考査の結果から自分の授業を振り返る

定期考査の答案には、先生方のこれまでの指導の成果が現れますので、答案の採点は、工夫を重ね、力を入れてきた「学ばせ方」が、どれだけ実を結び、どこに不足があったかを点検するまたとない機会です。定期考査の答案返却から終業式へと続く時期はいつも以上に慌ただしい日々と存じますが、採点を通して気づいたことは(簡単にでも)メモに残し、これからの指導をどう工夫するか、少し立ち止まって考えるときの材料にしたいもの。…

年末・年始の業務について

平素より格別のご高配を賜り、誠に有難うございます。当オフィスでは以下の通り、年末年始の営業をお休みいたします。新年は、1月5日(月)より通常通りの営業です。

心地よさ[調和]が生まれる原理を学ぶ

美しい、心地よい、好きといった「感覚」を、論理立てて説明したり、どうしてそれが生まれるのか、メカニズム[原理]を言語化して検討・研究したりする機会は、日常の中にはあまりないかと思います。人が感じる美しさや心地よさ、調和といったものは、芸術の世界にだけ存在するものではありません。考え方や、意見・提案、問題の解決策にも、「論理性や合理性を超えたところ」にそれらを感じることがあり、触れた人の心を掴み、広…

明日のブログはお休みします。

平素より当ブログをご覧いただき、誠にありがとうございます。都合により、明日(12月17日)のブログはお休みさせていただきます。慌ただしい年末です。くれぐれもご自愛を。

活動の配列/授業デザイン

1 問いを軸に授業を設計~学習活動の適切な配列 1.1 教室でしかできない学びを充実~問いを軸に授業を設計 ★ ・学びの場での「問いの活かし方」 ・目標理解と活用機会を整える授業デザイン1.2 学習内容が同じでもアプローチによって学びの質は異なる ★ ・確かな学力を獲得させるための「学習活動の適切な配列」1.3 問いのあり方に焦点を置いた授業研究 ★ ・どんな問いを立てるかで授業デザインは決まる1…

十分な準備をさせることで「適正な負荷」を実現

授業で与えるタスクの難易度(課題や活動の要求)を調整しようとするのに、タスクの出し入れだけでは十分とは言えません。意外に聞こえるかもしれませんが、学習者/生徒に十分な「準備」と「仕上げ」を求めて実行させることが、適正負荷を実現する前提条件になります。ちなみに、適正な負荷とは、生徒に授業や課題の難易度を「易しい~ちょうど良い~難しい」の5段階で尋ねたときに、真ん中の「ちょうど良い」と隣の「やや難しい…

限られた授業時間を有効に使う(追記)

各単元の内容を学びながら様々な能力や資質を育もうとすれば、自ずとそれに見合った学習活動を指導計画の中に配列しなければなりません。多様な学びを所与の時間枠に収めるには、本編でも書いた通り、「生徒が個人でできることを教室での活動から切り離す」「各教科(+探究)での学びの重なりをうまく使う」などの対処が欠かせないはずです。単元構成に沿って、学習内容の理解を欠けるところなく形成しつつ、要所では課題を設定し…

限られた授業時間を有効に使う

新しい学力観の下では「各単元の学習内容をしっかり理解させ、知識として定着させた上で、且つ思考力や判断力、表現力も高める」という高い要求が教室に向けられています。以前よりもやるべきことが増えたのは明白ながら、授業時間は基本的にこれまでと変わりません。この結果、当然ながら、「授業時間をいかに有効に使うか」がかつてないほど重要な課題となりますが、解決のアプローチを何かひとつに求めたところで限界があるのは…

確かな学力を獲得させるための「学習活動の適切な配列」

科目固有の知識・理解を獲得させるだけなら、丁寧に教えて理解させてしっかり覚えさせれば十分ですが、現行課程では、科目内容(コンテンツ)を学ぶことを手段に、様々な能力・資質(コンピテンシー)の獲得という目的を達成する必要があり、生徒がそうした能力・資質を駆使・発揮する場を整え、訓練と評価の機会を確保する必要性が高まります。 言い換えるならば、丁寧に教えきることから、生徒自身にきちんと学ばせることに授業…

主体性の意味を正しく捉える

育成を目指すべき生徒像を描出するときに「主体性/的」という言葉がよく用いられます。教育目標の記述でも「主体性」や「主体的」の頻度は、かなりの上位にランクされるのではないかと思います。しかしながら、その意味をきちんと定義して使っているかと言えば、必ずしもそうとは言えないのが現実。話し手も、聞き手も、自分の経験や価値観に照らして言葉を解釈しますので、一つの言葉を、コミュニティのメンバーが似て非なるイメ…

新しい学力観の下での授業デザイン(記事まとめ)

現行課程の下、学力観はパフォーマンスモデルからコンピテンシーモデルへと更新が加速しています。大学入学共通テストや各大学の個別入試でも新しい学力観を反映した「意欲的な出題」が見られます。目指すところは、大学進学者のみならず、全ての生徒が卒業後に正しい選択を重ね、より良く生きるための基盤となる「学力」の形成です。基礎力という言葉一つをとっても、それが指すのは従来の「単元内容の根幹をなす知識群」から「言…

