教え込むより、生徒に自力で学ばせる

知識・理解の形成を効率よく進めようとすると、調べさせたり、考えさせて気づかせたりすることより、「教える」という方法を選択しがちですが、それでは「自力で物事を理解したり、何かを解き明かしたりする力」を獲得する機会を生徒から奪ってしまいかねません。下図を見ると、横軸と縦軸の値が等しくなるところに引いた基準線(赤い破線)の上側に位置する、{指示と説明(=わかりやすさ)<学習効果}の授業、即ち「指示と説明…

思考力を鍛えるのは、教える前が勝負

生徒の思考力を鍛えられるのは、主に「正解や解法を示すまで」です。答えや解き方を知った後にできるのは、解に至る過程を辿り直して確認することと、答えを覚えることくらいに限られてしまいがちです。そこでは、答えを導き出すために重ねるべき思考(題意の理解/問題の発見、解法の考案など)の大半を、生徒は自ら体験できません。答えを導くべき問いや解決すべき課題を与えたら、生徒が十分に思考を尽くすまで、不用意に正解や…

明日のブログ、更新をお休みします。

いつもこのブログをお読みいただき有難うございます。明日(6月10日、水曜日)はブログの更新をお休みします。先生方におかれましては、ご多用の日々をお過ごしのことと拝察いたします。くれぐれも御身大切にお過ごしくださいますよう。 教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一 当地も梅雨入りしました。アジサイも見頃です。

"正解を言って欲しい"と言う生徒

生徒や学生にアンケートで授業の感想を尋ねてみると「正解をちゃんと言ってもらいたい」という声がちらほらと混じります。先生方は意図をもって敢えて正解を示していないのが傍からも明らかな場合にもです。ここから窺えるのは「答えは与えられるものではなく、自ら作るもの」との発想を持ち合わせない生徒・学生が少なくないという問題です。以前なら、生徒が「正解」を求める相手は主に先生でした。しかしながら、AIに尋ねれば…

AIの答えをどう疑わせるか(教室での指導)

AIとの対話が教室に持ち込む、思考の新しい課題 生成AIの利用が既に日常となる中、「AIの出力を鵜呑みにしない、きちんと疑う」という言葉は、教育の現場でも広く共有されています。次期学習指導要領の議論においても、情報リテラシー教育の重要性は、これまで以上に強調されるようになりました。ここで少し立ち止まって考える必要があるのは、「疑う」とは具体的にどういうことなのか――先生方ご自身の利用でも、生徒に対…

板書の技術、教具の使い方

1 板書の技術 2 学びを軸にICT活用を考える 3 板書が支える、主体的で対話的な学び 4 学びの個別最適化、非対面環境での学習指導 5 道具の変化と書くことの意味(教育のデジタル化) 6 知識の拡充 vs 情報整理手法の獲得 7 板書の技術、教具の使い方に関するその他の記事

ノート指導、タスク管理

1 ノートにメモを取らせる指導 2 学習機会としての模試受験(仕上げさせる、計画させる) 3 模試や考査の事後指導 4 授業開き/オリエンテーション 5 学習者としての自立に向けて、学び方における守破離

板書に残すもの(後編)

前編では、「板書は、思考のプロセスを可視化し、学びを組み立てるために行うもの」という基本的な立場から、黒板に何を書きだし、生徒のノートに何をどう残させていくかについて考えてみました。生徒のノートに残ったものは、「結論とプロセス」×「板書したものと生徒が自ら書き込んだもの」で区分した「4つの象限」のいずれかに分類できます。その割合を捉え、「生徒が自分の思考を言語化し、学びの自己編集ができる」ことを目…

板書に残すもの(前編)

板書は、単に黒板に情報を書き出す行為ではありません。発問を起点とする対話を重ねながら、生徒の思考を引き出し、そのプロセスを可視化し、学びを組み立てていくために行うものです。学びをどう設計するかによって、板書のあり方は大きく変わってくるということです。黒板に書き残されたものを分類してその割合を観察してみると、授業設計(学ばせ方)の特徴が見えてくることがあります。説明などを経て最終的に導かれた「答え」…

ノートにメモを取らせる指導(記事まとめ)

話を聴きながら的確にメモを取る力は、深く確かな学びには欠かせないもの。学びに向かう姿勢と方策の表れでもあります。言うまでもなく、板書を丁寧に書き写すことに終始するだけでは不十分。話を聴きながら自らしっかり考え、その痕跡を文字に残していくことが求められます。ある実験では、板書以外にどれだけメモを残せたかが学習効果に与える影響が示されました。「考えながら聴く姿勢」がメモの量と質を高め、ひいては学びの密…

黒板を写すと活動が低下?

