情報を集めて編む作業で知識獲得の方法を学ぶ(その1)

生徒に一定の知識や理解を獲得させようとするときに、昔から最もよく用いられているのは「話して聞かせてわからせる」という方法だと思いますが、それだけでは、相手(学習者)は自ら学ぶ力、知識を獲得するすべを身につけられません。教科固有の知識・理解を獲得させるときには、それらを獲得する方法を身につけられる学習活動に取り組ませるとともに、その成果を確かめていく(評価する)ことにも十分に意識を向けたいところです…

新しい学びの中で「覚える力」が持つ意義

社会に出ると、純粋な記憶力が問われるシーンはそれほど多くはないと思います。急速な発達を続けるデジタルツールは、様々な情報処理に加えて「記憶」も代行してくれます。膨大なデータを保持する能力は言うに及ばず、AIはそれらを用いた予測や推量の力も得ました。となると、覚えることはすべて機械に任せて、人はクリエイティブな知的活動にエネルギーを使いましょうという話になりそうですが、ことはそう簡単ではありません。…

ノートにメモを取らせる指導(記事まとめ)

授業中にメモを取る力は、深く確かな学びに欠かせないものであり、学びに関わる姿勢と方策の表れでもあります。他者の話を聴きながら(あるいは文章を読みながら)、自らしっかり考え、その痕跡を文字に残していくというのが学びの場におけるメモのあり方ではないでしょうか。ある実験では、同じ講義を聞かせた場合に生徒がノートに残した文字数とそれぞれの生徒の学習効果との間には、統計的に有意な相関が見られました。板書を写…

記憶は思考(理解や予測)の大事な道具

インターネット上には膨大な情報があり、それを学習した生成AIは、どんな問いにも瞬時に答え(正解とは限りませんが、少なくとも確率的に最も妥当な[尤もらしい]語の連鎖)を提示してくれます。もはや、ググって表示された結果を見比べる手間すら不要になってきました。こういう状況になると、「物事をいちいち覚えておく必要があるのか」という疑問も生じます。そもそも、日々新たな情報と知が生み出されるスピードは、人が学…

夏期休業等のお知らせ

残暑お見舞い申し上げます。連日の猛暑(今日は少し涼しい)の中、先生方におかれましては、補習や講習、部活動に行事の引率に加え、2学期の準備にもご多忙の日々かと存じます。くれぐれも御身大切にお過ごしください。さて、夏季休業のお知らせです。当オフィスの営業は8月9日(土)~17日(日)の期間、お休みをさせていただきます。また、ブログの更新は、サーバーのメンテナンスなどもあり、週明けの4日から更新を休止し…

終盤まで伸び足を止めないために

模擬試験の成績や授業評価アンケートのデータを見ていると、2年生のときの大きな低下(あるいは停滞)を3年生の前半で大きく巻き返したと思ったのに、夏を越えて受験期を迎えた途端にパタッと伸び足が止まってしまうことがあります。(cf. 年度の後半で授業評価が下がる?)そうした問題が顕在化してからの対処では、十分な効果が得られないことも多く、有効な予防策が打てるかが問われるところです。また、夏を過ぎてからの…

自由研究/課題研究は狙い通りの成果を得たか?

夏休みが始まって間もないのに「何、このタイトル?」と思われたかもしれませんが、タイトルの問いは、先生方がお盆過ぎに思い浮かべたのでは遅すぎかも。与えた課題の効果を測定するには準備も必要。当然ながら時間もかかるので、今のうちにスタートした方が良さそうです。夏休み中に取り組ませるタスク(宿題)は既に提示しているはず。履行にかかる時間を生徒に投じさせる以上、所期の成果が得られたかどうかは、タスクを与えた…

2学期の指導をより実り多きものにするために

秋は「実りの季節」ですが、9月に始まる学校の2学期もまた、生徒が様々なことにチャレンジする中でこれまでに重ねてきたことを「結実」させる大切な局面であるのは言うまでもありません。3年生は進路希望の実現に挑み、2年生は進路選択という大きな分岐に臨みます。1年生も4月の入学から高校生として積み重ねてきたものを振り返り、これからの自分の行動にしっかり方向を持てるかどうかで、残り2年半の実りが大きく変わって…

夏休みの過ごさせ方を振り返って、来期の指導設計

別稿「自由研究/課題研究は狙い通りの成果を得たか?」では、長期の休みに課される自由研究、課題研究について考えてみました。各教科で課した宿題・課題も、所期の成果が得られたか2学期の初めにはきちんと検証をしたいもの。夏休みに開設した講習・補習も同様です。夏の間に行った指導や取り組ませた課題の成果を確かめないことには、2学期からの指導の起点を正しく定めることもできませんし、来年度の指導計画を「今年の課題…

アイデアを作らせる~きちんと調べ、思考を拡充・整理

総合的な探究の時間において、生徒に研究テーマを考えさせるところでご苦労を抱えておられる先生方も少なくありません。地域連携や新しいビジネスなどの考案に取り組ませて自らの進路と向き合わせる教育活動でも、アイデアを出させるフェイズでのご苦労が多いようです。進路指導もまた、自分の将来を対象として行う探究活動であり、その探究の成果が「志望理由書」や「学修計画書」といった形で、大学進学に際して合否判定の材料と…

