探究から進路へのきっかけを作るプラスαの一問

教科学習指導において、各単元の内容を理解することは、「ゴール」というよりむしろ「中間地点」と捉えるべきものと考えます。単なる理解に止まらず、獲得した知識や技能が活きて働くことは必達目標ですが、さらにその先もあるはず。そこに導くのも先生方のお仕事です。理解したことの中に新たな疑問を見つけて掘り下げていけば、知の地平が広がり、解決すべき自分事としての課題を見つけることもあると思いますが、外からの働き掛…

ひとつの課題から複線的なハードルを作る

クラス内の学力差は、大きくなることはあっても縮まることはそうそうありません。「どのレベルに合わせて授業をすれば良いのか」との悩みは、多くの先生に共通するものでしょう。どこを起点に、どんなペースで授業を進めるかに加え、課題の難易度をどう設定するかも問題です。上位層を伸ばすことに意識を傾けるだけでは、中位以下は手が届かず、真ん中に合せては、上位にも下位にもぴったり来ない――先ずは一つの課題で全ての生徒…

夏休みを迎える前に(まとめページ)

早いもので新年度を迎えて約3か月。夏休みも間もなくですが、年度の当初から取り組んできたことがどれだけ成果を上げているかを点検し、秋からの指導に見通しを立て直して、準備を進める重要な時期です。教科担当者として、ホームルーム担任として、あるいは分掌の立場で、それぞれに振り返るべき点があろうかと思います。また、管理職の視点からも学校全体の動きを俯瞰し直してみる必要があるはずです。また、授業改善を確実に進…

4月の授業開きを思い出して~夏を迎える準備

学期が終わりに近づいたこのタイミングで確認しておくべきことの一つは「新学期に生徒に伝えたメッセージを生徒がどこまで消化し、自分のものとして習慣化できているか」です。別稿の「やりきらずに放置してきたことを仕上げさせる」と共に、この時期の指導の主眼でしょう。新学期が始まるとき、教科担当者として、あるいはホームルーム担任として、生徒に様々な期待(獲得して欲しい能力や資質、深く考えてもらいたいこと、習慣に…

やりきらずに放置してきたことを仕上げさせる

夏休みを迎える生徒に、今のうちに投げかけて考えさせておきたいことの一つは「1学期中にやり残してきたことはないか」です。夏休みは、やり残しに向き合い、きちんと仕上げ直す、かけがえのない機会です。英語の語彙増強(単熟語の暗記)といった単純なタスクも、先生が小テストまで行いペースを作ってくれたのに、十分に取り組めていなかったり、自分で立てた受験勉強の計画にも遅延が膨らんでいたりと、生徒一人ひとりに様々な…

明日、6月25日のブログはお休みします。

平素より当ブログをご覧いただき、誠にありがとうございます。明日6月25日(水)は、メンテンナンスなどの都合によりブログの更新をお休みさせていただきます。木曜日からは通常通りの予定です。引き続き宜しくお願いします。 教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

高校生のタスク管理&スケジューリング

生徒にもやるべきことが山ほどあります。日々の勉強に加え、部活動や生徒会活動、家事や家業にアルバイトなど、タスクの多様さは社会人を上回るかもしれません。時間を効率的に使い、手持ちの時間の中にやるべきことをきちんと配列できるようになってもらいたいところです。多彩なタスクの中で、生徒が自分を成長させ、未来を拓く力を身につけていくのに必要なことを後回しにさせないよう、しっかりとタスク管理とスケジューリング…

生徒が持つ知識/イメージを把握してから学びをスタート

新しいことを学ばせるときは、「これから学ぶこと」について、生徒がこれまでの(教室に限らず生活のすべてを含む)学習を通し、何をどこまで知り、どう捉えているかを把握しておくことはとても大切です。生徒が既に知っていること/イメージできていることと、授業を経て形成を図る「十分で正しい理解」との差分を埋めることが、本時の指導で達成すべきことである以上、学びのスタートで生徒がどこにいるのかを把握することは、指…

自ら課題を設定し、ブレずに歩める生徒を育てる

別稿「目標提示が苦手意識を抑制」では、先生方による目標提示(到達目標と取り組み方の明示)が、学習者が抱える苦手意識を抑え込む効果について、データを示しつつ、考えるところを整理してみました。本稿では、苦手意識を抱えさせない段階からもう一歩踏み込み、「自ら課題を設定しながら成長を重ねていける生徒を育む」ために、先生方を含む周囲の者がどう関わっていくべきか、考えてみたいと思います。生徒に限りませんが、昨…

目標提示が苦手意識を抑制

学習活動を通じて達成を目指すべきものと取り組みのポイントをしっかり示しておくと、苦手意識の発生が抑制されることが分かっています。授業評価アンケートのデータでは、目標理解という評価項目(学習目標や授業への取り組み方がはっきり示されている)で高い評価を得ている授業ほど、生徒の意識は「得意寄り」になる傾向が明らかです。また、意識姿勢(得意、苦手)という、あいまいになりがちな生徒の自己認識ではなく、「学習…