昔からよく言われることに、「板書を増やすと、生徒は写すことばかりに気を取られ、学びの姿勢が受け身になる」というのがあります。この指摘には納得できる部分もなくはありませんが、「板書が多いこと自体が思考を妨げる」というのは短絡的に過ぎるのではないでしょうか。 受け身の姿勢が強調されたり、自ら考えようとしなくなったりする要因は、板書の多さではなく、板書の仕方、板書に至るまでの進め方にあると思います。実際…

ノートを取らせて学習スキルを確かめる

同じ授業を受けていても、生徒のノートの取り方は実に様々。おざなりなノートの取り方に「復習するときにわかるのか?」と心配になることもあれば、先生の板書を綺麗に写し取るだけで、それ以外まったく書き込まれていない(=本人の思考の痕跡がない)ことも少なからずです。その一方、同じ教室にはしっかりと整理されたノートに、散在していた情報をきちんと集め、構造化している生徒もいたりします。同じ授業を受けていても、ど…

ノートにメモを取らせる指導(その2)

メモに起こす内容には、2つの種類があります。ひとつは、相手の発言などを記録するもの。講義を聞きながら大事だと思ったところをノートやレジュメの余白に書き込むのはどなたも行っていると思います。もう一つは、相手の発言に触発されて、自分が感じたこと/考えたこと/思いついたことなどを文字に起こしたもの。こちらは、メモに残しておかない限り、後で思い出せなくなったら復元のすべがありません。その場でせっかく得た気…

ノートにメモを取らせる指導(その1)

ノートの取り方は、生徒が身につけるべき様々な学習方策の中でもかなり重要度の高いものだと思います。先生が板書したものを整然とノートに写し取っているだけで「よし」としてはいけません。自分で工夫してノートを取れるようになるというのは、生徒の内に「考えながら、人(=先生や周囲の生徒)の話を聞く力」「気づきを言語化できる力」「情報を自力で構造化できる力」が養われてきたことを意味しますので、学習者としての自立…

スライドや板書案を作り込んでおくだけでは…

板書(スライドを含む)や資料が整う度合いと、説明や指示のわかりやすさは非常に強く連動します。実際のデータ(生徒による授業評価アンケートでの「板書や資料」と「指示と説明」の2項目の換算得点[授業別集計])に照らしても、両者の間には 強い相関が観測されます。  板書や資料: 板書やプリントは見やすく整理され、後で見てもわかりやすい。  指示と説明: 先生の説明はよくわかり、指示にとまどうこともない。 …

板書の技術 #INDEX

板書は、単に黒板に情報を書き出す行為ではなく、生徒の学びを組み立てるために行うもの。学びをどう設計するかによって、板書のあり方は大きく違ったものになり得るということです。また、口頭による説明は情報が瞬時に消え、複雑な構造を伝えることも苦手。板書はその弱点を補い、学習内容を生徒の視野に固定し、二次元平面に構造化することで、知識の形成と理解の定着を支えます。板書の真価は、完成した情報を見せることではな…

板書の技術(その7)

生徒の学習活動を視点に考える板書のあり様 本シリーズのタイトルは「板書の技術」ですが、ここまでに触れたことの中には、いわゆる「板書のテクニック」とはイメージの異なるものが多く含まれます。これは、黒板が単なる伝達/情報提示のための道具ではなく、学びの設計の一環であることを示しています。最終回では、生徒の側での学習活動まで視点を広げ、効果的、且つ弊害が出にくい「板書のあり様」について改めて考えてみたい…

板書の技術(その6)

板書を補完するツールとしてのプリント 板書に加えて/代えて、多彩なプリントを駆使して効果的な授業を展開している先生もたくさんおられる一方、「不用意なプリント使用」が学びを浅いもの、断片化したものにするリスクもあります。板書の技術というシリーズですが、本稿では、板書を補完するツールとしてのプリント教材について考えてみたいと思います。プリント教材には様々なものがありますが、その「機能」に着目すると以下…

板書の技術(その5)

生徒のノートにどう残るかをイメージして 板書はその場の用を果たせば「消される」のが常ですが、生徒のノートに書き写されたものはその後もずっと残ります。板書のスタイルに年間を通してある程度まで統一したものがないと、表記のバラつきは、あとで生徒がノートを見直したときのわかりにくさの原因になります。書籍を読んでいても、章ごとに組版の方式や表現が異なっていたら読みにくくて仕方ないはずです。不整合に気を取られ…

板書の技術(その4)

板書を使った振り返りと、「写すだけ」にさせない工夫 学習活動を経てひと通り学び終えた段階での「振り返り」は、そこまでに得たものをまとめ直し、学びとして再構成する上で重要な工程です。このフェイズでも、板書は有効な「道具」になり得ます。導入から展開までに描き上げていた板書を辿り直しつつ、要所を問い掛けで確認しながら、生徒が得た理解や気づきを言語化して加筆していきましょう。また、本稿の後半では、生徒が板…