをデータが示しています。


教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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授業改善での協働のあり方Excerpt: 1 チームで取り組む授業改善1.0 チームで取り組む授業改善(序) 1.1 チームで取り組む授業改善(その1) 1.2 チームで取り組む授業改善(その2) 1.3 チームで取り組む授業改善(その3) 2 授業を観る、授業を観てもらう2.1 教員間で行う“相互参観” 2.2 授業を観る~優良実践を学び、自分を振り返る 2.3 生徒を中心に授業を観る(その1) 2.4 生徒を中心に授業を観る(その2) 2.5 授業を観てもらう「チャンス」を活かす 2.6 自分撮りのススメ ...
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