理解確認/学びの振り返り

1 理解度の確認~場面と方法 1.1 理解度の確認~場面と方法(序) その1)理解度の確認はなんのために行うのか Updated! その2)発問/問い掛けによる理解度の確認 Updated! その3)小テストによる理解度の確認 Updated! ・小テストをもっと効果的に(前後編) ・授業内に行う小テスト その4)提出された課題に目を通して行う確認 Updated! ・提出物は丁寧に添削して返すの…

部分理解と全体把握

人の話を聴いていて、目の前でなされている説明の一つひとつは理解できるのに、全体として何が言いたいのか、どこに向かおうとしているのか、どうにもピンとこない。こういった経験はないでしょうか。授業中の生徒も同様の経験をします。先生方の話す内容の一つひとつは理解できていても、今日の授業で何を目指しているのか、自分は今何を学んでいるのか、全体像を生徒が掴み切れていないことがあります。つまりは、説明の部分部分…

理解度の確認~場面と方法 #INDEX

ひと括りに「理解度の確認」とまとめてしまいがちですが、その方法は発問、小テスト、課題など様々。生徒同士の話し合いを観察するなどの方法もあります。方法それぞれに得手/不得手な領域があり、どれかに偏っているようでは、広く的確な理解確認は難しくなります。また、授業を進めるときのフェイズ(場面)ごとに、確認を行うことの目的も違います。それぞれの目的に合致した確認方法を正しく選択できるかどうかが、理解確認と…

理解度の確認~場面と方法(その4)~提出課題の点検で

本シリーズでは、理解度の確認について、目的とするところ、発問による理解度の確認、小テストによる確認と順に考えてきました。本稿では続いて「提出された課題を通して行う理解度の確認」を考えます。ここでいう「課題」とは、論述答案、レポート、調べたことをまとめたプレゼンシートなどを指します。発問や小テストが個々の項目の理解を測定するのに対し、より広い理解と深い思考を試すもの、単元やテーマの全体像をどれだけ捉…

理解度の確認~場面と方法(その3)~小テストの活用

前稿では「発問」を通じた理解度の確認方法について考えてみました。導入・展開・まとめのいずれの局面でも、発問という形態が持つ「反応の即時性」「対話への繋ぎやすさ」という強みを生かしたいところ。確認に頻用されるもう一つの形式は「小テスト」。よくある求答式や選択式の回答方式では、理解しているかより、覚えているかどうかに測定が偏りがちという弱みもありますが、一方で、正誤の結果や誤答の分布を定量化しやすく、…

理解度の確認~場面と方法(その2)~発問による確認

理解度を確認する方法には、発問、小テスト、課題等の提出物の点検、生徒同士のやり取りなどの観察といった様々なものがあります。それぞれの方法に長所・短所があり、用いるべき場面や上手に行うために押さえておくべき「勘所」も違います。まずは、発問/問い掛けによる理解度の確認から、場面を分けて効果的なやり方について考えます。 2014/05/23 公開の記事を再アップデートしました。 ❏ 新しい概念等を学ばせ…

理解度の確認~場面と方法(その1)~目的とするところ

理解度の確認は「次に進む準備が整っているかどうか」を確かめるために行うもの。もちろん、学んだことを覚えているか(=知識として保持されているか)も大事ですが、断片化した知識が記憶に残っているだけでは、理解したことにならず、次の学びの土台にはなり得ません。獲得した知識が生きて働いているかは、思考(課題解決など)の中で活用させてみて確かめる必要があります。「新しい単元を学ぶとき」「新たな概念を導入してそ…

評価、効果測定・成果検証

1 効果測定を通じた教育資源の最適配分 1.1 効果測定とスクラップ&ビルド(教育資源の最適配分)1.2 働き方改革~校務の見直しと再構造化(記事まとめ)1.3 先生方の多忙解消に~個々の教育活動の価値見直し1.4 学校経営計画の進捗を確かめ、達成可能性を高める1.5 優先的に取り組むべき課題をどうやって選び出すか1.6 選考基準は妥当だったのか~追跡調査に基づく検証 Updated! 2 データ…

言語化を通じて育む「振り返りのための相対化スキル」

学習における「振り返り」は、学びへの目的意識(主体的な取り組み)を引き出し、学習者としての自立に向かわせる上で欠かせないもの。しかしながら、振り返りという行為そのものが、メタ認知・適応的学習力(21世紀型能力における「思考力」の構成要素のひとつ)を用いる高度な知的活動であるため、何の準備指導もなしにやらせたところで、すべての生徒がきちんと/的確に行えるわけではありません。 的確な振り返りができるよ…

選考基準は妥当だったのか~追跡調査に基づく検証

入学試験で志願者の合否を決めるときだけでなく、指定校推薦の内部選考、成果発表会の代表者選びなど、学校が「生徒の選考」を行う機会は実に様々ですが、もし選考の基準が妥当なものでなければ、 といった問題が生じやすいもの。しかしながら、教育活動の内容や方法についての議論に比べ、そこに参加させる段階でのフィルター(選考基準)の妥当性について議論がなされることは少ないように思います。選考が、公平性や透明性をも…