学習方策の獲得はどこまで進んでいるか

新課程への移行を機に「主体的、対話的な深い学び」の実現が進んだと思いますが、検証の材料(授業評価アンケートや活動評価の結果に加えて、ポートフォリオの各種ログなど)を揃えて進捗を確かめましょう。その中で見つかった「好適実践」の共有も着実に図りたいところです。本稿と次稿では先ず、「主体的な」に焦点を当てて授業評価アンケートの回答データの解析と考察を試みます。主体的な学びは、生徒が学ぶ意欲や学ぶことへの…

規律ある生活、集団生活のマナー

生徒一人ひとりに好ましい生活(習慣とサイクル)を身に付けさせるには、先生方から「日々をどう過ごして欲しいか」を絶え間なく伝えていく必要がありますが、それだけで着実な成果が上がるとは限りません。併行して、生徒が自ら規律について考える機会を設けたり、タスク管理や時間の使い方を学ばせたりするための指導機会の整備も欠かせないはずです。様々な場面で振り返りを行わせ、行動の変容を促しましょう。規律ある生活を送…

将来を見据えた行動選択

先に控える選択の場や待ち受けるハードルを見据えて、今やっておくべきことは何かを正しく判断し、具体的な行動に起こせることは、かけがえのない時間を有意義に過ごすのに欠かせないものです。ベースになるのは、様々な活動のたびに行う「振り返り」を通じて養うメタ認知・適応的学習力。成果のたな卸しと次に向けた課題形成を正しく行わせられるかが、生徒一人ひとりの成長を左右します。生活・学習・進路の各領域で様々な体験と…

異なる意見に耳を傾ける姿勢

立場や考えの異なる意見にも耳を傾けることは、独善や拘りから離れて正しい判断を広い視野で行えるようになることを意味します。共生社会で生きていく中、協働で課題の解決に取り組むときや賛否の分かれるイシューを論じる時、あるいは自ら取るべき行動の選択を迫られたときなど、こうした資質と姿勢が求められる場面は少なくありません。 2015/06/16 公開の記事を再アップデートしました。 生徒意識アンケート⑧ 異…

困ったことや悩みを信頼して相談できる相手

困ったことや悩みを抱えたときに、信用して相談できる相手がいれば、問題が深刻化したり、手に負えなくなったりする前に、どうにかできる可能性が高まります。いじめや人間関係のトラブルなどを抱えたときは言うまでもなく、進路や学習のことで判断に迷ったときにも、信頼に足る相手に助言や支援を求められるかどうかは重要ですし、別稿で書いた通り、周囲から受けた様々な刺激を消化して頑張りの原資にするにも、適切な相手との相…

生徒が互いに刺激し合い、共に成長するクラス

生徒間に十分な相互啓発が働き、且つ互恵意識で結ばれたクラスの中でこそ、生徒は様々な活動に生き生きと取り組むことができ、その中で主体性や多様性、協働性などを獲得していきます。別稿「教科学習指導の土台はホームルーム経営」でもお伝えした通り、生徒が互いに刺激し合い、共に成長するクラスを実現できるかどうかは授業の成否(学力向上など)にも大きな影響を与えます。   2015/06/12 公開の記事を再アップ…

係や当番の活動で関係を築き社会性を育む

ホームルームは、生徒にとって最も基本的なコミュニティ。その中で、自分がどんな役割を引き受け、どう貢献できるのかを考え、行動を起こしていくことは、社会性を身につける貴重なトレーニングの場です。その場面の一つが当番や係の仕事であり、その活性化は「生徒が互いに刺激し合い、ともに成長するクラス」を作るためにも欠かせません。当番や係りの仕事は、学校行事や生徒会活動とは違って「日常」の中にあるため、挑戦してみ…

整理整頓、教室の環境整備

教室が学習に適した環境に保たれているかどうかで、学びの成果が大きく左右されるのは言うまでもありません。生徒の私物が通路をふさいでいたら机間指導の邪魔になりますし、グループワークへの切り替えなどフォーメーションの変更にもひと騒動。こんなところで貴重な授業時間を無駄にしたくないものです。掲示物にしても、余計なものが目に入っては、肝心な連絡やメッセージが埋もれて伝わらなくなってしまい、生徒が整えるべき「…

言い分に耳を傾け、公平に接する

前稿で取り上げた「期待する行動」との間で常に高い相関を示し、且つ学習者と指導者の関係をしっかり築く上での両輪をなすのが、この項目です。期待する行動を到達目標として生徒と予め共有しておくことで、一つひとつの指導の背後にある意図もより良く理解してもらえます。学校評価アンケートでも、教育目標や指導方針をちゃんと伝えることに注力しているクラスほど、「生徒指導などにおいて恣意的でない公平な指導がなされいてい…

生徒に期待する行動をはっきり示す

学年や学期が進むごとに、生活、学習、進路の各領域で生徒にどんな行動を期待しているのか明確に示すことは、段階的に目指すべき到達状態について生徒と認識を共有することを意味します。目標とするところが示されてこそ、その実現に向けた努力も促されますし、振り返りを通じて、今の自分に足りないものに気づき、自らの行動を改めて行けます。担任の先生が「期待する行動」をしっかり示せているクラスと、不十分なクラスとでは、…

