優良実践の共有~授業評価の結果を活かして(その3)

焦点を定めた参観、そこでの気づきのシェア 模試や考査での成績、行動評価の記録、授業評価アンケートの集計結果といった「指導効果や学びの状況に関するデータ」を使って優れた成果を残した実践の所在を特定し、そこでの手法を互いに学ぶことが、学校/教科全体での授業改善を確実でスピーディーなものにします。前稿では、どのようにデータを使って優良実践の所在を知るか、その授業を担当する先生からどのように効率的に発信を…

優良実践の共有~授業評価の結果を活かして(その2)

高い評価を得た理由を考え、言語化して発信 学校全体で授業改善を進めていく上で欠かせないのが「データを用いて優れた実践の所在を明らかにした上で、そこでのやり方や工夫を教科内あるいは校内で広く共有すること」であるのは言うまでもありません。文字にすると、やや長いとは言え、一文に収まってしまう単純なことですが、実現にはいくつもの要件を満たさなければなりません。魅力的に見える実践も、それを取り入れたことで生…

優良実践の共有~授業評価の結果を活かして(その1)

校内に存在する優れた実践を共有する 授業評価アンケートは、校内/教科内に存在している優れた実践(=高い評価を得ている授業)の所在を確かめ、それを広く共有して学校全体あるいは教科全体での授業改善を進めていくためのツールです。校外から持ち込んだ新たな手法が、自校の生徒の学習者特性にマッチする保証はありませんが、校内で既に高い評価を得ている授業でのやり方なら、生徒が身につけている学び方との高い親和性が期…

授業立案の手順~初期値を捉え、学びの地図を描く

授業を設計するとき、どうしても「本時で何を理解させるか」「どんな結論に導くか」から考えることになりがちです。もちろん、到達させたい理解を明確にすることは不可欠ですが、そこから逆算するだけでは、学びが十分に立ち上がらない/進まないことがあります。効果的な授業を成立させるには、以下の3つは外せない大前提です。 この記事の内容をChatGPTでイラストにしました。クリックで拡大します。 生徒が何を知って…

AIの答えを疑ったあとに、さらに問うべきこと

AIの「同調」によって陥りがちな「独善」の罠 別稿「AIの答えをどう疑わせるか(教室での指導)」を起草した後、実際にAIを使っている場面を観察する中で、もう一つ、別の角度から問い直すべき論点があると感じています。それは、AIが示すユーザーへの同調や全肯定の姿勢を、どう受け止めるべきかという問題です。AIの回答に、論理的に批判・反論すると、「おっしゃる通りです」とあっけなく折れて、AIが全面的に同調…

助言や指示は、生徒自身がじっくり振り返ってから

生徒に課題を与えて取り組ませ、上手くいかないときに、的確な助言・アドバイスを行い、次のチャレンジで上手くいくように導くのは指導者の役割でしょうが、生徒が自ら「何をどうすべきか」を考え尽くす前に指導者が「先回り」してしまうと小さからぬ弊害が生じます。新課程の土台だった「21世紀型能力」では、その中核たる「思考力」の構成要素のひとつに「メタ認知・適応的学習力」があります。メタ認知・適応的学習力は、自身…

既卒生が残した「成果」を教材に~探究活動の導入指導

高校に入学してくる生徒は、小学校や中学校で横断的、体験的な「総合的な学習の時間」を経験してきていますが、高校で新たに取り組むのはその先にある「総合的な探究の時間」です。数学や情報の授業で新たに獲得する知識や技能なども駆使して課題の解決に取り組む中、これから自らが生きていく社会に自分がどう関わり、どんな接点を持ちえるのかを「探究」していくことになります。当然ながら、初めて挑戦する学びである以上、取り…

成果発表会の“成果”(その2)

前稿(その1)に書いた通り、探究活動の成果発表会は、生徒にとって自分たちの成果を示し、他者からの質問や評価を受ける中で、得られたものを確かめ、残された課題を明らかにする「仕上げ」の機会です。周囲の仲間の頑張りに触れ、彼我の違いを知るのは、自分の取り組みを相対化し、次のチャレンジに向けた課題を見出す相互啓発の機会です。同時に、成果発表会は、次学年に多くのものを引き継ぐための教育機会でもあります。先輩…

成果発表会の“成果”(その1)

機会あるごとに、各地の学校での探究活動/課題研究の発表会を参観させていただいております。プレゼンやポスターからは、生徒一人ひとりの頑張りや先生方のご指導の成果が伝わってきます。活動を通して得たもの(テーマに関する新たな知見、問題意識のみならず、探究を進める上で必要なスキルや姿勢など)を発表するのは、成果をまとめて、確かなものにする「仕上げ」のためだけではありません。さらに大きな成果をより広く得るに…

明日、ブログの更新をお休みします。

いつもブログをお読みいただき有難うございます。都合により、明日(7月24日)はブログの更新をお休みいたします。閲覧はいつも通りに可能です。先生方におかれましては、ご多用の日々をお過ごしのことと拝察いたします。くれぐれも御身大切にお過ごしくださいますよう。 教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

