小中高合同研究授業をお訪ねして

10月2日、東京都立両国高校等学校(大井俊博校長)をお訪ねして、授業公開&小中高合同研究協議会を見学させていただきました。近隣のみならず広い地域から、小学校、中学校、高校の先生方がお集まりになり、のべ50以上の公開授業を熱心に参観され、研究協議では密度の高い議論を交わしておられました。
この小中高合同授業研究は、同校が平成24年度からの3ヵ年で段階的に進めている学校改善計画“両国スカイツリープラン”の一部に位置付けられています。見学の機会をいただけたことに感謝を申し上げるとともに、公開授業と合同研究協議を拝見しながら感じたところをご報告させて頂きます。

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❏ 生徒の活動を止めない授業
多くの授業に共通して見られた特徴は、「生徒の学習活動を止めない授業」が行われていることです。ここでいう活動は、発言や発表などの身体的行動を伴うものだけではありません。多くの授業が協働学習の要素を積極的に採り入れており、グループ討議やペアワークなどで活気があふれている教室が沢山ありましたが、それだけでありません。
スクール形式の座席配置のまま教員主導で進められている、一見すると普通の授業でも、生徒の活動が止まる瞬間はほとんど見られません。非常に積極的に授業に参加している生徒の姿が印象的でした。教員からの問い掛けに応じて発言を引き出し、その発言を板書することによって教室全体で共有し、その共有されたものを起点に次の発問に繋がるというサイクルがきちんと確立されています。
自分の発言が取り上げられ、それに乗っかってクラス全体の学びが進行していくことを、日常的に経験していれば、生徒の側でも自ずと、授業に参加する一員としての当事者意識が高まります。積極的に参加する中で、自分の発言や導いた解が認められ、拾い上げられることで自己有能感も高まっているはずです。
❏ 生徒にスイッチを切らせない
これに対し、様々な学校をお訪ねして拝見した授業では、残念ながら、「教員が説明している間、生徒は何もせずにじっと座っており、教員が板書すると途端にノートを採り始める」という光景を目にすることが少なくありません。やるべきことが与えられていない、あるいは、自ら解を導く必要に迫られていないのでは、生徒がスイッチを切ってしまうのも無理はないと思います。
また、先生の説明を聞きながら、生徒の側では自分なりの答えを作れたり思い浮かべていたりするのに、それを表現する機会が与えられないのでは、参画意識も自己有能感も高まる道理はなさそうです。
今回、参観の機会をいただいた授業では、「生徒にできることは教員が手を出さない」という考え方がきちんと確立しているからこそ、主体的な学習参加が促され、活動のスイッチを切らせることがないのだと改めて感じました。
どんな形で授業を行うにしても、生徒が既に理解できたらそれ以上に説明を重ねず、理解したことを使って何らかの問いに解を導くことに頭を使わせることをしっかりと意識したいものです。
■関連記事:
 授業クリニックの現場から
その2に続く
教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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