学びの個別最適化/複線化、拡張(まとめページ)

学びの個別化、複線的ハードル、学びの拡張といった考え方に通底するのは、教室を学びのコミュニティとして十分に機能させることと、個々の生徒の特性やニーズに応じた学びを実現することの両立です。教室には、学力差や希望進路の違いが必ず存在しますが、それらに対応する術を「個別指導」に頼ると、集団で学んでこそ得られる効用(対話的な学び、協働性や多様性の涵養など)を失わせることになります。クラス全体で共有する「必…

適正負荷(用語解説)

学習の場では、課題が容易すぎれば不足している力に気づく機会を失わせ、逆に難しすぎれば挑戦する意欲そのものを奪いかねません。学びを前進させるには、少し背伸びさせる(≒クリアするのに努力と工夫を必要とする)程度の負荷が掛かっていることが求められます。生徒による授業評価アンケートのデータを解析してみると、「ちょうどよい」では負荷の不足が疑われ、「少し難しい」と半々になるくらいの難易度水準が、学習効果を最…

相互啓発(用語解説)

「相互啓発」とは、学習者が互いの答案・発言・思考過程などを共有し合い、その違いや着眼点を材料にして理解や発想を更新していく「気づきの交換」の働きを指します。学習の過程では、同じ問いに向き合っていても、生徒ごとに着眼点や情報の拾い方、答えの組み立て方が異なります。これらを発表や答案共有の場で持ち寄ることで、他者の発想や思考の道筋に触れることで、自分の理解や答えを見直す契機が生まれます。このとき交換さ…

認知の網(用語解説)

「認知の網」とは、既得の知識や経験によって形作られ、新たに入ってくる情報を拾い上げて理解や意味づけを行うときに働く、頭の中にある認知の構造(知識や経験のネットワーク)を指す比喩的な表現です。人が新しい情報を理解したり意味づけたりするときには、既得の知識や理解、記憶が手掛かりとして働きます。新たに入ってくる情報を拾い上げて結び付けるその働きを、ものごとを掬い取る「網」に喩えました。学びや体験が不足し…

明日と明後日、ブログの更新をお休みします。

いつもこのブログをお読みいただき有難うございます。明日(3月5日)と明後日(3月6日)は、ブログの更新をお休みいたします。三寒四温の言葉通り、寒暖差の大気くなっています。加えて花粉も…。年度末を迎えて、先生方におかれましては、ご多用の日々と拝察いたします。くれぐれも御身大切にお過ごしくださいますよう。 教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一 先日、良い天気に誘われて、ふらふらと近所を散歩してきまし…

仮の答え(用語解説)

「仮の答え」とは、本時/単元で設定した「ターゲット設問」に対し、学習を本格的に始める前の段階で、生徒がその時点で持ち合わせている知識・経験・発想を総動員して作る「未完成の答え」です。これによって「どこまで理解しているか」「どこに不明や誤解があるか/何が不足しているか」といった、学びの初期値を測定することができます。初期値の把握は、その後の学びを正しく設計する前提です。 また、問いを与えられ、答えを…

問いの分割/スモールステップ化(用語解説)

「問いの分割/スモールステップ化」とは、大きく複雑で、どこから手を付けてよいかわからない問いや課題を、その答えに至る思考・作業のプロセスに即して、複数の小さな問いや段階的タスクに分解し、学びに取っ掛かりと方向性を与える授業設計の考え方。フェイズごとに理解や進捗を確かめながら進めることで、観察とリカバーの機会を確保し、不明や躓きの発生箇所を早期に捉えましょう。補完説明や問い直しのチャンスを確保するこ…

ターゲット設問(用語解説)

「ターゲット設問」とは、本時の授業/単元の学習を通じて、その答えを作るべき「学習内容を俯瞰し得る問い」であり、先生方が授業を設計/デザインしていくときの「思考の軸」となるものです。例えば、「荘園制度の起こりについて、以下の用語7つを使い、200字で説明せよ」という問いをターゲットにすれば、何をどう学ばせていくかを、一つの方向に沿って設計していくことができるはずです。 問いに答えるのに不足するものを…

授業改善を加速するための共通言語(用語集)

より良い授業の実現を目指した先生方の協働(学校全体での/学校を跨いだ授業改善)を進めるときに大切なことの一つに、「授業や学習を語る共通言語」の存在があります。当然ながら、学習指導要領で用いられている言葉の数々もそこに含まれますが、それだけではありません。日々の授業研究の中で、一定以上の頻度で使われていながら、きちんと定義されていない言葉も少なくないかと思います。概念を共有できる言語がなければ、噛み…

学びの躓きをAIで予想、理解形成につなぐ問いを作る

新たな単元を学ばせるとき、「生徒がどこで理解に躓くか」「イメージしにくいのはどこか」を予想し、把握できていることが大切です。ここがしっかりしていると、説明の構成や学ばせ方の工夫などで、先回りした対処ができる分、理解の形成が効率的に図れるようになります。こうした「予想」は、たいていの場合、先生方が積み上げてきた経験に基づいてなされますが、必ずしも「予想がピッタリ嵌るとき」ばかりではないはずです。予想…

中学での経験を踏まえて考える「高校での探究活動」

高校に入学してきた生徒が、小・中学校の総合的な学習の時間や、体験学習などで何をしてきたか、意外と把握できていないものです。指導はすべからく、「現時点でできていること」と「最終的にできるようにさせたいこと」の差分を埋めるために行うもの。入学してきた生徒が、それまでに何を経験し、どんなことができるようになっているかを把握しないことには、指導の設計はできないはずです。中学で経験したのと同じ活動を繰り返さ…

何を目指して、授業/指導をデザインするのか?