連絡事項を漏れなく伝える

ホームルームを通じて学校からの連絡事項が余すところなく伝わっているのは当たり前と思われるかもしれませんが、生徒の認識をアンケートで質してみると、実際はそうとも言い切れないようです。肯定的な回答が全体の8割に達しているクラスは3分の2程度で、中には5割を切るようなクラスも散見されます。 2015/06/05 公開の記事を再アップデートしました。 生徒意識アンケート① HRを通じた連絡の徹底ホームルー…

学力層に応じた「指導の力点」

クラスの中には様々な学力(獲得済みの結果学力のみならず、学ぶ意欲も含む)の生徒がいますが、学力層ごとに、指導の力点/獲得させるべき能力や資質の「重みづけ」には違いがあって然るべきかと思います。各単元の内容を学ばせながら、様々な能力や資質(21世紀型能力で言えば、基礎力、思考力、実践力を構成する要素群)を獲得させるのはどの層でも同じですが、卒業後の人生で引き受ける「主たる役割」によって、各要素の獲得…

実技・実習系の授業評価アンケート(質問項目)

体育、芸術、家庭などの実技実習系教科でも、講義座学系の教科と同様に「学習を通じて自らの進歩や成長を実感できること」は学びを継続する意欲の原資に外なりません。各評価項目の質問文は学習効果を実感できる授業が備える要件を記述したものですので、どこかにボトルネックが生じていないか、集計結果を用いて常に点検しておきましょう。 2015/05/25 公開のまとめページを再アップデートしました。 実技実習系で、…

授業を受けて実感できる自分の進歩

学びへの自己効力感を高められば、主体的な取り組みや積極的な授業参加が期待できますが、下がった状態では、できない自分に向き合うことへの抵抗もあり、対象に近づこうとは思えなくなるのもしばしばかと。生徒に答えてもらった「授業を受けて、知識や技能が身につき、自分の進歩を実感できるか」という質問に対する肯定的な回答が占める割合は次の学習に向けたモチベーションをどこまで持たせることができているかを端的に示す指…

自分の取り組みの成果を発表できる機会

生徒がそれぞれに取り組んできたこと(工夫と努力の成果)を発表する機会を、授業内外にしっかり整えることの効果は、発表という「目標」に向けて生徒の頑張りを引き出すことだけに止まりません。自分の取り組みの成果を存分に示せれば、達成感を原資とする次へのモチベーションが得られますし、仮に多少の失敗を含んだときも、次のチャンスに向けた課題が形成でき、先の学びに向かう姿勢を作れます。周囲の頑張りを目の当たりにす…

振り返りを通じた成果のたな卸しと次への目標設定

興味や意欲は、努力して達成した中に生まれるものですから、振り返りを通じて自分の進歩を確認する場を整えることが、積極的な学びの姿勢を作ります。また、できたこととできていないことの切り分けがはっきりしないことには、次に何をするべきかを特定することもできません。振り返りとその支援のための助言が大切であるのは、このためです。下表の通り、振り返りの成否は学習効果(授業を受けての技能の向上や自分の進歩の実感)…

作業や練習の目的の明示、到達目標の設定

作業や練習に取り組ませる際、その目的や目指すべき到達状態を明示して、生徒にしっかりと把握させておくことは、目的意識を十分に備えた主体的で積極的な授業参加を促すための大前提です。モチベーションの原資である「達成感」をより強固なものにするにも、パフォーマンスの向上を図るのに何をどうすべきかを考えさせる「振り返り」を的確に行わせるためにも、目標への認識は不可欠です。得意な生徒と苦手な生徒の間でパフォーマ…

生徒の状況を把握した上での授業進行

生徒一人ひとりが現在どのような状況にあるのかを把握することの必要性は言うまでもありません。教える側では十分に状況を把握して進めているつもりでも、生徒の認識は違っているかもしれません。学びの主役である生徒の認識を確かめるべく、定期的に「先生は、生徒の状況をよく把握しながら授業を進めているか」と尋ねてみましょう。生徒の状況を十分に把握できていない限り、的確な指導や助言もできません。次の段階に進める状態…

戸惑いを抑える、約束事と個々の指示

何らかの行動を指示したときに、生徒が戸惑い、期待通りの反応をとれないことがあります。原因は様々ですが、大別すると「何を求められているのか把握しかねている場合」と「指示に応える態勢が整っていない場合」の2通りでしょう。これらに加えて、取るべき行動はわかっており、態勢も整っているにもかかわらず、周囲の様子を窺ってしまい行動を起こして良いものか躊躇ってしまうという場合も少なくありません。 2015/05…

練習や作業のポイントを把握させる

練習や作業のポイントがしっかりわかっていれば、勘所を掴んだ効果的な取り組みが期待できますが、ポイントを捉えられないまま無為に時間を費やしては、当然ながら学びの成果は上がらず、次のステップに進むレディネスも調いません。いかに簡潔にポイントを捉えさせて、練習や作業に十分な時間を残すかが先生方の腕の見せどころです。言って見せて聞かせるだけがその方法ではありません。生徒が自分から気づき、それを言語化して意…