プレゼンテーション/成果発表を機につくる成長の場

探究活動をはじめ、生徒が自分(たち)で取り組んできたことの成果を発表する機会は以前に比べて多くなっています。日々の授業の中でも、個人/グループで調べ学習や討論を行った結果をプレゼンテーションにまとめるのは既に「ごく普通の光景」になったように思います。プレゼンテーションの準備に取り組む工程での試行錯誤や努力そのものに加え、発表の場を通して得る直接/間接のフィードバックは、生徒にとって代えがたい成長の…

"探究活動の作法"を学ぶ機会は整っているか

総合的な探究の時間(探究活動)が「自己の在り方生き方を考えながらよりよく課題を発見し、解決していく」ための能力・資質の育成を目標とする学びの場であることは言うまでもありません。前半の「自己の在り方生き方を考えながら」を実現するには探究テーマの選択に際して「進路との接点」をしっかり意識する必要があります。 ここで目指しているのは、21世紀型能力の外縁を形成する「実践力」に含まれる「自律的活動力」「持…

身の回りの問題を多角的に捉えさせる

身の回りに起きていることの中にも様々な問題があり、それらの多くは日々の授業や総合的な探究の時間の中に、学んだり、解決策を考えたりする機会を持ち得るものであると思います。各単元の学習の中で扱うことができるものもあれば、単元を跨いだ融合問題を設定することで学習機会が作れるものもありますし、他の教科と連携した合教科型学習、探究活動で扱うのが好適なものもあります。そうした問題について学んだり考えたりする中…

授業観察を行うときに押さえるべきところ

管理職の先生方が「授業観察」を行うときや、教育実習生の授業を指導役の先生が観るときには、押さえておきたいポイントが多々あります。さらには観察で実際の教室に足を運ぶ前にも、観察者と授業者との間で行っておくべきことがあり、参観を終えた後も同様です。どこに観点を置いて授業を観るかに加えて、参観結果をどのように授業者にフィードバックするかは、授業を観察する先生方それぞれの経験則に頼りがちかと思います。授業…

実践報告に触れての気づきを言語化することの効果

より良い授業の実現を目指し、全国各地で様々な指導法研究や実践報告が行われています。ご参加の先生方からの意欲的な提案や報告にいつも大きな刺激をいただき、たいへん勉強になります。 各地の先生方が、それぞれの置かれた状況の中で「あるべき学びの姿」を考え続けて生み出してきたアイデアの数々は、それに触れた人が授業をデザインするときの手札を増やし、それを使ってさらに工夫を重ねた実践はまた別の機会で報告され、さ…

改善が遅れた授業のキャッチアップを支える

授業評価アンケートの集計結果や、模試や外部検定のデータを拝見していると、改善を重ねてより良い指導を実現している授業/先生/クラスがある一方で、キャッチアップが必要なのに改善が遅れてしまうケースも少なからず見られます。これをそのままにしては、改善が進まない先生ご自身もお困りでしょうし、そこで学んでいる生徒にも小さからぬ不利益が及びます。自校に通うすべての生徒に「より良い学び」を約束するために、改善が…

優れた実践にも手札は様々、組み合わせて更なる進化

生徒による授業評価アンケートを利用して、継続的な授業改善(=より良い授業の実現)に取り組んでおられる学校が各地にあります。多くのケースでは、集計結果を用いて、校内に既に存在している優れた実践の所在を探り、そこでの工夫やノウハウを共有することで、改善が遅れた授業でのキャッチアップを支える取り組みがなされています。 また、高い評価を得ることができた授業における工夫も様々。それらを効果的に組み合わせれば…

キャッチアップ(授業改善)を効果的に進めるために

~優良実践を「自分の授業の次の一手」に変える~ 優れた実践を知る機会があることは、授業改善にとって大きな助けになります。ただし、実践報告を聞いたり、授業を参観したりしただけで、自分の授業がすぐに改善に向かうとは限りません。場合によっては、次のように感じることもあります。「良い実践だと思うが、自分の授業とはスタイルからして違う」 「実際にやるには、特別なスキルや教師のキャラが必要なのでは?」 「担当…

改めて考えてみる「問いを立てる」ということ

このブログでも、以下のように「問いを立てる」という言葉をたびたび使ってきましたが、改めてその意味するところを考えたいと思います。 単純に「なんだろう」「どうなっているのだろう」と疑問や興味を持つ段階から、「疑問の正体を特定し、共有可能な表現でその本質を表現する」という過程を経てようやく「問いを立てる/起こす」に至ります。目の前の事物を注意深く観察したり、資料などを注意深く読んだりしないと、起点の「…

探究活動を成立させるための全体構造

探究活動については、これまで様々な視点・角度から記事を書き起こしてきました。テーマ選びの工夫、教科との連携、評価の設計、成果発表会の意味づけなど、切り口はそれぞれ異なります。今回は、それらの記事に通底する、探究指導の骨格となる基本的な考え方を改めてまとめてみたいと思います。個々の記事は、いわばこの骨格のどこかを掘り下げたものです。先に全体を通した「主旨」を踏まえていただくと、それぞれの記事が何を意…