卒業生を招いて行う進路行事(その1)

卒業生を講師に呼んで行う進路講演は多くの学校で見かける行事です。進路希望を叶え、新たな世界で頑張っている先輩の姿に自分の未来を重ねてやる気を出してくれる後輩たちも少なくありません。

❏ ある段階を経て伝えられるようになること

卒業生とひと括りにしても、その立場は実に様々です。ある年代/フェイズにいる一人が話せることには自ずと限りがありますので、いろいろな世代から講師を選ぶことで、生徒の気づきを広げることができるのではないでしょうか。

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❏ 難関大を突破した直後に話せること

様々なタイミングの中で一番早いのは、合格を勝ち取ったばかりの高3生が、後輩たちの前で登壇するパターンでしょうか。
部活と両立に苦労したとき、進路が選べずに悩んだ頃、成績が伸びずに苦しんだとき。様々な場面を思い出しながら、自分の経験から後輩へのメッセージを編んでくれていると思います。
しかしながら、なんといっても入学する前だけに、大学生活の様子は想像するのが精いっぱい。後輩に伝える内容は持ち合わせません。

❏ 大学生活と照らした高校生活の振り返り

大学に入ってからの苦労と、それを踏まえた高校時代への反省を話せるのは、レポートやテストをひと通り経験したあと。この条件を最初にクリアするのは、夏休みで帰省してきた卒業生でしょうか。
とはいえ、夏休み中に在校生を体育館に集めるのは容易ではありません。
進路指導部に来てもらってインタービューを行い、それをまとめたものを夏休み明けの進路通信に掲載して生徒に伝える方法も悪くないと思います。

❏ 専門課程を選ぶときに考えたこと

共通教養科目などの履修を終えて、専門に分かれた後の2年生、3年生であれば、「大学・学部選びに続く、第二の選択機会」 に何を感じたか、経験を交えて話してくれるかもしれません。
入学前にイメージしていた専門科目での学びと実際に経験した授業の違いなどからは、高校時代に身につけておくべき事柄、頑張っておきたいことなども見えてきているはずです。
先に進んでから、過去の経験(=ここでは高校時代の過ごし方)が自分にどんな意味があったのかもわかってくるものです。

❏ 高校での経験の価値を知ってから

高校で経験した「学校独自の教育活動」 について、その価値が何か、どこで生きるのか改めて知るようになるのは大学生活後半を待たないといけないかもしれません。
探究活動で身につけたものがどう生きるかを知るのはゼミに参加するようになってからでしょうし、国際理解教育の成果は、留学生との交流や自分が留学した経験をもって実感できるかもしれません。
他校で高校生活を過ごしてきた周囲の学生との違いを感じながら、卒業生たちは自分自身の反省と課題も見つけているはずですが、後輩の前で話をする機会を得ることで、さらに深く自分を振り返ることができるのではないでしょうか。
卒業させた生徒に、もう一度成長のきっかけを与えることにもなりそうです。
その2に続く

>このシリーズのインデックス「先輩の経験から間接的に学ぶ機会」へ
教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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