進路を選択する中での「自分を知る」をどう考えるか

進路指導計画は大きく分けると、「進路意識を形成する過程」と「進路希望を具体化し実現する過程」の2つで構成されており、前者の中に配置されているのが「自分を知る」ことをテーマにしたセクションです。自己分析、自己理解など、呼び方は学校によって様々ですが、「職業や社会を知ること」「大学や学問を知ること」とともに、3ヵ年/6ヵ年の進路指導計画に何らかの形で配列されているはずです。 2019/11/18 公開…

志望理由を言葉にしてみる~ゼロ学期の始まりに

所謂「ゼロ学期」を間近に控える高2生は、先輩たちの受験生としての日々を目にしながら、自らの進路希望の実現という大きな挑戦を、強く意識し始めているかと思います。ゴールまでの長期戦のスタートをどう切るかは、結果とともにその過程での成長の度合いも大きく変えます。 2016/03/25 公開の記事を再アップデートしました。 旧タイトル: 志望理由を書いて選択に向き合う ❏ 明確な目標を持つことが「頑張りへ…

履修科目選択と進路希望調査(志望理由の確認)

11月も半ばを迎え、高校2年生は3年時の履修科目選択に頭を悩ませている頃かと思います。1年生も2年での文理選択が迫ります。履修科目/文理を選択させるに当たり、生徒の希望を調査するだけでは指導が完結しないのは言うまでもありません。生徒一人ひとりの状況を確認し、より好ましい選択に向かわせる必要があります。何となくの選択では、その先に一人ひとりの志向や資質に見合った未来が待っている可能性は下がるばかりだ…

新しい学力観にそった授業と家庭学習の再設計

新課程への移行で学力観が新しいものに更新される中、家庭学習(予習や復習)にも「学ばせ方の変化」に応じた新しい形が求められるようになってきたのは、既に以下の拙稿などでもお伝えしてきた通りです。 単純に授業外学習時間の延伸を図れば良いということではありません。宿題・課題の増量といった昔からの対策には、自ずと限界があります。荷物を増やしても学びが膨らむとは限らないことを念頭に、「その宿題、本当に必要です…

〇〇的な(教科固有の)考え方・見方を養う第一歩

教科や科目に固有の「物事を捉える視点や思考方法」(所謂「〇〇的な考え方・ものの見方」)を学ばせることは学習指導の重要な目的です。目指すべきところは、3年/6年間の教育活動を通じて「物事を多角的に、深く、正しく捉えられる状態」に近づけること。全ての科目がそれにコミットすることではじめて、死角のない「見方」が実現します。正しい捉え方ができるようになれば、科目の学びに対する自己効力感も高まり、より広い対…

その他のテーマ(記事まとめ)

1 働き方改革を進めるときに押さえるべきこと 1.0 働き方改革~校務の見直しと再構造化(序)1.1 業務の無駄を省く~現場レベルで可能なコストカット1.2 先生方の多忙解消に~個々の教育活動の価値見直し1.3 優先的に取り組むべき課題をどうやって選び出すか1.4 効果測定とスクラップ&ビルド(教育資源の最適配分)1.5 学びの重なりを上手に利用したコンパクトな学校経営1.6 行事にじっくり向き合…

AIの時代だからこそ「問いを立てる力」

AIが知的作業の道具(相棒?)として存在感を持ち始めたのは、3年前の2022年11月、ChatGPTの登場を機にしてのこと。以降、あっという間に、学習や仕事、生活の場で、物事を調べたり、考えたりするのに使って当然、なくてはならない道具としての立場を手に入れました。クリックを重ねるまでもなく、尤もらしい答えがすぐに返ってくるのが当たり前(普通の状態)になった今、生徒や学生に限らず、AIを活用するあら…

次期学習指導要領[2030]に向けて(記事まとめ)

現行課程が完成年度を迎えると同時に、次の学習指導要領に向けた検討が始まりました。別稿の通り、基本的な方向に現行課程と変わるところはなく、社会の変化に合わせた「調整」が掛かるくらいです。これまでに積み上げてきたものをきちんと生かし、新たな要請を正しく捉え、しっかり応えていきたいところ。検討が終わり、結論が示されるのはまだ先ですが、それまでに現場で進めるべき準備もありそうです。これまでに、折々に触れて…

考え尽くした結果を伝えることはコミュニティへの貢献

問いやお題を与え、一人ひとりに調べたり考えさせたりさせ、その成果を持ち寄ってシェアさせれば、欠けていた理解や気づきを互いに補うことになり、学びがより深く広いものになります。調べる時のソースが違えば、互いに矛盾する情報が見つかることもあるでしょう。それぞれの信ぴょう性を評価したり、矛盾に対処したりする知恵を働かせる(=力を鍛えて評価する)好機が教室に生まれます。同じものを参照しても、そこから拾い上げ…