アイデアを膨らませ、まとめる方法への習熟

生徒に新しいアイデアを出させるためには、事前に行う調べ学習が重要というのは別稿でもお伝えした通りです。そこで得た様々な情報を関連付けたり構造化したりすることで、アイデアを考える土台が整います。本稿では、調べ学習の中で得た知識や気づきを拡張しながら、整理していくフェイズでの指導の工夫を考えてみたいと思います。 2019/11/26 公開の記事を再アップデートしました。 ❏ 様々なツールを使い、思考を…

アイデアを出させる前に、まずはきっちり調べ学習

学校の中に新しい教育活動が採り込まれるにつれて、生徒にアイデアを出させる機会が増えてきました。日々の教科学習指導の中でもPBL型の授業デザインなら、解の導き方や物事を確かめる手順などを生徒自身の発想に委ねることもあれば、探究学習のテーマを考えさせたり、新しいビジネスの発案に挑ませたりすることもあります。そんなときに、何の土台も準備もなく「さあ、アイデアを出そう」と旗だけ振っても上手くは行きません。…

問いを立てる力~より良い社会を作るために

当ブログでしばしば取り上げてきた「問いを立てる力」は、単なる学習技術ではなく、「より良く生きる」ために欠かせないスキルです。身の回りの「当たり前」の中に問題を見出し、その解決策を考え、実現することによって、社会とそこでの暮らしはより良くなります。当たり前のことですが、問題を見つけられないことには、解決への道筋をつけるところには到達せず、いつまでも同じ問題を抱えます。総合的な探究の時間で生徒に取り組…

優良実践の共有をシンプルなグループワークで

授業評価アンケートの集計結果は、先生方一人ひとりの振り返りの材料としてだけでなく、校内に存在している優れた実践を掘り起こし、共有するためのきっかけを作る材料でもあります。しかし実際には、手元に届いた集計結果を眺め、(ときに)分析担当者からのコメントを読む/聞くところで終わっているケースが少なくないかと思います。さらに一歩踏み込み、集計結果に基づき「より良い授業を実現するための共有知を創り出す場」を…

考えるための道具(体系的知識)を揃えさせるときの手順

思考のための道具は知識です。どの単元を学ぶときでもある程度まで体系的な知識を整えさせないと、その先に取り組むべき思考・判断・表現といった活動には進めませんが、体系的な知識を形成しようと先走り、導入フェイズから長々と説明を聞かせては生徒は退屈するばかりです。その日の授業で学ぶことに「興味」や「理解する必要性」を感じ取る前にあれやこれやと説明を聞くのを苦痛と感じる生徒もいるでしょうし、抽象概念を消化す…

ボールを投げるのはミットを構えさせてから

相手にボールを投げようとするときには、相手がミットを構えているかを確認するもの。少なくともこちらを見ているかどうか確かめているはずですが、普段の指導の中で同じことが徹底できているでしょうか。大事なことを伝える前に、前振りもせず、問題意識や関心を刺激しておかなかったら、伝えたことは生徒の意識をすり抜けてしまい、受け取ってもらえません。あたかも、投げられたことにすら気づいてもらえなかったボールが、グラ…

学力差、苦手意識への対応

1 苦手意識を抑えて、伸びている実感を持たせる 1.1 苦手意識を抑えて、伸びている実感を持たせる(まとめ)1.2 学力向上感、得意・苦手に成績が及ぼす影響は?1.3 難易度からの得意/苦手の意識が受ける影響 ★ cf. 難易度をどう考え、どのように調整するか1.4 不要な苦手意識を抱かせない(前編)、(後編)1.6 科目への意識姿勢~得意と答える生徒を増やす ★ Updated!1.7 相対順位…

学習者としての成長を促す"活動評価"と"振り返り"

生徒は各教科を学ぶ中で、教科固有の知識や理解を蓄えているだけではありません。学びへの姿勢や物事の学び方、課題を解決するための思考手順、協働場面でのふるまい方など、様々なものを身につけています。どんな能力や資質、姿勢を獲得させたいのか(ゴール)を明確にし、生徒一人ひとりが今、成長過程のどこにいるのか(現在位置)を掴まないことには、両者を結ぶプロセスである「指導」も計画できません。生徒自身もまた、段階…

学ぶ理由/自立した学習者

1 学び続けられる生徒を育てる 1.1 自ら学び続けられる生徒を育てる ・学習方策の獲得はどこまで進んでいるか ・目的意識をもって学びに取り組んでいるか ・生徒の興味・関心をどこまで育めたか1.2 全教科でコミットすべき能力・資質の涵養 ★ ・教科固有の知識・技能を学ぶ中で1.3 認知の網の広げ方~5教科7科目をきちんと学ばせる ★ ・5教科7科目に挑ませることの意味1.4 学びに向かう力/主体的…

知識の活用、学びの仕上げ

1 課題解決を軸にした授業デザイン 1.1 教室でしかできない学びを充実~問いを軸に授業を設計 ★1.2 考えるための道具(体系的知識)を揃えさせるときの手順1.3 課題解決を伴わない知識獲得は…[検証編/考察編] ・習ったことを使ってみる機会1.4 課題解決の場を整えたら、挑ませる前に理解の確認 ★1.5 確認した結果に基づいてきちんと学びを仕上げさせる ★1.6 単元ごとに設定するターゲット設…