知識の拡充 vs 情報整理手法の獲得への追記 漠然とした言い方になりますが、「先生方のお仕事が、何に対して責任を負うべきものなのか」という問いが、ときどき頭に浮かびます。上の記事を更新するときも、要所で立ち止まっては自問していました。生徒一人ひとりの「確かな学力の形成」はコミットすべきことの一つに間違いないでしょうが、「学力」の捉え方にも、幾つもの階層(=何を対象とするか、どこまで掘り下げ、拡張す…

板書の技術、教具の使い方

1 板書の技術 2 学びを軸にICT活用を考える 3 板書が支える、主体的で対話的な学び 4 学びの個別最適化、非対面環境での学習指導 5 道具の変化と書くことの意味(教育のデジタル化) 6 知識の拡充 vs 情報整理手法の獲得 7 板書の技術、教具の使い方に関するその他の記事

知識の拡充 vs 情報整理手法の獲得 #INDEX

科学の進歩や社会の変化で、知識は絶え間なく更新されていきます。今日までの正解が、明日も正解とは限りません。教わったことを覚えていても、知識の拡充と更新が行えなければ、知識と発想の不足や古さが、正しい選択(=より良く生きること)を妨げるリスクが膨らみます。知識は思考の道具であり、しっかり拡充を図る必要がありますが、知識付与の効率を優先するあまり「情報を集めて整理し、知に編む工程」を生徒に体験させない…

知識の拡充 vs 情報整理手法の獲得(その4)

効率化を迫る「時間不足」に3方向からアプローチ 前稿では、問い掛けを重ねつつ黒板上で情報を構造化してみせる中で、生徒に「情報整理のプロセス」を学ばせることをご提案いたしました。これにより、知識の拡充と、情報整理手法の獲得という「両面作戦」にも、ある程度の見込みが立ちました。整理・構造化の方法を学んでおけば、知識の断片化が進んだり、丸暗記に頼るリスクも減るはずです。しかしながら、蛍光ペンやサブノート…

知識の拡充 vs 情報整理手法の獲得(その3)

問い掛けで気づかせつつ、板書で構造化を体験させる 蛍光ペンでのマークアップやサブノート式のプリントが内包する問題点と、その悪影響を抑える工夫について考えたのが前稿、前々稿です。今回は「問い掛けで気づきを促しつつ、黒板上で情報を構造化していく」ことを軸にした、別のアプローチをご提案いたします。狙うところは、問い掛けることで、観察に焦点を与え、そこでの気づきを言語化させていくこと、加えて読み取った情報…

知識の拡充 vs 情報整理手法の獲得(その2)

「空所を埋めること」と「学ばせる」の間にあるもの 前稿(その1)では、教科書・参考書などへの「マークアップ」について考えましたが、日々の学習指導では、空所に重要語句などを埋めさせる「サブノート式のプリント」を用いることも少なくありません。マーカーで色を塗るだけの方法が抱える、「重要語句を一文字たりとも自分の手で書いていない」という問題は解消されます。記入スペースを大きくとれば、観察や思考の結果を言…

知識の拡充 vs 情報整理手法の獲得(その1)

覚えやすさに偏ることで生じる、学びへの「副作用」 知識の拡充を図ろうとする場面では、覚えやすくなるような工夫をします。よく用いられるのは、蛍光ペンでのマークアップや、サブノート式のプリントで整理のフレームを与えることでしょうか。限られた授業時間の中で、必要な知識をピックアップし、漏らさず伝えるには「合理的で効率的」に見えるこれらのやり方も、よくよく考えると、学びにプラスばかりとは限らず、弊害が少な…

書くことでの学び~手書きとデジタルの併用

クローズアップ現代で「最近、手書きしてますか? 最新研究が明かす“頭を動かす力”」という番組が放送されました。番組を見て思ったのは、学習の場での「手書き/紙の教材 vs デジタル活用」の議論がときに噛み合わないのは、それぞれが違うところに焦点を当てて「学力」を語っているからではないか、ということ。手を使った方が獲得に有利な学力要素と、それ以外の要素をきちんと区別する必要があります。

その他のテーマ(記事まとめ)

1 働き方改革を進めるときに押さえるべきこと 2 新しい学力観について 3 次期学習指導要領[2030]に向けて 4 体験を再構成する学び、その舞台としてのコミュニティ 5 時期に応じた指導/スタートと仕上げ 6 学びを広く捉える~指導を通して何を目指すのか 7 より良い学びの実現へ~大学編 8 当ブログをご利用いただくためのTIPS 9 アーカイブ:古い記事をまとめてみました