多様な生徒で構成する学びのコミュニティ

大学入試では、一般選抜、学校推薦型選抜、総合型選抜という大枠に加えて様々な入試方式が用意されていますが、本来の目的は「多様な学生で構成する学びのコミュニティ」の創出です。学力の高い学生、日々の活動に積極的に取り組んできた学生、強い目的意識や使命感を持って入学してきた学生などがバランスよく混在していれば、様々な場面でそれぞれの強みを発揮する学生からの刺激が、他の学生にも届き、コミュニティには好ましい…

学びの個別最適化の問題点と教室での対応

次期学習指導要領に向けた検討の中でのキーワードの一つは「多様性の包摂」でしょう。その実現には、政策や行政で対応すべき部分と、教室/学校での対応が求められるところがあるのは言うまでもありません。柔軟な教育課程を可能にする制度や、障がいのある子どもや不登校、外国籍など多様な背景を持つ子どもへの対応、さらには教育インフラの標準化と整備、学習者情報の管理と保護のガイドライン策定などは、紛れもなく前者です。…

活動の配列/授業デザイン

1 問いを軸に授業を設計~学習活動の適切な配列 1.1 教室でしかできない学びを充実~問いを軸に授業を設計 ★ ・学びの場での「問いの活かし方」 ・教材としての好適性~「問い」の性能評価 ・目標理解と活用機会を整える授業デザイン1.2 学習内容が同じでもアプローチによって学びの質は異なる ★ ・確かな学力を獲得させるための「学習活動の適切な配列」1.3 どんな問いを立てるかで授業デザインは決まる …

理解確認/学びの振り返り

1 理解度の確認~場面と方法 1.1 理解度の確認~場面と方法(序) その1)理解度の確認はなんのために行うのか その2)発問/問い掛けによる理解度の確認 その3)小テストによる理解度の確認 ・小テストをもっと効果的に(前後編) ・授業内に行う小テスト その4)提出された課題に目を通して行う確認 ・提出物は丁寧に添削して返すのがベスト?1.2 既習内容の確認は、問い掛けで ★1.3 板書を辿り直し…

メタ認知、適応的学習力

これまでの取り組みやその成果を振り返って、より良いパフォーマンスを得る/より良い自分に近づくのに何をすべきかを見出せるようになることは、持続的な成長にも、学習者としての自立にも欠かせません。21世紀型能力では、「思考力」を構成する要素のひとつに「自分の問題の解き方や学び方を振り返るメタ認知、そこから次に学ぶべきことを探す適応的学習力等」が挙げられていますが、生活、学習、進路の各領域での教育活動を通…

振り返りと行動変容(まとめページ)

21世紀型能力(新課程の具体化に向けた議論の土台)における思考力の構成要素には、「問題解決・発見力・創造力」と「論理的・批判的思考力」に加えて、「メタ認知、適応的学習力」が挙げられています。各教科の学習に限れば、「自分の問題の解き方や学び方を振り返るメタ認知、そこから次に学ぶべきことを探す適応的学習力等」と説明される力ですが、生活や進路などにも拡張すれば、広く「先に控える課題を見据えて、取るべき行…

学ばせたことは、きちんと教科書に落とし込む

教室での学びを「きちんと教科書に落とし込む」ことには以下の効果が期待されますし、実際に教室で試してみるとその手応えも十分です。 しかしながら、授業時間の不足もあってか、その重要性にあまり目が向いていないのか、教科書への落とし込みが徹底できている授業は(これまでに拝見してきた限り)それほど多くないようにも感じます。 2018/10/22 公開の記事を再アップデートしました。 ❏ PBL型学習を推進す…

5分間アウトプットの費用対効果

学力の向上や自分の成長・進歩を実感するには、以下の3つが揃う必要があることが授業評価アンケートなどのデータからわかっています。 学習目標の把握には「解くべき課題」が必要であり、活動を自己目的化させないためには「目標の認識」が不可欠という因果関係が、強固な相関の背後にあると考えられます。 表の画像をクリックすると元の記事を参照いただけます。 2015/12/25 に公開した記事を再アップデートしまし…

探究のスキルと姿勢を学ばせる(まとめページ)

新課程への移行で「総合的な探究の時間」が本格的に始まりました。問題解決・発見・創造力、社会参画力、持続可能な未来への責任といった21世紀型能力に並ぶ様々な能力・資質を獲得させることを目指して、先生方は日々のご指導に工夫を重ねておられることと拝察いたします。探究活動を進める上で必要となる様々なスキル(探究の方策)や活動に向かう姿勢(探究マインド)を学ばせるには、週に1~2コマの指導機会だけでは不足も…

探究活動や課題研究と成果発表会(まとめと追記)

課題研究や探究活動の成果発表会は、生徒一人ひとりが取り組んできたことを互いに知り、相互に新たな刺激を得る「相互啓発」の機会としてとても大切だと思います。先輩たちの発表を見た後輩学年も大いに刺激を受け、自分たちも頑張ろうとの思いを持ってくれるはず。こうして受け継がれていく成果と刺激が、やがては学校に「文化」になります。さて、その成果発表会ですが、押さえるべきところをきちんと押さえないと、形だけのもの…