学びの初期値を計測(後編)

先生方による「学ばせ方」を、生徒が備えている既得知識や問題意識、学習方策などにマッチしたものにアレンジすること。さらに、指導がどれだけの効果を得たのか、効果測定を着実に行い、改善を重ねていくこと。この2つはより良い授業を実現するには欠かせません。双方(授業デザインの最適化と効果の正確な測定)を成立させるには、前提要件として「学びの初期値」を測定しておくことが不可欠、というのが、本稿(前編・後編)で…

学びの初期値を計測~授業デザインと効果測定のために

授業の効果は、先生方による学ばせ方と、生徒が備えるもの(既得知識や問題意識、学習方策など)とのマッチングで決まります。生徒がこれまでにどんなことを学び(+どう学ぶ中でどんな能力や資質を獲得しているか)、対象への理解や問題意識がどのようなものであるかを捉えないと、効果的な授業はデザインできません。これらは、実際の授業を始めるときより、さらに遡って授業をデザインする/指導計画を起こす段階でも把握を試み…

問答・対話、発言、活動

1 問い掛けの多い授業が良い授業 1.0 問い掛けの多い授業が良い授業(序)1.1 問い掛けのタイプとその機能1.2 問い掛けにきちんと反応させる仕掛け1.3 生徒自身から問いを引き出す関連記事:プロセスに焦点を当てた問い 2 生徒を指名して発言させるとき 2.1 生徒を指名して発言させるとき(全3編)2.2 わからないでいる生徒を指名しても…2.5 発言がなかなか出ない/思考が膨らまないとき2….

進路希望の具体化と実現へ

1 選択の機会ひとつひとつに備えさせる 1.1 大きな分岐に臨ませるまでに行うべき指導 ★1.2 先に控える選択の機会をいつ認識させるか1.3 進路の手引きは冊子よりもファイリング形式で ★1.4 準備が整わないうちに選択を迫っていないか 2 進路希望の実現をあきらめさせない 2.1 どこまで伸びるか見立てる2.2 第一志望をあきらめさせない指導2.3 受験期は、またとない成長の好機 ★2.4 諦…

思考力と表現力を養うには

1 学力の三要素~思考力の捉え方もアップデート 1.1 学力の三要素とは~もう一度考えてみました1.2 PISAが測ろうとしている「創造的思考力」 ★1.3 論理的思考と批判的思考1.4 観察をタスクに「問題発見力」を育てる ★1.5 探究活動を通じて育む「思考力」と「実践力」1.6 メタ認知、適応的学習力 ・失敗から正しく学べているか ・助言や指示は、生徒自身がじっくり振り返ってから ★ 2 新…

探究活動、課題研究

1 横断的・体験的な調べ学習の先にある探究活動 1.1 調べたことの先に~新たな知と当事者としての関わり ・資料を与えて読ませる/探させる、そしてその先に ・探究活動の課題~調べ学習との境界と進路への接点1.2 探究活動の目的から考えるテーマ選び ★ ・探究テーマに偏りは生じていないか ・知りたいから始める探究テーマ選び1.3 中学での経験を踏まえて考える「高校での探究活動」 2 探究型学習がつな…

質問に答えて不明を解消してあげる前にやるべきこと

生徒が問題演習を行ったり、実験や話し合いに取り組んでいたりするときに、先生方が机間指導を行いながら、生徒の質問に答えるシーンは、教室ではごく当たり前の、まさに日常でしょう。わからないことがあったら訊くようにと声をかけ、質問一つひとつに丁寧に答えていくのは、生徒の疑問や不明に向き合う指導者としての親身な姿に見えますが、よく考えてみると、「質問に丁寧に答える」という対処だけでは、十分ではないところも多…

授業改善の方向性は合っているか?(チェックリスト)

現行課程において、知識・理解の着実な形成に加え、基礎力(=言語、数量、情報の各スキル)や、思考力(狭義の問題解決力に限らず、問題発見力、メタ認知・適応的学習力なども含む)などの獲得が、これまで以上に求められているのは、これまでの別稿でも書いてきた通りです。 日々の教室での「学ばせ方」にも、こうした「新しい学力観」に沿うことが求められ、その方向で授業改善も進んでいるはずです。さらに歩を進める前に一度…

教材づくりは、学習活動の配列を想定して

授業で用いる教材(プリントやワークシート、スライドなど)を作るとき、「わかりやすい」ものを目指すのは当然だと思いますが、それだけでは「学びに資する有益な教材」にはならないことがあります。わかりやすさ(≒着実な理解の形成)は、掲載する内容の精選、関連性がつかみやすい配列・構成などで高められますが、授業/学習を通して獲得を図るべきは「知識・理解」だけではありません。効果的な伝達に偏ると、ほかの部分の学…