苦手意識が膨らんでしまったら(その2)

新しい単元に進むとき、もしそれまでに生徒の側で苦手意識を持ってしまっていたり、学力の向上を感じ取りにくくなっていたりしたら、次に進むレディネスが整っていないことを前提とした指導を設計しなければなりません。
これをやれば大丈夫という“万能薬”はありません。いくつかの対策を複合的に講じることが大切です。
もちろん、こうした対策にはそれなりの時間を投じる必要がありますので、順調に勉強を重ねてきた生徒の足止めをしないように、任意課題を与えて余裕があればどんどん進めるように指示しておくなど、“副作用”への対策も怠りなく。
❏ 定期考査に既習単元からの出題を組み込み、学び直しを促す
新しい単元に入る前に、関連する既習範囲の学習内容の定着を確かめるとともに、学び直しの機会を作りましょう。定期考査の出題範囲に、次のタームで学ぶ事柄の前提となる既習単元の内容を指定し、配点の2割程度を当てるという取り組みも見られます。
出題範囲は、前年度に使ったものを含む教科書のページで指定しても、プリントを配布してでもかまいません。但し、指定しただけでは生徒が確実に履行するとは限りません。肝心な苦手意識を抱えている生徒ほど、問題を先送りする傾向があるのでやっかいです。
教室を開放して自主勉強会を開き、学力に不安のある生徒は“一本釣り”で参加を促すなどの工夫も必要です。
定期考査で仮に点数が十分でなくても、テスト勉強、テスト本番、返却後のやり直しなどで「再記銘」の機会が作られますので、その内容から全く離れたままでいた場合に比べれば、はるかに望ましい状態を作れます。
夏休みが終わろうとしているこの時期ですから、定期考査までは少し時間があります。待ってはいられません。文化祭あけのタイミングに、「復習テスト」を設定して、休み明けから取り組ませるのも良いのではないでしょうか。
❏ 授業ごとの導入フェイズで既習内容を再整理する
新しい単元の学習が始まってからも、導入フェイズでの復習を心掛けるようにしましょう。
先生が「教え直す」タイプはあまり好ましくありません。既に分かっている生徒には退屈するばかりです。
小さな発問で生徒の頭の中にある記憶を引き出し、黒板上で整理していくという形をとりましょう。確認したことは黒板の両脇など、終業まで消さずに済むスペースに書き出すことが重要です。
こうした確認も、口頭で済ませてはその場で思い出せても、少し時間が経ってから想起が可能とは限りません。
本時の学びに必要な知識を整理したのですから、生徒の視野に固定しておき、その時間を通して利用できるようにしましょう。その板書には授業の途中で頻繁に立ち戻るとともに、必要があれば色チョークで加筆をしていくのが好適です。ペンを持ち替えてノートに書くことで印象も強まります。
❏ 板書を徹底する
音声による口頭伝達は、騒音に紛れて聞こえないことのほかに、時間の経過とともに消失したり条件分岐や並列・重層関係の表現を苦手としたりなど、解消しがたい弱点がつきまといます。視覚での補完を利用しましょう。
板書は、「これまで何をやってきたか、これから何をしようとしているのか」を教室全体で共有する、いわば“現在位置提示機能”を持ちます。
口頭での説明の一部を仮に聞き落しても、目で追って後から補うこともできるのが板書の強みです。
既習内容の定着が弱いということは、途中での聞き落しも頻発します。話しながら書き、書きながら問うぐらいのつもりで進めるようにしましょう。
その3に続く

教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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